自分が良いと思っても、その人にとっても良いとは限らず――自社に適した3D CADとは3D設計推進者の眼(11)(3/4 ページ)

» 2016年07月01日 11時00分 公開

 実はこのAさんとBさん、いずれのモデルも私自身だったりします。

 私はヒストリーCADの「SOLIDWORKS」をとても気に入って使ってきています。履歴を見ながら設計変更を行うことにも慣れました。

 新たな職場環境の中で、ノンヒストリー3D CADを立ち上げるというミッションに就いた私が、「ノンヒストリーCADって使いにくい」「私が導入に関わっていたのなら間違いなくSOLIDWORKSを採用している」と思っていたことは事実です。

 その私が新たにノンヒストリーCADであるiCAD SXを知り、PDMシステム「PREMIA Concurrent Manager(CDM)」の導入によりiCAD SXの理解を深めていく中で、iCAD SXの軽量化やそれに伴うパーツ構成の利便性についてその良さも分かりました。

 私は、この2種の“いいとこ取り”をしながら運用していこうと考えています。

 さて、先ほどの会話の問題点は、*の付いていた太字の箇所です。以降で確認していきます。

*1 「●●は使ったことがないので」

 単純ですが、そもそも、使ったことのないCADの特徴は、うまく理解できていないはず。つまり、否定も肯定もできないはずです。全ての3D CADに対して評価することは難しいですが、その特徴について、実際に使用した上で理解することは必要ではないでしょうか。自分が得意な3D CADがその人に本当に適しているのか、これもまた、誰にも分からないことです。前にもお話ししましたが、要は、「ユーザー自身がきちんとベンチマークをしたのか」ということにもなりますね。

*2 「だから“軽い”といわれているんじゃない?」

 例えば、iCAD SXの場合は、機械・装置設計を対象にその使用用途をターゲットにしています。機械・装置設計では、複雑な形状の部品というよりは、機械加工をする上で、加工しやすい部品によって構成されるので、自由曲面を使用することはほぼありません。

 そこで、自由曲面ではなく解析曲面を用いてモデル表現を行うことで、データ量を小さくしていることと、この解析曲面に特化したCGS(構成表現)表現を行うことによって軽量なモデル形状であり、アセンブリ構成ができるという構造上の特徴と、モデルに履歴を持たないことによってモデル情報の軽量化が実現しているというのが、私の解釈です。

*3 「私の会社では生産ラインを全表示させたい時があるので、大規模アセンブリの表示をすることがあるんです」

 製造ラインを全表示することが必要不可欠とされてしまうことは「どうだろうか?」と私は考えます。ラインを構成する個々の装置を設計する上で、全てのラインを表示しながら設計することは、私の現在の経験では多くはありません。

 カンファレンスで、工場全体の装置を表示して、これを設計変更した際の挙動をデモするプレゼンテーションを見ることがあります。これが出来ることは「すごい」と思いますし、印象には残りますが、少なくとも、われわれの実作業ではここまでしません。

 装置間の取り合いについては、例えばSOLIDWORKSだと、仮想平面を用いて表現したり、関連するワークを「エンベロープ」(Envelopes)として表現したりしながら検討し、装置単体の設計を進めることが可能です。

 組立工程などにおいては、例えば3Dデータ軽量化技術のXVLなどを用いたビュワーを用いることで、3Dデータの軽量化が可能です。このビュワーデータも製品によっては、編集や制御連携への拡張性も持っています(実機レス検証ソフト「Vmech」など)。

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