車内ネットワークへのサイバー攻撃は4つの階層構造で防ぐいまさら聞けない 車載セキュリティ入門(4)(1/4 ページ)

車載システムの進化を支えてきたCANに代表される車内ネットワーク。この車内ネットワークに対するサイバー攻撃は、多層防御(Defense-in-depth)の原則に基づき、4つのレイヤー(階層)によって防ぐことが推奨されている。

» 2016年02月15日 11時00分 公開
[岡デニス健五MONOist]

車載システムの進化がまねくセキュリティ面での脆弱性

 今回は、車内ネットワークのセキュリティに焦点を当てます。車内ネットワークのアーキテクチャと通信、両方がセキュアであることが求められます。

 メカニカルな機構や機能が、カーエレクトロニクスやソフトウェアで制御するシステムが移り変わっていく中で、シンプルかつスタンドアロンなシステムから、より一層複雑なコネクテッドシステムに変容してきました。

 その結果としてセキュリティ面での脆弱性が高まり、攻撃者が狙いを定める対象領域や攻撃を誘因する要素も増えることになります。これは、多くのセキュリティ研究者がこの数年間で自動車へのサイバー攻撃やハッキングを幾つも成功させてきたことからも明白です。だからこそ、セキュアな車内ネットワークのアーキテクチャが非常に重要になります。

 先述のサイバー攻撃やハッキングの例では、攻撃者にとって利用できる“入口”が幾つか示されてきました。Bluetoothスタックの脆弱性の悪用、携帯電話網経由による車載情報機器のSIMカードの電話番号呼び出しとボイスモデムプログラムの脆弱性の悪用、メディアファイル(WMA)パーサーの脆弱性の悪用、十分な強度を持たないWi-Fiパスワードへの総当たり攻撃、診断に用いる「OBD II」ポートに直接接続し車内ネットワークにアクセスするなど※1)※2)※3)※4)

 セキュリティの原則である多層防御(Defense-in-depth)の観点から、車内ネットワークのセキュリティも階層(レイヤー)アプローチが推奨されます。例えば、Robert Bosch(ボッシュ)が推奨するレイヤーセキュリティの手法は、図1のように4つのレイヤーがあります※5)

図1 図1 セキュアな車内ネットワークを実現する4つのレイヤー構造(クリックで拡大)

参考文献

※1)Koscher K., Czeskis A., Roesner F., Patel S., Kohno T., Checkoway S., McCoy D., Kantor B., Anderson D., Shacham H., and Savage S. (2010) “Experimental Security Analysis of a Modern Automobile” in Proceeding of IEEE Symposium on Security and Privacy.

※2)Checkoway S., McCoy D., Kantor B., Anderson D., Shacham H., Savage S., Koscher K., Czeskis A., Roesner F., and Kohno T. (2011) “Comprehensive experimental analyses of automotive attack surfaces” in Proceedings of the 20th USENIX conference on Security.

※3)Miller C., and Valasek, C. (2013) “Adventures in Automotive Networks and Control Units” DEFCON 21.

※4)Miller C., and Valasek, C. (2015) “Remote Exploitation of an Unaltered Passenger Vehicle” DEFCON 23.

※5)Glas, B. “Towards Harmonization of ECU Protection and Secure OnBoard Communication in AUTOSAR” escar Asia 2014.


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