「常に先駆者」のCerevoに息づく日本のモノづくりモノだけじゃない! 日本のモノづくり(9)

「グローバルニッチ」というスローガンを掲げ、今や社員約80人にまで成長したCerevo。一般に多く受け入れられる製品とは対極にある、ニッチなニーズに応える製品のみを作る。Cerevoの企画やエンジニアのマインド、強さとしなやかさは、どこからくるのだろうか。「常に最初の一歩」を踏み出し続けるCerevo流モノづくりの源泉を探る。

» 2016年03月23日 10時00分 公開
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 モノづくりを支援するプロトラブズが、日本の未来を担うクリエイティブなモノづくりを追う連載「モノだけじゃない! 日本のモノづくり」。今回、プロトラブズ社長のトーマス・パン氏が対談したのは、ニッチなモノづくりで話題を呼んでいるCerevoの取締役CTO松本健一氏。製品企画やモノづくりに対する考えを中心に、Cerevo流モノづくりの源泉を探った。

photo プロトラブズ社長のトーマス・パン氏(左)とCerevoの取締役CTO松本健一氏(右)

どれだけ売れるかより、ニッチなニーズがあるかどうかで決める

(以下、敬称略)

パン Cerevoのスローガンである「グローバルニッチ」というのは、どのようなアプローチなのですか。

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松本 何を作るべきかという考え方はいろいろあると思います。一つは、企業側が「これだ!」と思うものを作る。そこに集中していくというアプローチはすごく正しいと思います。Cerevoはそれとは逆で、思考実験を基に複数の製品を作っていくことで成立する製品かどうかにはある程度確率があるだろうという仮説に基づいています。仮に10%の確率ならば、100製品を出せば10製品は成功するだろうというのが、われわれの考え方です。ニッチだけれど、確実にニーズがあるところに対して商品を投入し、それを繰り返す。特に家電は、まだまだニッチなニーズがあると考えているので、その小さな穴をどんどん埋めていくのがわれわれのグローバルニッチというアプローチです。

パン 商品化のチョイスは無尽蔵にあるということですよね。その中で何を作るかは、どうやって決めるのですか。

松本 例えば、製品ごとに売れた台数と利益を見て、似たものを作ればまた同じように売り上げが上がるという考え方は全くしません。本当にそういうニーズが存在するか、しないか、1かゼロかという議論はよくしますが、そのニーズが1か100か、あるいは1000なのかという議論はあまりしないですね。むしろ意識的に考えないようにしています。

 また、性別とか、国籍とか、特定のカテゴリーの人にだけしか使えないものは作りません。誰でも使える、誰でも楽しんでいただけるというのは、一つの判断の軸にしています。例えば妊婦さん向けといったものは、われわれは作りません。

パン 明確なマーケットがあると分かっているものは、Cerevoじゃないということですね。ニッチだけれどニーズは存在する。でもCerevoしか作っていないから、欲しい人が集まってくる。ということは、100%ビジネスになりますね。

松本 基本的にはそう思っていますが、実際にはニーズが100ではなく、10や5ということもあります。でも、そういうものが生まれるのも仕方がないと思っています。ただし作る側としては、1000台しか売れなくても、ある程度の利益率を確保できるように考えているのも事実です。生産コストを抑えるとか、試作も含めて開発期間をより短くして、商品をより数多く投入できるようにするとか。

 これまで一般的な家電の売れ方と比べて大ホームランとなった製品はありませんが、ニッチな世界で面白いのは、空振りがないことですね。売れ方の程度に差はありますが、誰かが必要としてくれると感じています。

パン では、Cerevoの競合というのはあるのですか。

松本 競合という考え方は、そもそもほとんどないですね。「競合がいる=ニッチではない」と思っています。他にグローバルニッチな製品を作る会社があったとしても、この考え方でやっているかぎり、おそらくガッツリかぶることはなくて、ちょっとかするくらいでしょうし、もしかすったときは、多分どちらかの会社が撤退すると思います。このビジネスモデルでは、「かぶる、かする=失敗」ということですから。

