サプライチェーンのプロが集結するAPICSカンファレンス生産管理の世界共通言語「APICS」とは(6)(3/3 ページ)

» 2016年07月08日 09時00分 公開
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ある日系企業がAPICSを知ったきっかけ

 日本で活動する上ではAPICSという言葉を耳にすることはまず無いであろう。そのような中、APICSを知ったきっかけを紹介する。弊社は生産管理システムを中心とした日系SCMパッケージベンダーである。1990年代後半に製品をリリースして以降、主に国内顧客を中心としてビジネスを展開してきたが、2000年代中盤のグローバル化に伴い風向きが大きく変わる。海外からの問い合わせが増加する中、製品の機能説明を実施したある海外顧客から、後日このようなフィードバックを頂いた。

「用語がよく理解出来なかった」

 「英語」では無く「用語」である。英語での説明が拙いというフィードバックであれば、次回からは堪能な担当をつければ良いだけなので、すぐに立て直せるのだが、製品に使用されている用語が分からないというフィードバックであった。正直、ショックだったが、そこでお客さまからAPICSをご紹介頂いた。内容を確認すると、今まで疑いなく使用してきた英訳の幾つかがAPICSに準拠していないことがわかり、このままでは製品の持つ機能が正しく伝わらないと判断し、早急にAPICSの内容を製品に反映する、という結論に至った。

APICS関連の取り組み

 まずAPICSにはどのような内容がまとめられているかを理解するため、APICSのCPIMについて学習を開始した。周囲に学習経験者もいない中、手探りで約1年かけて資格を取得した。資格取得後は、習得した内容を踏まえ、自社製品にAPICS関連の用語や概念を反映した。併せて社内勉強会なども実施し、社員のレベルの底上げに努めている。実際に海外案件に従事する社員からも、顧客とのコミュニケーションに役立ったとの声も上がっており、少しずつではあるが、効果も見え始めている。

Expoへの挑戦

 このような取り組みを進める中、APICSカンファレンスの存在を知り、同カンファレンス内で実施されているExpoを知った。弊社製品がサプライチェーンマネジメントのプロが集まる場でどこまで伝わるのか、直接のフィードバックを得たいという思いもあり、迷わずExpo出展を決めた。これまで日系企業の出展も少ないこともあり、ほぼ手探りの中2014年に初めて出展。予想以上に良い反応を受け、2015年も出展を続けた。

「Expo」における弊社のブースの様子 「Expo」における弊社のブースの様子(クリックで拡大)

まとめ

 この記事では、以下の2点について弊社の事例を交えて紹介した。

  • APICS年次カンファレンスの概要、および会場の雰囲気
  • 海外でSCMに関する議論をするときは、APICSを理解していることが前提となる

 APICSの資格は日本では今のところほとんど認知されていないが、海外、特に米国圏でSCM関連の業務に取り組まれている方、また今後取り組もうと考えている方であれば、取得する価値は十分にあると感じている。APICSの知識体系には日本発祥の概念も多く採用されている一方、関与している日本人が少なく、資格取得とまでは行かないにしろ、この記事をきっかけに少しでも関心を持っていただければ幸いである。


筆者プロフィル

山本圭一(やまもと・けいいち)

 APICS CPIM 認定インストラクター

北海道大学工学部機械工学科を卒業後、東洋エンジニアリング 海外プラント設計部門を経て、東洋ビジネスエンジニアリング入社。生産管理分野を中心としたSCM構築プロジェクトにチームリーダー、プロジェクトマネージャーとして多数従事した後、現在は並行して自社製品の生産管理システム、販売管理システム、原価管理システムインストラクターおよびe-learningを中心とした教材開発に従事。


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