第51回 ウェアラブル機器とエンベデッドパッシブ前田真一の最新実装技術あれこれ塾(4/4 ページ)

» 2016年04月06日 11時00分 公開
[前田真一実装技術/MONOist]
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4.ウェアラブル機器

 アップルからApple Watchが発売され、いよいよウェアラブル機器が本格化し、今後に期待されています(図11)。

図11:Apple Watch(AppleのWebページより)

 ウェアラブル機器は、スマートフォンに比べても非常に小型の機器で、それに使われる基板も非常に小さいものになります。

 Apple Watchは外径が38.6×33.3mmのモデルと42.0×35.9mmのモデルがありますが、この内部に収まる基板のサイズは30mm角以下でしょう。これはLSIのパッケージと同等か、パッケージよりも小さいくらいの大きさです。

 例えばインテルの最新のCore i7のBGAパッケージは40×24mmでモバイル向けのCore i7Mでも30×16.5mmの大きさです(図12)。

図12:CoreTM(IntelのWebページより)

 当然、ウェラブル機器のCPUはPCのCPUよりもチップサイズはずっと小さいのですが、LSIパッケージと同じ程度の基板にセンサーやワイヤレス給電回路、プロセッサ、メモリなどを実装する必要があります。

 ウェアラブル機器はバッテリーの持ちとその大きさ(小型化)が大きな付加価値となり、価格も比較的高価なものです。

 このため、バッテリーを大きくし、基板をできるだけ小さくする必要があります。

 基板の小型化は基板や実装の価格より付加価値が大きくなります。

 このため、シリコンチップを含めた部品の3次元実装により基板を小型化できるならば、ある程度の価格の上昇があっても高密度実装技術が使われます。ウェアラブル機器の基板は、TSVを使ったシリコンインタポーザを始めとし、ビルドアップ基板や部品内蔵基板にとって大きなマーケットになる可能性は高いでしょう。

 消費電力を減らすことは、ウェアラブル機器にとっては最優先事項になります。消費電力が小さければ当然、バッテリーの持続時間は長くなりますし、発熱も小さくなります。常に体につけておくウェアラブル機器では、機器が発熱することは致命的な欠陥です。

 また、個々の部品の発熱が小さければ、3次元実装をはじめとするより高密度の部品実装が可能となり、基板面積をより小さくすることができます。

 逆に、高密度実装はICの消費電力や部品点数の削減にも有効な解決にもなります。信号の配線距離が短いと、ドライバの出力電流が小さくても信号を伝播することができます。これによりドライバの消費電流を減らすことができます。また配線が短ければ、配線を伝送線路として考えなくても良くなり、終端抵抗がなくても信号を伝達することができるようになります。

 これは終端抵抗の部品削除になると同時に終端抵抗による消費電力を削減できます。

 高密度実装と熱の問題はよくいわれるように相反するものではなく、最適設計を行えば、良いループにすることも可能です。


筆者紹介

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前田 真一(マエダ シンイチ)

KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。

近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)


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