先行き不透明な中国自動車市場、エコカーとクロスオーバーで乗り越えられるか北京モーターショー2016レポート(4/4 ページ)

» 2016年05月09日 11時00分 公開
[桃田健史MONOist]
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中国地場メーカーは新型EVと自動運転車でアピール

 これらの他、会場内で出展数が多かったのが、前述のNEVに対応するEVだ。それも、第一汽車、東風汽車などの地場大手よりも、地場の中堅や新興メーカーの出展が目立った。

中国地場の中堅メーカーがEV戦略に積極的 中国地場の中堅メーカーがEV戦略に積極的(クリックで拡大)

 少し昔を思い起こせば、2010年ごろにも政府の施策「十城千両」に対応するため、北京モーターショーや上海モーターショーに中国地場製の各種EVが登場した。だが、その多くがガソリン車からのコンバージョンといった“粗末な造り”だった。

 それに対して今回の北京モーターショーでは、フード内部の電装品のレイアウトを見ただけでも、欧米や日本製のEVと同様と出来栄えに仕上がっている。中国地場メーカーは伝統的に、ドイツ企業をあがめる傾向が強いため、Robert Bosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)などからモーター、インバータ、リチウムイオン二次電池を調達しているようだ。インテリアもシフターやダッシュボードで、EV専用化した先進的なデザインだ。

BYD AutoはEVからの放電システムを実演 BYD AutoはEVからの放電システムを実演(クリックで拡大)

 また、燃料電池車については、乗用車向けでは北汽集団が「燃料電池搭載のレンジエクステンダー」の技術展示を行った。

北汽集団は乗用車向けの燃料電池車システムを公開 北汽集団は乗用車向けの燃料電池車システムを公開(クリックで拡大)

 そして、世界各地で本格的な公道実証試験が進む自動運転車でも、中国製が続々と登場した。長安汽車の場合、今回の北京モーターショーに合わせて、北京を終点とした高速道路2000km走破を達成。ベンチャー「LeSEE」は、2016年1月の「CES 2016」で世界発表された「Faraday Future(ファラデーフューチャー)」からEV技術の提供を受ける自動運転車を公開した。

長安汽車の自動運転車 長安汽車の自動運転車(クリックで拡大)
LeSEEの自動運転車。米国EVベンチャーのファラデーフューチャーから技術提供を受ける LeSEEの自動運転車。米国EVベンチャーのファラデーフューチャーから技術提供を受ける(クリックで拡大)

 ただし、中国で開発が進められてきた自動運転技術はもともと、中国軍による軍需を想定しており、高精度マップの作成についても“軍需の壁”が立ちはだかっている。検索サイトと地図情報サービス大手の百度(バイドゥ)はBMWと人工知能の開発で連携し、自動運転での応用研究を進めているが、そうした「自動運転の本質」について、今回のような一般消費者向けモーターショーでは研究の進捗状況が公開されることはない。

百度のデジタルマップ用のデータ収集車両 百度のデジタルマップ用のデータ収集車両(クリックで拡大)

筆者プロフィール

桃田 健史(ももた けんじ)

自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。近刊は「IoTで激変するクルマの未来」


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