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» 2016年07月06日 09時00分 公開

SYSTEM DESIGN JOURNAL:ニューラル・ネットワークと力の指輪 (5/5)

[Ron Wilson,(Editor-in-chief,Altera),MONOist]
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不確定要素

 ナレッジグラフの概念間にせよ、スタンフォード大学のメインクアッドに集う新入生間にせよ、関係の推論に伴う課題の1つは曖昧さです。人間は、ユーモア、皮肉、その他の重要なメッセージ・タイプのために何げなく曖昧な表現を生み出します。

 スタンフォード大学心理学部准教授のNoah Goodman氏は、曖昧な自然言語の解釈における常識の役割と、どうすれば言語構文解析に条件付き確率を組み込むことで、その非常に非決定論的な能力をエミュレートすることが可能になるかについて論じました。

 Goodman氏が選択した言語は、彼の経歴を考えれば恐らく驚くことのほどではありませんが、リスト解析のための最初の言語であり、ラムダ計算の大御所ともいえるLispです。

 そして、その基本言語に確率分布と条件付き分布を実装した関数を追加します。Goodman氏は、ラムダ計算の開発者に敬意を表して「Church」と名付けた言語が、確率関数の合成を利用して、多くの場合、非常に少ないコードで、自然言語文に関する豊かで有用な推論に達することが可能であることを実証しました。特にChurchは、語呂合わせや隠喩のように、決定論的解析では役に立たない傾向がある自然言語構成概念の処理に適応されているようです。

 この研究から明確な方向性はあるのでしょうか。IBMのWelser氏は「ある」と言います。しかし、それは巨大なCNNまたはいずれかの万能アルゴリズムへの移行ではありません。Welser氏は、「システムは、それぞれ固有の能力を持つ多数の独立したコンポーネントで構成されるようになる」との予測を示しました。これは、IBMのWatson コグニティブコンピューティングシステムの構造と偶然にも一致しています。

 マクロレベルでは、コグニティブシステムはその周りを取り巻く現実世界のモデルベースシミュレーションと、その世界から直接収集される膨大な非構造化データのビッグ・データ解析の両方で構成されることになるとWelser氏は述べています。

 そのシステムは2つのソースを組み合わせてモデルを精緻化し、あり得る状況の分布を作成し、目標に近づく結論を選択するはずです。このモデルなら、自律走行車やディベートロボットを同等の可能性で記述できるかもしれません。

 そうしたシステムは、ビジョン処理や同様の物体認識およびタグ付けタスクには、恐らくCNNを採用すると思われますが、その他多くのアルゴリズムやデータ構造も巧みに利用するでしょう。人工知能アルゴリズムの世界では、全ての指輪を支配する1つの指輪というものは、今のところありません。

(本稿はSYSTEM DESIGN JOURNALに掲載された「Neural Networks and the Rings of Power 」の翻訳です)

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