3D設計推進者から見た SOLIDWORKS World 20163D設計推進者の眼(7)(3/3 ページ)

» 2016年02月26日 11時00分 公開
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SWW2016は「Community」がキーワード

 SOLIDWORKSでは、SOLIDWORKS本体の充実とともに、ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEに代表されるように、その関連製品への展開が図られています。日本国内の3D CADでは設計ツールとしての本質に注力し、関連製品は関連会社での展開になっている一方、SOLIDWORKSでは、3Dデータの展開やそもそも3Dデータを作る過程にも注力されています。

 設計作業では、前回の「設計者教育と3D CAD」でお話ししたように、CADを使い倒すことができることが、設計者の能力の1つであり、このCADの機能を開発元には充実して欲しいとは思います。

 私の会社における3D展開は3D CADによる設計を固めることが最優先で、3DEXPERIENCEにあるような先進的な取り組みはまだまだ先の話です。しかしWebブラウザによりデスクトップ版SOLIDWORKSと同じような設計が可能となる「オンライン版SOLIDWORKS」や、設計工程においてツールが置き去りだったとも思われる概念設計を行う「Conceptual Designer」、オンライン上で設計情報を共有することができる「Xdrive」、Webブラウザベースにより最適化を行うことができる「Xdesign」といったトピックスには興味を覚えないわけにはいきません。

 欧米では新たなコンテンツづくりや革新的な取り組みへの能力が高いですね。このようなツールが用いられた開発設計環境の世界が間もなくやって来るのでしょうか? SWW2016では「Community(コミュニティー)」が重要なキーワードです。ここでいうコミュニティーとは「ソリッドワークスに関わる人たちの集まり」を示しているのではなく、Xシリーズといわれるような製品そのものにコミュニティーとしてのコンセプトが盛り込まれているということです。

日本企業が増えた! パートナーパビリオン

 SWW2016のパートナーパビリオンではうれしいことに、前回に比べて多くの日本企業の出展が見られました。その中の1社として、プロノハーツ(長野県塩尻市)からはVR(Virtual Reality:仮想現実)システムの展示がありました。VRヘッドマウントディスプレー(HMD)の「OculusRift(オキュラスリフト)」を用いて、仮想的に1分の1の3次元モデルが見られるシステムです。まさに“見れば分かる”仕組みであることから、多くの見学者を集めていました。今後の課題としては、仮想空間上へ実際の手や工具を反映することですが、これらも近々に実現することでしょう(関連記事:VRの世界を中小企業にも届ける! 「3次元データの中を自由に動き回ろう」)。

プロノハーツの「PronoDR」展示と同社代表取締役 藤森匡康氏

 またシミュレーション、公差解析、BOM活用などの3D CAD関連ツールや3Dプリンタなど出展もありましたが、私として注目したものは、MISUMI USAより出展された「Rapid Design (ラピッドデザイン)」でした。

MISUMI USAのブース

 この製品は、2015年の設計製造系の展示会やSWW Japan 2015でも展示紹介されました。簡単に言えば、ミスミの提供する部品をパラメトリックに駆動させ3次元モデルを作成し、かつその型式を自動作成することによりBOM(部品表)まで展開可能なシステムです(型式自動生成は準備中とのこと)。装置産業界ではミスミの部品が使用される頻度は高く、これがソリッドワークスで動くことは設計作業として便利になります。ただし、課題もあります。

 BOMで扱うことができる型式文字数制限や、「設計現場で課題となっている標準化やモジュラー化に対して影響が出るのでは?」ということです。ラピッドデザインを用いて作成されたファイルは「1部品=1ファイル」になり、1つのファイル内でパラメータを駆動させるようなコンフィギュレーションとしての管理は行いません。……ということは、ある形状の部品に対して、その部品のパラメータを駆動させたファイルが簡単に作成可能となり、結果、類似形状のデータがたくさん存在することになります。

 標準部品化を行うような場合、このパラメータの駆動に対して部品の機能を損なわずに集約を行うことによってバリエーションを増やさないことを目指したものであり、結果、設計変更の頻度を抑えることによる設計品質の向上や部品コストの低減を目指していることから、類似部品が多く出来てしまうことには何かしらの対応ということが必要になるでしょう。

 コンフィギュレーションツールとしては、「Tacton Works」や「Drive Works」の出展が見られました。これらは自動設計ツールとしては非常に有効です。

Drive Worksの展示

TACTON Worksの展示

 例えば、ラピッドデザインで作られた類似形状のモデルであったり、API(Application Programming Interface:アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を用いて自動設計した3次元データを、これらのシステムとの連携などで、上手く管理できれば、類似形状データの管理が便利にできるのではと想像してみました。コンフィギュレーションツールのファイル構成や、データ保存状態などを調べてみたと思いますし、これらの開発元の方々とディスカッションできたらよいですね。

 類似形状検索ですが、過去には「3DPartFinder for SOLIDWORKS」(開発元 加3Dsemantix)という製品がSOLIDWORKSのCERTIFIED Solution Partner製品として発売されていますが、今回はダッソーより「EXALEAD」が展示されていました。このEXALEADですが、2D/3DのCADデータを検索でき、かつ類似形状検索も可能とのことです。

EXALEADの展示

 さらに写真にあるように、SOLIDWORKS以外のデータも見えています。

 ラピッドデザインで自動設計を行うにあたっても、また社内で標準化を行うにしても、検索ツールは、どのような3Dデータが存在し、類似データが存在するのかを知る上でも必要な考え方であり、そういうツールだと思いました。

 それだけ、標準化や自動設計は誰でもできるような単純な工程を踏むわけではなく、データの構成や保存の仕方なども考慮した作業なのだと私は思います。これらのコンフィギュレーションや検索ツールに注目してみたいですね。

Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛ける株式会社飯沼ゲージ製作所で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)の副代表リーダー・事務局も務める。



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