建設現場の生産性を革新的に高めたい、まずは実験室から分厚いバインダーを不要に業務用スマートグラス MOVERIO Pro 導入事例 BT-2000 前田建設工業株式会社

前田建設工業は人手不足を背景に、ICT機器を利用した生産性の革新的な向上を狙っている。注目したのは建設現場の進捗に影響を与える土壌や地下水の分析だ。結果を1日も早く現場に戻すため、エプソンの業務用スマートグラス「MOVERIO Pro」(BT-2000)を用いたという。機器を選定し、導入を推進している生産性革新技術研究室 室長 上田康浩氏と、実験室で利用している須江まゆ氏にお話を伺った。

» 2016年03月18日 10時00分 公開
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エプソンの業務用スマートグラス「MOVERIO Pro」(BTー2000)
価格:オープンプライス、液晶パネル画素数:横960×縦540、カメラ画素数:500万、質量:290g(スマートグラス)


前田建設工業株式会社(技術研究所)
所在地:東京都練馬区旭町1-39-16
最寄駅:都営地下鉄大江戸線 光が丘駅
御担当者:上田様、須江様
URL:https://www.maeda.co.jp/
導入機種:MOVERIO Pro BT-2000
導入箇所:実験室
対象物:薬品瓶

before ニーズ・課題

  • 繁忙期には1日20〜30件の化学分析依頼が届く。
  • PCやタブレットを導入しておらず、薬品を取り出すたびに分厚いバインダーのページをくり、保護措置を確認していたため、確認に時間がかかっていた。
  • 業務の流れを変えることで生産性を革新したい。

after 導入後

  • いつでも誰でも化学分析に用いる薬品を安全にかつ短時間で取り扱いできるため、人手を増やさなくても対応できる。
  • QRコードを貼り付けた薬品瓶を見るだけで、必要な保護措置を確認できるようになった。
  • 建設に関連する業務で、生産性を革新する手法を得た。

背景  ICT機器による生産性革新で業務の流れ自体を変えていく

前田建設工業株式会社 技術研究所 生産性革新技術研究室 室長 上田康浩氏

 建設業界では、震災対応やオリンピックの影響により工事が増えている。その一方で人材の高齢化が進んでおり、人手不足が著しい。「このような傾向は当社グループでも同じです。しかし、工事の需要はいずれ落ち着くため、人を増やすというよりも、今、働いている人材の生産性を高めようとしています。通常の改善活動による生産性向上に加えて、新たにICT機器を利用した生産性の『革新』を狙っています」(上田康浩氏)。キーワードとしてはIoT(モノのインターネット)やロボット化、自動化を考えているという。

 生産性の革新には業務の流れ自体を変えることが不可欠なのだという。例えば、作業報告書を作る流れは、現場で写真を撮影し、事務所に戻った後PC上で文章を添えるというもの。「これが、クラウドを利用した作業報告書の自動生成に変われば、事務所に戻らなくとも、報告書が作成できます。現在、支店や事務所は作業報告書に基づいて意思決定していますから、ICT機器を導入して業務の流れ自体を変えることができれば、かなりの時間短縮効果を期待できます」(上田氏)。

 このようにしてスマートな働き方を提示することができれば、新しい人材を確保する際にも有利に働くという。

理由  分析結果を待つ現場へ、いち早く応えるためにはスマートグラスが役立つ

 ICT機器を用いた生産性革新を進めるテストケースとして、技術研究所が担う化学分析が選ばれた。「年間500件の現場から、土壌や地下水のサンプルが届き、ヒ素などの危険な物質を含んでいないかどうかを調べる分析です」(上田氏)。繁忙期には1日20〜30件の依頼が届き、4人程度でこなしていく。

 分析が終わらないと契約や工事が進まないことも多く、1日も早く結果を出さなければならない。工事中にトンネルの切り羽で崩落が起きた場合は、岩の成分に原因がないかどうかを分析で確かめるまでは工事が止まることもあるという。

 化学分析にも業務の流れがあり、改善点が見つかった。実験に用いる薬品は150種類以上あり、うち毒劇物が7割を占める。分析に入る前にどのような保護措置が必要なのかを確認している。

 薬品の情報をまとめた安全データシート(SDS)は、分厚いバインダーに閉じられており、ページをめくりながら、検索していた。「当社はこれらの作業をPCやタブレットにはまだ移行していませんでした。そこで、両手が空くスマートグラスを用いて、薬品の情報を即座に得られるように工夫しています。エプソンのBT-2000は、両眼・シースルーであるため画像が広く見え、文字情報を表示しやすいことを理由に選択しました。建築現場に応用することを考えると装着安定性にもメリットを感じました」(上田氏)。

活用  危険な薬品の取り扱いがスムーズに、時間・空間・安全で効果

前田建設工業株式会社 技術研究所 主任研究員 須江まゆ氏

 「BT-2000を導入することで、どのような薬品を使う場合であっても、誰が使う場合でも、分析に取り掛かるまでの時間を短縮でき、より安全に作業を進めることができます」(須江まゆ氏)。

 新しい作業手順はこうだ。まず分析内容から必要な薬品が決まる。BT-2000で薬品棚にある薬品を見ると、ガラス越しであっても薬品瓶に貼った「QRコード」を認識する。SDSのデータはサーバからWi-Fi経由で取得しているものの、タイムラグはほとんどないという。1つの薬品につきA4判で3〜4ページのデータだ。

 QRコードを認識すると、危険度合いと薬品名が映し出され、SDSの内容を参照できる。薬品瓶を手に取る前にどのような保護処置が必要なのかが分かり、保護めがねなどを装着できる。

 一般的な土壌分析に要する時間は約8時間。そのうち2時間は直接人手を要する部分だ。この2時間を改善できる。「これまでは素早い対応が必要な場合に備えてSDSのバインダーを机に広げていましたから、作業時間だけでなく、実験室のスペースも節約できます」(須江氏)。

 現在は、薬品の使用量を記録する際、天秤の目盛りを読み取って手書きで記録している。「目盛りをBT-2000で撮影して、BT-2000のアプリケーション内で記録をとり、通信機能を使用して、報告を上げる仕組みを作ることが次の目標です。薬品で汚れた可能性のある保護手袋が書類に全く触れませんから、安全性も高まります」(須江氏)。

QRコードを貼り付けた薬品瓶
BT-2000導入前には分析前に2冊のバインダーを広げる必要があった。
薬品瓶のQRコードから安全確保のための情報を読み取っているところ。

展望  建設業に必要な広い用途を開拓する

 「今後は専用アプリケーションの開発を進め、複数のモデル現場に導入することを考えています。不具合の検証とニーズをみて、導入箇所を広げていきたい」(上田氏)。社内のアンケート調査によって、スマートグラスがどのように業務を改善し、品質向上につながったのかを確認していくという。

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提供:エプソン販売株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年7月14日