1970〜80年代のモノづくりのノウハウは日本の強み

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パン ニッチで特徴的なモノづくりをするのに必要なこととは何でしょうか。

松本 少人数で作ることですね。コンセプトを固めるのも、今はほとんど代表(岩佐琢磨氏)一人でやっていますし、作る時も、大人数だと少しずつ仕様が丸まって、無難なものになってしまいます。エンジニアが「この製品は自分が作った、自分の子どもだ」と明確に言えるような体制や作り方をしていきたいと考えています。それが尖った特徴のある製品になっていくのだと思います。

 少人数、短期間、少量など、スキームやスローガンはありますが、それに対するアプローチは、エンジニアがそれぞれ考えるべきだと思っています。前職を持っている人が多いので、日本で何十年もやってきた各メーカーのノウハウや考え方が少しずつ注入され、混ざりながら、グローバルニッチ、少量、多品種生産というところに収斂(しゅうれん)させることで、今のCerevoができつつあると思っています。

パン 試作は基本的に自分たちでするそうですが、「あったらいいのに」と思うツールや環境などはありますか。

松本 Cerevoがちょっと変わっているのは、常に世の流れとは少し違う方向に向いていることですね。ツールも「これがあればいいのに」というより、今あるものを組み合わせて使う。複数のツールを組み合わせると、他の人がやっていないようなことができる。そういう考え方がベースにあります。作りたいものと、今あるもので作れるものに多少ギャップがあるならば、それをどのように一致させていくかは、エンジニアの力の見せ所でしょう。

 重厚長大で何でもできるというツールが一つあるより、ツールの選択肢があって、ものによって使い分ける方がわれわれには合っているかなと思っています。

パン ツール使い分けとか、工夫のノウハウがCerevoの強さかもしれませんね。

松本 そうですね。なかなか明文化できないのですが、昔お金もなく、数人で作っていたころの、無理やり感が漂う試作などを見てもらうと、びっくりもするし、学んでもらう部分もあるかなと思いますね。本当に自分で一から手で削った試作品もいっぱいありますからね。

 Cerevoではグローバルニッチということで、多分、他の会社では企画として成立しないものを作っています。そんな製品を少人数で作るので、自分が作ったと言えるのです。そこに魅力やモチベーションを感じる人が集まっていることも、Cerevoの強さになっているのかなと思います。

パン なんだか70年代、80年代のモノづくりの話を聞いているみたいですね。

松本 むしろそれが、日本にいる一番の強みだと思います。1970〜80年代に活躍されていたエンジニアの方には、ノウハウがたくさんあるはずなので、それを教えていただける仕組みを実際に検討しているところです。実は、 われわれのアプローチの場合、最新の試作より昔の試作の方法論が効率がよかったのではないかということは、考えていきたいと思っています。

 われわれは中国を中心に海外で生産していますが、それだけでは中国で作っているのと同じになってしまいます。日本のノウハウを注入し、エンジニアが日本でオリジナルの設計をする。それと海外生産が組み合わさると、Cerevoになると思っています。

パン これから日本のモノづくりはどうなっていくと思いますか。

松本 Cerevoのような、ここまでグローバルニッチに偏ったメーカーが複数乱立するのは考えにくいとしても、少量で、いろいろなものが作られる世界はすぐ目の前に来ていると思います。作るのが小さな会社なのか、大きな会社なのかは分かりませんが、一般消費者にとって、選択肢が大量にあるという世界が来るのは間違いないでしょう。

 今でもノーブランドの家電が出てきていますが、それがもっと先鋭化して、知らないメーカーでも気にしないという時代になる。そうなったときに、知らないメーカーが作っている製品の元を作ったのはCerevo……という風になれるのが理想です。最初の一歩をただひたすら踏み出していく役割を、Cerevoが担っていければすごくいいなと思います。

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提供:プロトラブズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年4月22日

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