製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

計画保全と品質保全で工程の信頼性と保全性を目指すいまさら聞けないTPM(4)(3/3 ページ)

» 2016年04月18日 11時00分 公開
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品質保全

 製造業にとって製品品質は生命線であることは言うまでもありません。品質には、「ねらい(設計)の品質」「つくり(製造)の品質」「サービスの品質」があります。お客さまに良品(要求品質)を100%提供することが品質保証の使命になります。その中で「つくりの品質」に焦点をあてる活動が狭義の品質保全であり、全体を対象にするものが広義の品質保全になります。今回は狭義の品質保全について解説致します。

 品質は、現場管理の結果が全て投影されたものです。設備管理、治具・検具管理、原材料管理、作業スキル管理、5S管理、環境管理などの管理レベルの総合力を表すものになります。とりわけ、設備・治具・検査具・原材料の管理は、品質に対する影響度は高いのです。品質不良を改善するためには、単に製品だけに目を向けて改善するのでなく、総合的な取り組みが必要です。

 品質保全は、品質の全(まった)き(100%良品の状態)を保つことによる不良予防の取り組みを意味しています。「不良の出ない設備や加工の条件を探り出し、その条件の傾向を管理し、不良の発生する可能性を前もってつぶす」ということです。良品をつくる条件管理が、不良防止の最良策ということです。このような予防的な対策を打つための設備保全の方法が品質保全になります。加工後の製品を測る(検査)だけではなく、品質に影響する因子を管理の対象として、それらが基準値範囲内にあることをモニタリングすることにより、不良を検知したり予知することを目指します。その因子を洗い出す方法としてPM分析が有効になるのです(図3)。

図3 図3 品質保全の基本的な考え方(クリックで拡大) 出典:JMAC

品質保全の進め方

 品質保全は「8の字展開」で進めます。8の字展開の特徴は、維持管理と改善活動と2つに区分してあることです(図4)。

図4 図4 品品質保全8の字展開法の概念(クリックで拡大) 出典:JMAC

 図4の中でもステップ2がポイントになります。ステップ2「復元:現状の決め事を守る」の評価を確実に行い、条件管理の体制上の不備を浮き彫りにするとともに、決めごとの抜けや甘さの追及を並行して実施することの大切さを強調しています。

 事実、現状の決めごとをしっかり守るだけで、不良が大幅に低減することもあるのです。しかし、管理の対象が多い、周期が短い、1回当たりの点検や清掃時間が長いなどといった要因により、維持しがたく、いつの間にか守れなくなってきている事例を多く見かけます。よって、不良がゼロになれば、維持しやすい改善を行い、まだゼロになっていなければ、不良解析を行い個別改善のサイクルを廻す必要があります。

 不良の発生状況によって、図4の右のサークルか左のサークルかを判断し、タイプ1の条件項目の追加、タイプ2の維持体制の見直し、タイプ3の維持と改善の両方などのいずれかを選び活動を行います。その結果不良ゼロの実現と不良予防により、品質の全(まったき)、すなわち良品100%の状態を保つのです。

 維持の効率化を図るためには、加工点を監視することの研究が必要になります。

 8の字展開を実践し、工程で品質を作りこむ、トヨタで言う自工程完結を行います。そして評価(検査)コストを上げることなく欠陥コストを撲滅し、最適品質コストを目指す活動です。

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筆者プロフィル

和泉高雄(いずみ たかお)

 日本能率協会コンサルティング 取締役 TPMコンサルティングカンパニー長

1984年、日本能率協会入職、日本プラントメンテナンス協会、JIPMソリューションを経て現職。早稲田大学 理工学術院 非常勤講師。日本プラントメンテナンス協会 TPM優秀賞審査員。工学院大学(生産機械工学科)、慶應義塾大学(経済学部)卒業。


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