AUTOSAR導入に対する「期待」を正しく見定め続けるためにAUTOSAR〜はじめの一歩、そしてその未来(6)(2/3 ページ)

» 2016年03月10日 10時00分 公開

AUTOSARへの「期待」を見定めるには

 これまでの連載で、AUTOSARによって標準化される対象の概要について述べてきた。それらを理解し、必要に応じてさらに深く知ることで、期待できることもより多く見えてくるだろう。しかし、それはAUTOSARそのものが提供するものに偏りがちで、自らの運用により得られるものは見えにくいだろう。

 AUTOSARを利用/運用することで得られるものを把握することは重要である。その際、AUTOSARの背後に潜む、以下のようにさまざまな側面も大きなヒントになりうる(注:決して網羅的ではない)。

  • 標準規格類の利用(AUTOSAR流の各種レベルでの抽象化やデータ形式、ワークフローの利用、アーキテクチャ、ECU間通信仕様など)
  • より多くの外部調達品の利用
  • 汎用品の利用
  • 自動コード生成の利用
  • リアルタイムOS(Real Time Operating System、RTOS)の利用
  • 再利用や各種自動化により得られる効果への大きな依存(言い換えれば、「投資をしてでも効果に賭ける」)

 まず、ここに書き出したキーワードの中に、期待につながるものはないかと、自身でご一考いただきたい。自ら見いだしたものの方が一般解よりも実感を持てるはずだ※4)

 また、「困りごと」の解決につながるものは比較的分かりやすいだろうが、長年にわたり対処や解決を諦めていたものは、「困りごと」としてすぐには思いつかないこともあるだろう。リスクアセスメントと同様に、見えやすいものだけに注目するべきではない。

 期待につながるものがもたらす効果の内容(トレードオフも含む)、得られる時期(どのくらい待たなければならないか)、投資や準備の要否、外部要因への依存性なども、やはり、受け入れる側の状況次第である。導入の効果は、AUTOSARそのものの特性ではなく、AUTOSARをあてはめる現場との組み合わせによる特性といえよう。

注釈

※4)考えた内容を持ち寄り意見交換することも役立つが、その際には「分析」の場であり「評価/判断」の場ではないことはお忘れなく(批判禁止)。しかし、議論禁止では決してない。議論を持ちかけることを批判と見なして拒否するのは、ISO 26262-2:2011の安全文化(safety culture、5.4.2およびAnnex B)の要求の観点からも大いに疑問がある。また、ただ単に集まるだけでは「社会的手抜き」に陥ることもあるのでご注意を。JIS Q31010: 2012 リスクマネジメント−リスクアセスメント技法における、ブレーンストーミングの長所および短所も参考になるだろう(B.1.6)。


関連キーワード

AUTOSAR | 車載ソフトウェア


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.