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» 2016年03月01日 10時00分 公開

クルマから見るデザインの真価(9):自動車用ホイールとデザインの深イイ関係 (2/4)

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]

カーデザインにおけるホイールとは

 ホイールに限らずデザイン(意匠)も機能の1つである。特にクルマ部品で「機能」というと物理的な性能面での価値をイメージする方も多いかもしれない。しかし商品という観点で考えると、ユーザーに対してイメージや印象という形にして価値を伝える、知覚品質を左右するものなので、デザインも機能の1つなのである(だからこそ作り手は、単純な好き嫌いではなく、意図を持ってデザインを使うことが求められる)。

 クルマはタイヤとホイールを介して地面に立つモノなので、ホイールの存在感はクルマの印象を作るところがある。クルマのデザインを動物に例えることがあるが、4本の脚で地面に立つ動物とクルマのイメージは似ている。速く走る草食動物、肉食の猛獣など脚の形はその動物がどんな動物なのかという印象を抱かせる要素としては大きい。クルマに対しても似たような情報の解釈をわれわれは持っているように思う。

 クルマ全体の中で存在感が大きいからこそ、自動車メーカーはニューモデルを開発する際には、ボディだけでなく当たり前のようにホイールもセットでデザインする。また、クルマの印象を作る中でも小さくないものであるから、例えば高級感を訴求するグレード、スポーティーさを訴求するグレード、親しみやすさを訴求するグレードなどで、それぞれ違うデザインのホイールを用意することにより、1つのモデルの中で幾つかのキャラクター表現をするための道具としても使われる訳である。

 さて、面白いのはここからだ。クルマというモノは「どうしても必要だから」とか「使い勝手などの機能性」だけで、必ずしも選ばれる(購入される)訳ではない。程度の差はあれ、自分専用とか、自分なりのイメージとか、小難しい理屈はなくとも何となく他人のとはちょっと違うものが欲しいといった感情が、クルマの購入時や所有していく期間の中で起きてくる人々がある一定数いる。

 愛車という言葉が昔あるように、クルマはモノへの愛着や愛情で語られることの多い商品だ。「愛」の付く工業製品はさほど多くない。愛で語られるモノには、アフターマーケットという市場が成立する。クルマもしかり。

 ここでホイールに話を戻す。クルマの印象を作る中でホイールの役割がそれなりに大きいということは、アフターマーケットでのビジネスのアイテムとしても、ホイールはメジャーなアイテムとなる。東京オートサロンの会場に出掛けてみると分かるが、国内だけでもホイールメーカーは数多くある。アフターマーケットの業界団体である日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会のホイール部門ともいえるJAWA事業部に所属している企業で94社(JAWA発行「アルミホイール・イヤーブック2015」による)だそうだ。

 この団体に所属していないメーカーもあるので、世の中にはホイールをビジネスとしている会社はこれ以上に結構な数があり、とても全てを俯瞰(ふかん)しきれないが、オートサロン会場でのメジャーなブランドのブース展示を見ているだけでも、それぞれに特徴や得意分野で存在しており、必ずしも競合関係とも言えないようなところは興味深い。

 必ずしも競合関係とも言えないと感じる一方で、どこのメーカー/ブランドにも共通して流れるデザインのトレンド(“スタイル”というより“ファッション”に近い感じのものであるが)もある。近年よく目にするのは、成形後にひと手間加える(マシニングでスポークの肉抜きをする、塗装後に一部を削り金属面を出した後クリア塗装する、などはよく見られる手法だ)、コンケイブと称しディスク面のすり鉢形状を誇張する、つや消しもしくは半ツヤの塗装、ディープリム……。「流行はらせん階段状に繰り返す」も感じる風景である。

スポークへの切削加工ディープリム 「東京オートサロン2016」で見られたホイールのデザイントレンド。スポークへの切削加工(左、ヨコハマタイヤ)とディープリム(右、レイズ)(クリックで拡大)
マシニング加工によるロゴ入れマットカラー マシニング加工によるロゴ入れ(左、レイズ)とマットカラー(右、エンケイ)(クリックで拡大)
塗装に部分ポリッシュしたレクサス向け純正ホイール(左、BBSジャパン)とさまざまな表面処理の例(右、ワーク)(クリックで拡大)

 そのような中でも気になるものはある訳で、次ページから、幾つか興味を引いたホイールメーカーの展示を紹介しよう。

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