自動車用ホイールとデザインの深イイ関係クルマから見るデザインの真価(9)(3/4 ページ)

» 2016年03月01日 10時00分 公開

BBSジャパン

 BBSは鍛造ホイールの性能の高さで世界でもトップブランドとなった、ドイツのブランドである。鍛造、鋳造、レーシングと大きく3つの事業を自社ブランドのアフターマーケット製品と自動車メーカー向けOEM製品で展開していた。

 このうちの鍛造ホイールは、BBSジャパンの前身である富山のワシマイヤーが全数を研究開発から設計、製造までを行っており、ドイツBBSは鋳造製品を作っていた。Ferrari(フェラーリ)のF1レースカー向けに世界初の鍛造マグネシウムホイールを開発するなど、高いブランドイメージを獲得する役割を日本企業が負っていたというところが興味深い。ドイツのBBSは倒産してしまったが、鍛造ホイールとレーシングホイール事業についてはBBSジャパンが引き継いでいる。

 ビジネスとしては、国内外自動車メーカーへのOEM供給が大きいが、アフターマーケットやレーシングでのブランドイメージの強さがある。筆者はホイールのデザインの仕事で、これまで何度かBBSジャパンでホイールを作ったことがあるが、自分たちの技術に完璧さを求める姿勢の強さを感じている。

 これまでの鍛造製品のラインアップとしては、アルミホイールの他にマグネシウムホイールを市販化してきていて、2011年には世界初となる超超ジュラルミンによる鍛造ホイールを商品化した。2016年のオートサロンでは超超ジュラルミンホイールの第3弾となるモデルと、マグネシウムホイールの新モデルが発表された。

BBSの新作超超ジュラルミンホイールを装着した「BMW i8」軽量が特徴の超超ジュラルミンホイールの軽さを体験できるコーナーも BBSの新作超超ジュラルミンホイールを装着した「BMW i8」(左)。軽量が特徴の超超ジュラルミンホイールの軽さを体験できるコーナーも(クリックで拡大)
ベントレー向けアルミ鍛造ホイール ベントレー向けアルミ鍛造ホイール。金型成形後にマシニングを施している(クリックで拡大)

 またBBSジャパンでは、従来の金型で鍛造する製造方式に加えて、意匠面のない基本形状のみを鍛造し、意匠形状は5軸切削加工機を使って切削により作るという手法も本格化させてきている。

 BBSジャパン 営業部部長の三好明久氏と同マネジャーの小野良雄氏に話を伺うと、超超ジュラルミンの鍛造ホイールについては、国内外の自動車メーカーが興味を示しており、どのメーカーのどのクルマ向けに最初に供給するかの検討も進んでいるようだ。

 興味深い動きとしては、某メーカーの高級車ブランドでは、オプションホイールをなるべく多くそろえるという目的から、最近は金型を起こさない切削方式を求められることが増えてきたそうだ。筆者が2年ほど前にデザインしたアフターマーケット用ホイールをBBSジャパンへ依頼して作った際、少量生産を前提とした企画だったことから、高価な鍛造金型を製作するのではビジネスとして成立しないため、同社が市販車向けに準備をすすめていた切削方式で鍛造ホイールを製作したのだが、いよいよ自動車メーカーの純正品でもこの流れになってきたのかと感じる。

レイズ

 近年は日産自動車向けのOEM事業なども展開しているが、レイズは基本アフターマーケットでのビジネス展開をしてきたホイールブランドである。ブランドロゴのタグラインに「The concept is racing」と表記されているように、F1から草レースレベルまで使われており、ブランドイメージもモータースポーツからのイメージを前面に出している。鍛造/鋳造とも自社工場を持ち、市場での存在感が大きい企業の1つだ。

レイズがF1レースカーに供給しているホイールレイズがWECレースカーに供給しているホイール レイズがF1(左)とWEC(右)のレースカーに供給しているホイール(クリックで拡大)

 確か2015年のオートサロンだったと記憶しているが、参考出品で超超ジュラルミンの鍛造ホイールを展示していた。BBSに続いての超超ジュラルミンの鍛造ホイールであり、2016年のオートサロンでは進化版なり市販バージョンなりの展示があるかと思っていたが、残念ながら展示は何もなかった。加工の難易度の高さなどでいまだ開発中で、新たにプレゼンテーションする段階ではないのか、ビジネスとして難しいという判断で中止となったのか、今後の様子を見ていきたいところである。

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