“重厚感のある”EIZOモニターが流麗なデザインに生まれ変わった理由PTC Creo活用事例 ―EIZO―

モニターのトップブランドとして知られるEIZOは、新たな開発プロセスの導入によって市場投入する製品の革新に成功した。高品質の映像表示の一方で“重厚感のある”イメージがあったEIZOモニターは、今や流麗なデザインに変わりつつある。その新たな開発プロセスに大きく貢献したのが、PTCの3D CAD「Creo」と、その3D設計オプション「Advanced Assembly Extension」だ。

» 2016年06月03日 10時00分 公開
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 高級モニターブランドとして知られる「EIZO」。2013年に社名をナナオからEIZOに変更した同社のモニターの多くは、コンピュータグラフィックス制作/CADや、CT/MRIなどの医用画像の表示、航空機管制といった特定用途向けの製品になる。映像を見ながら作業を行うプロフェッショナル向けの製品であり、その人々の生産性をいかに上げるか、いかに快適に仕事をしてもらうかを目的として開発が進められている。

 このためモニターに求められる品質や信頼性のレベルは極めて高い。その実現のため、開発から製造、アフターサービスまでを一貫した品質管理体制は、特定用途モニターを手掛ける企業の中でも他にない。韓国や台湾のメーカー製が多くを占める一般市場向けのモニターの中にあって、「EIZO」が高級ブランドであり続けられるゆえんだ。

EIZOモニターの開発にも。もちろんEIZOモニターが用いられている EIZOモニターの開発にも、もちろんEIZOモニターが用いられている。使用しているモニターは「FlexScan EV2455」

2Dから3Dへの移行で得たものと失ったもの

 そのEIZOの製品開発体制に大きな変化が起こったのは、ディスプレイデバイスがブラウン管(CRT)から液晶(LCD)に置き換わっていったタイミングである。

 映像表示がアナログ制御だったCRTのころ、同社の強みは職人的な映像調整技術にあった。しかし、映像表示をデジタルで制御するLCDでは、CRT時代の強みである職人的な映像調整技術はそのまま適用することはできない。EIZO 機能ユニット開発部 造形設計課 開発マネージャーの雨宮賢一氏は、「そこで、デジタル制御でも高レベルの映像品質を作り込んでいくための開発を進めていくことになり、自社設計のASICやFPGAによって映像信号を解析して、LCDパネルに合わせた高品質の映像表示を実現する技術が中核になっていった」と語る。

CRT時代のEIZOモニターLCD初期のEIZOモニター CRT時代(左)とLCD初期(右)のEIZOモニター

 そして造形設計もCRTからLCDになることで大きく変化した。CRT時代は図面を用いる2次元の設計手法を採用していたが、LCDモニターが製品の中核となる2003年ごろから3D CADを採用するようになったのだ。3D CAD採用の目的は、3Dデータ活用による試作の容易化や、熱解析や構造解析といったCAEへの展開による映像表示品質のレベルアップなどだ。「特に、3Dデータによるデザインレビューでモノを作らずに設計検証を行えることは、製品開発を効率化する上で多大な貢献があった」(雨宮氏)という。

 ただし3D CADに移行することで、CRT時代に行っていた構想設計が省かれるようにもなった。同社機能ユニット開発部 造形設計課 グループリーダーの川上浩氏は「かつては、図面を使って開発の方向性について情報共有する形で構想設計を行っていた。しかし3D CADになってから、構想設計は開発責任者の頭の中で行うものとなり、その頭の中の構想に関する情報共有は行われなくなった」と述べる。

 そして、3Dモデリングされた構成部品を最終製品に組み上げていくと、開発責任者の考える構想を反映し切れないという事態も散見されるようになった。「各構成部品が出来上がってしまうと、そこからの設計変更は難しい。最終製品と構想のずれはある程度許容されていた」(川上氏)。

