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» 2016年03月15日 10時00分 公開

クルマは5Gのキラーアプリになり得るのかMobile World Congress 2016レポート(3/4 ページ)

[吉岡佐和子(情報通信総合研究所),MONOist]

F1レーサーのハミルトンを登壇させたクアルコムの狙い

 他にも、自動車分野に熱い視線を注いでいる企業がある。基調講演に登壇したQualcomm(クアルコム)は、モバイル通信向けチップセットで世界シェアトップの半導体メーカーだ。しかし同社によれば、モバイル分野のみならず、実は既にクルマに約3億4千万個の同社製チップを搭載させているという。

 クアルコムプレジデントのDerek Aberle(デレク・アベルレ)氏は講演の冒頭で、モバイルとクルマがいかに似たものであるかについて語った。アベルレ氏は、2015年に販売されたクルマの3分の2がBluetooth接続に対応していることを明らかにした上で、「そして近い将来、セルラー(移動体通信網)についてもBluetoothと同等に搭載されていることが一般的となり、フリートなどに活用されるようになるということ以外に、Wi-Fiについてもモバイルホットスポットなどの利用シーンが増える」と語り、クルマに通信機能が搭載されるのはもはや当たり前の世界であることを示した。

 また同氏は、2010年時点においてクルマの約30%が電子化されているが、これが2030年には50%にまで上昇すると指摘。「電子化が将来のクルマの在り方を変える要素であり、そして既にクルマの在り方を変えつつある」(同氏)ことにも言及した。

 その一例として取り上げたのが電気自動車だ。現状では、電気自動車はまだ普及しているとは言い難く、その要因となるさまざまな課題をクアルコムは解決しようと試みている。その試みの1つが「充電」だ。同社は、ガレージや道路、駐車場などに埋め込み可能なチャージング(充電)技術「Qualcomm Halo」を開発しており、クルマがその上に乗るだけで充電できるソリューションを提供している。さらに今後は、「Dynamic Wireless Charging技術」により、走行しながらの充電をも実現しようとしている。こういった取り組みが自動運転実現の一端を担うとクアルコムは主張する。「線につながなければ充電できない自動運転車などあり得ない」(同氏)からだ。

 またクアルコムは、クルマにセルラー(3G回線)のコネクティビティを搭載した初の企業として、既に10年以上の経験を有している。この経験を生かして、現在Advanced 4G/LTE技術のクルマへの導入も進める他に、今後は新たな通信技術として、LTE Advanced Proや5Gをクルマに搭載する計画だ。これらの通信回線を搭載することで、車車間、路車間、歩車間などV2X(Vehicle to X)のコネクティビティに対する信頼性を大幅に上げることができ、かつ遅延を劇的に減らすことができると指摘している。つまり、QualcommはLTE Advanced Proや5Gが自動運転車にとって重要なコンポーネントになると考えていることが分かる。

 講演の中で、クアルコムによる実際のクルマへの取り組み成果として、F1チーム「Mercedes AMG Petronas」と連携している話を持ち出した(関連記事:クアルコムとダイムラーが提携、コネクテッドカーとワイヤレス給電で)。そこで講演に登場したのが、3度のF1チャンピオンに輝いたレーシングドライバーのルイス・ハミルトン氏である。

レーシングドライバーのルイス・ハミルトン氏も登場したクアルコムのMWC2016の基調講演ハミルトン氏と並ぶクアルコムプレジデントのデレク・アベルレ氏(写真内左側) レーシングドライバーのルイス・ハミルトン氏も登場したクアルコムのMWC2016の基調講演(左)。ハミルトン氏と並ぶクアルコムプレジデントのデレク・アベルレ氏(写真内左側)(右)(クリックで拡大)

 ハミルトン氏はステージ上で自撮りをするなどユーモアな一面を見せつつも、クアルコムの技術協力を通じて、センサーでタイヤの状況を常にモニタリングし、Wi-Fiを経由してデータを瞬時に送信可能になったことによって、メカニックの判断が大幅に早まったことについて触れ、「勝ち負けを左右するくらい」とその恩恵について語った。

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