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» 2016年03月11日 07時00分 公開

ロボットキーマンを訪ねて:スケルトニクス 白久レイエス樹氏に聞く、パワードスーツの現在と未来 (3/6)

[大内孝子,MONOist]

スケルトニクスが実現したこと

 人体拡張という文脈には、先達として立命館大学の金岡克弥先生がいる。個人的にも金岡先生の論文はいくつも読んでいる、スケルトニクスというよりエグゾネクスの開発において参考にさせていただくことが多いという白久氏。スケルトニクスのアプローチと金岡先生のアプローチでは、どう違う(似ている)のだろうか?

photo 2015年4月末に開催された「ニコニコ超会議2015」の「超ロボットエリア」に展示されていた、金岡先生の「MMSEBattroid ver.0.1」

白久氏 僕の理解なんですが、金岡先生がどういう研究をされているかというと、これまで大きく2つ流れがあったと思います。1つは愛知万博のときに展示されたシナジーエフェクターシリーズで、腕の力、脚力を増幅するマシン。ポイントになるのは力の増幅です。

 先生の初期の研究では、増幅する機器と自分の手がすごく近い位置にある。それが、2010年あたりになると、ちょっと方向転換されて「マスター」と「スレーブ」という概念に着目しています。大きな力が人の近くにあるとそれが暴走したとき危ないということで、操作するマスターと強大な力を持つスレーブをちょっと離しましょういう考え方です。電気的につなげることによって、力を利用するという概念はそのままに人を安全な位置まで下げるという考え方にシフトして研究開発をしています。

 弊社スケルトニクスのシリーズに関しては、恐らく、マスター/スレーブの一部ではあるんですが、力の拡張ではありません。人体拡張といっても何を拡張するかというところが違って、力の拡張というよりは動きの拡張です。

 金岡先生が安全性の優先順位を高くしているのに対し、スケルトニクスはどちらかといえばそこは犠牲にしているという。機械的に接続されているため遅延がなく、非常にシンクロしているように見える。「スーツが人間らしい動きをしてくれる」のだ。

 スケルトニクスが、“搭乗型外骨格スーツ”として技術的に実現できたことはまさにそこだ。「人の動きを取り出してそれをうまくスーツに反映させていること」だという。

 人間の身体は、関節や筋肉、腱など含め100箇所以上が動く。関節が動く向きや範囲はそれぞれ異なり、筋肉の柔らかさによっても動きに微妙な変化がある。

白久氏 どのロボットの研究者も、その全てを作り込むことは恐らく不可能です。絶対、どこか妥協しなければいけない。例えば「指の部分はこの方向への動きをやめる」「脚はこちらの方向への動きをやめておく」などです。スケルトニクスも同じで、約30箇所が動くようになっていますが、可動箇所は人間より圧倒的に少ないんですが、この30箇所で、デモで見てもらえるような動きができることを示したのが、技術的に大きいところかなと思います。

 社会的な意義という面では、スケルトニクスによって外骨格といった言葉が一般に周知されたことが、その1つだろう。そのものが現実世界に現れ、介護や工場など限られた場だけではなく、一般の人でも見ることができるようになった。装着型ロボットの可能性を伝えるものとして、これは大きい。

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