自動ブレーキなしで燃費も普通なのに欧州販売トップ、「ルーテシア」の魅力とは車両デザイン(3/3 ページ)

» 2016年03月07日 11時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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見た目だけのクルマではない

ステアリングホイール後部座席 ステアリングは「ルーテシア GT」と共通に(左)。ホイールや後部座席もふんだんに赤が使われている(中央、右) (クリックして拡大)

 見た目に重きを置いてクルマを決める女性にとって、走行性能は恐らく二の次、三の次だろう。だが、外見が良いだけのクルマでは欧州販売のトップは獲れない。

 今回のルーテシアの一部改良のポイントは、インテンスと排気量1.2lのゼンにアイドリングストップ機能を搭載した点だ。欧州の排気ガス規制「Euro6」の施行に伴う変更となる。最高出力は120psから118psに下がったが、最大トルクは190Nmから205Nmに向上した。これにより、時速30〜60km、時速50〜80km、時速80〜120kmといった速度域での中間加速が改善。「街乗りからロングドライブまで運転しやすい特性となった」(ルノー・ジャポン)という。

 2時間ほど、ルーテシア インテンスを借りて東京都内をドライブした。東京モノレールの天王洲アイル駅付近をスタートし、お台場周辺や東京ゲートブリッジを運転してみた。

 筆者は普段、ルーテシアと同じBセグメントのアウディ「A1」を運転している。硬い乗り心地でステアリングが重めなA1と比べると、ルーテシアはとても滑らかで静かに走る印象だ。

 ルーテシアの6速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)は、A1の7速DCTよりも変速ショックが少なかった。エンジン音が静かだからと調子に乗ってアクセルを踏むと、スピードがうっかり出過ぎるほど、加速は快適で反応が良い。回転数の上昇に合わせてエンジン音がうるさくなるA1とは異なる。速度計の表示ほど速度が出ている気がしない、軽やかな走り心地だった。

 車内はA1ほど堅牢で強固な密閉感はないが、カッチリした感じがある。ある程度高い速度でもカッチリしたままなので、高速道路での長距離移動も疲れにくそうだ。

 アイドリングストップ機能はA1とルーテシアで大きく違った。A1はエンジンの停止/再始動の振動が目立ち、ブレーキペダルを離してから再始動するまで一呼吸遅い。ルーテシアは振動がほとんどなく、スムーズに再始動した。A1のアイドリングストップ機能は常にオフにしているが、ルーテシアはそのまま使う気になれる。アイドリングストップ機能は、ルーテシアの燃費改善に大きく貢献している。

 すいすいと走り続けたくなるクルマで、時間制限つきの試乗なのが残念だった。ルーテシアは見目麗しいだけではない。走りにこだわる人も不満を感じにくいのではないか。

 しかし、見た目と走行性能だけでは、今後もルーテシアが販売を伸ばすのは難しい。フレデリック氏は「運転支援システムがなくても、2015年までは販売に大きな影響はなかった。しかし、2016年からは逆風が強くなっていく」という。日本市場でも、自動ブレーキがないという点で下見に販売店へ足を運んですらもらえなくなっていく可能性がある。

 「デザインの特色が変化球だとすると、安全装備はストレートだ。お客さまはいずれ変化球に目が慣れて、反応しなくなってしまう。多様な変化球を投げられるのは重要だが、ストレートも投げなければ販売は難しくなっていく」(フレデリック氏)。見た目重視の女性も、外観以外を全て度外視しているとは限らない。今後、ルノーが投げる“ストレート”次第で、デザインの強みがさらに生かされそうだ。

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