近くて遠い、自動運転車実現までの道のりFuture Connected Cars USAレポート(4/4 ページ)

» 2016年06月03日 10時00分 公開
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テスラの自動運転機能を使った実験

 実際にテスラの自動運転機能を用いて行った実験では、人間が自動運転中に他のことに気を取られ、運転モード切り替えのアラートに反応しなかった。すると自動運転車は危険回避のためハザードを出して停止してしまったそうだ。仮にこの状況に後続車が対応しきれなかったらどうなるだろうか。また止まりかけている自動車に対するアクションは、自動運転車を設計したエンジニアと一般人では異なるであろうことは容易に想像がつく。

 さらに、自動運転中の人間の行動をモニタリングすると、突如両手をステアリングから話して眼鏡を拭き始めた。眼鏡ならまだ幾分対応可能かもしれないが、例えばコンタクトレンズがだったらどうなるか。

 こういった予測不能な人間の行動にいかに対応していくかが自動運転実現に向けて、非常に重大な課題の1つであることを同氏は指摘し、人間がクルマの中でどのような行動をとるか、あらゆるパターンを把握した上で設計する必要がある一方で、ドライバーを教育しつつも誰もが自動運転の状況を把握できるHMI(Human Machine Interface)の開発の必要性についても訴えていた。

予測不能な人間の行動にいかに対応していくかが自動運転実現に向けての重要課題 予測不能な人間の行動にいかに対応していくかが自動運転実現に向けての重要課題(クリックで拡大) 出典:MIT Agelabs

 2016年1月に米国で開催された国際見本市「CES 2016」で、トヨタ自動車が人工知能研究に関する新会社の設立を発表した際に、自動運転実現に向けた大きなチャレンジとして、前を走行するクルマの荷台から荷物が落ちたときに自動運転車が、どう反応するのが本当に正しいのかについて研究していく意向を表明していた。今回の車内における人間の行動とも通じる。自動運転の実現がまだまだ課題が山積という印象を受ける。

 本カンファレンス終了約1週間後の5月20日、日本政府が2020年までに自動運転タクシーなどの実用化を認める方針を示した。果たして本当に実用化できるのだろうか。今後の技術革新を見守りたい。

筆者プロフィール

吉岡 佐和子(よしおか さわこ)

日本電信電話株式会社に入社。法人向け営業に携わった後、米国やイスラエルを中心とした海外の最先端技術/サービスをローカライズして日本で販売展開する業務に従事。2008年の洞爺湖サミットでは大使館担当として参加各国の通信環境構築に携わり、2009年より株式会社情報通信総合研究所に勤務。海外の最新サービスの動向を中心とした調査研究に携わる。海外企業へのヒアリング調査経験多数。



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