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» 2016年03月15日 06時00分 公開

燃料電池車:CO2排出ゼロの物流拠点、風力発電と燃料電池フォークリフトで実現 (2/2)

[齊藤由希,MONOist]
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不安定な風力発電で、フォークリフトに水素を安定供給するには

今回の実証実験の水素サプライチェーンの概要図 今回の実証実験の水素サプライチェーンの概要図 (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 エネルギーを地産地消するため、横浜市の風力発電所「ハマウィング」で発電した電力で水を電気分解して水素を製造する。水素の圧縮機の使用電力も風力発電でまかなうことで、水素充填車に積載するまでのCO2排出をゼロとする。

水素は電気分解で製造する。電気分解に使用する電気も設備の動力も風力発電でまかなう 水素は電気分解で製造する。電気分解に使用する電気も設備の動力も風力発電でまかなう (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 風力発電は発電量の変動が大きいが、4社4拠点に配置する12台の燃料電池フォークリフトに水素を安定供給しなければならない。そのため、常に2日分の水素を貯蔵し、水素充填車に積載する際に圧縮して加圧する仕組みをとる。また、風力発電が停止している間に水素を圧縮する場合に備えて、蓄電システムで圧縮機の稼働に必要な電力となる150kWhを確保する。

風力発電は分単位でも変動が大きい蓄電システムの一部 風力発電は分単位でも変動が大きい(左)。そのため、水素を圧縮する電力を常に確保するため蓄電システムを使用する(右)。写真は蓄電システムの一部で、ハイブリッド車15台分のニッケル水素電池を使用している (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 蓄電システムには、180台分のハイブリッド車の使用済みニッケル水素電池を使用する。これはトヨタタービンアンドシステムが提供するシステムで、2013年から全国のトヨタ系の販売店50か所で導入、運用しているものだ。販売店では、非常用の電源や使用電力のピークカットとして利用する。

 使用済みニッケル水素電池は廃車や修復不可能な事故車両から回収したものだ。回収時の状態によって、再び車載で使用可能なリユース用、車載用としては適さないものの蓄電システムで十分使用できる性能の定置用、ニッケルのみを再利用するリサイクル用に分けられる。

発電量の変動に合わせてフレキシブルに電力を配分する。振り分けは水素の製造が最優先となる 発電量の変動に合わせてフレキシブルに電力を配分する。振り分けは水素の製造が最優先となる (クリックして拡大) 出典:東芝

 ハマウィングの発電量のうち、電解装置、圧縮機、蓄電システムに振り分ける電力は、東芝のエネルギーマネジメントシステムで管理する。電力は水素製造に優先して使用し、余力は蓄電システムに割り当てる。東芝は、過去1年間のハマウィングの発電量データと、30分ごとの発電収支を基にシステムを制御する。

小型トラックが水素を配達

 CO2排出量ゼロで製造/圧縮した水素は、岩谷産業が開発した小型の水素充填車で輸送する。従来の燃料電池車を対象とした移動式の水素ステーションは、大型トレーラーがベース車両で、広い敷地に停車することが前提となっていた。一方、フォークリフトは公道を自走できないため、物流拠点の敷地を出られない。岩谷産業が開発した水素充填車は4トントラックをベースとし、狭い敷地にも出入りしやすくした。

水素充填車の仕様4トントラックがベースの水素充填車 水素充填車の仕様(左)と実車(右)。4トントラックをベースとし、物流拠点の敷地に出入りしやすくした (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 この水素充填車は燃料電池フォークリフト6台分の水素を搭載する。現在は1台の製作を終えており、2017年度に向けてもう1台を製作し、2台体制で12台の燃料電池フォークリフトに水素を届ける。水素使用量は「常時把握し、導入先の要望に合わせてきめ細かく輸送する」(トヨタ自動車 専務役員の友山茂樹氏)。

燃料電池フォークリフトを利用する4社の拠点と、水素の製造拠点となるハマウィングの立地 燃料電池フォークリフトを利用する4社の拠点と、水素の製造拠点となるハマウィングの立地 (クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 燃料電池フォークリフトはトヨタ自動車と豊田自動織機が共同開発したもので、横浜市の中央卸売市場本場とキリンビール横浜工場、川崎市のナカムラロジスティクスとニチレイロジグループの4か所で導入する。それぞれの導入先で積載量や使用環境が異なることを生かし、さまざまな条件で実証を行う。

 2016年度は設備の工事などシステム構築に充て、水素充填車1台と燃料電池フォークリフト2台のみ試験的に運用する。2017年度から全ての設備と車両を稼働する計画だ。

 この実証実験の水素サプライチェーンは「ほぼ一点モノの設備ばかりで、コストとしては高い」(友山氏)。設備費用や保守費用、水素の取り扱いに関する有資格者の人件費、再生エネルギー電力の価格などがコストを引き上げている。今後、量産効果や規制緩和でどこまで水素利活用のコストを引き下げられるか検討を進める。また、さらなるCO2排出削減に向けた対策を模索する。

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