ボトムアップ設計からトップダウン設計へ

 この開発プロセスを見直す機運が盛り上がったのが2009年ごろのこと。「当時、韓国/台湾メーカーが発売したLCDモニターが、薄くて軽いなどデザイン面で目をひくものになっていた。それらと比べて、当社の製品は、顧客から『分厚くて重厚感がある』という感想がほとんどだったことも見直しのきっかけになっている」(雨宮氏)という。

“重厚感のある”ころのグラフィックス制作用モニター新しい開発プロセスを適用して開発したグラフィックス制作用モニター “重厚感のある”ころのグラフィックス制作用モニター(左)と新しい開発プロセスを適用して開発したグラフィックス制作用モニター(右)の背面。厚さが大幅に薄くなり、放熱構造が目立たなくなっている

 開発プロセスを見直す際にEIZOが検討したのが、PTCが提唱する「トップダウン設計」だ。雨宮氏は「当社はそれまでボトムアップ設計だったわけで、トップダウン設計は真逆の方向性になる。そこで組織体制や職務分担の変更を行い、トップダウン設計を効率よく進められるツールの導入を進めた」と説明する。

※トップダウン設計とボトムアップ設計:トップダウン設計は、製品全体のレイアウトを先に決めて各部品を順次設計していく設計手法。一方、ボトムアップ設計は、各部品を別々に設計してから組み付けて完成品を作っていく設計手法である。

 新しい開発プロセスの最大の特徴は、CRT時代に行っていた構想設計の再導入である。もちろん、単に構想設計を導入するだけでなく、構想設計に後工程で行う作業をフロントローディングすることで、後工程を大幅に短縮することを狙いとしている。雨宮氏は「構想設計以降のプロセスは従来比で半減が目標。構想設計が新たに加わるものの、後工程半減の効果によって、開発プロセス全体としては従来比で25%圧縮したいと考えている」と意気込む。

構想設計の中で「手戻りをどんどんやろう」

 EIZOの構想設計におけるフロントローディングを実現しているのが、日立ソリューションズより調達したPTCの3D CAD「Creo」と、その3D設計オプション「Advanced Assembly Extension」だ。トップダウン設計をサポートするスケルトンモデル機能により、アセンブリのフレームワークを計画できるので、構造全体を捉えながら個々の構成部品を設計できることなどを特徴としている。EIZO 機能ユニット開発部 造形設計課 シニアエンジニアの小島研太郎氏は「スケルトンモデル機能では、簡単にモデルを作ったり、そのモデルにCAEを適用したりできる。この機能のおかげで、構想設計の中であれば『手戻りをどんどんやろう』というくらいの意気込みでいろんなことを試せるようになり、意匠性やコスト面の性能が向上できた」と話す。

 小島氏はEIZOの構想設計をさらに進化させるべく、テキストベースの設計書の導入を進めている。「設計書の中に開発する製品の構想や品質目標などを明示しておき、開発者全員で情報共有できるようにしているところだ」(同氏)。

 トップダウン設計に基づく新しい開発プロセスの本格運用が始まったのは2014年から。開発した製品の市場投入も2014年末から順次進められている。2015年9月に発売した世界初のフルフラット・フレームレスLCDモニター「FlexScan EV2750」も新しい開発プロセスによる製品だ。かつて重厚感があると言われたEIZOディスプレイだが、今や流麗と言っても過言ではないだろう。

新開発プロセスを適用した「FlexScan EV2750」と、同プロセスの導入に携わったEIZO 機能ユニット開発部 造形設計課のメンバー 新開発プロセスを適用した「FlexScan EV2750」と、同プロセスの導入に携わったEIZO 機能ユニット開発部 造形設計課のメンバー。右から、開発マネージャーの雨宮賢一氏、グループリーダーの川上浩氏、シニアエンジニアの小島研太郎氏

 雨宮氏は「当社の社長は『パラダイムを変える』ことを経営方針に掲げているが、新しい開発プロセスによって、まさに『パラダイムを変える』製品を市場投入できたと実感している。販売面でも好調であり、ユーザーから定評のある映像表示だけでなくデザイン面で高い評価も得られるようになった」と手応えを感じている。

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月30日