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» 2016年07月22日 11時00分 公開

新興国自動車事情(2):変化を続ける北京市内の路上風景、何と自転車が復権していた (4/4)

[古庄速人,MONOist]
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自転車が復権し、存在感が拡大中

 最後に、古典的なパーソナルモビリティについても紹介したいと思います。北京と言えば、路上を埋め尽くす大量の自転車。そんな風景の写真や映像を見たことがある人もいるかもしれません。実際に2000年代に入ったころまでは、朝の通勤ラッシュ時にそんな光景を見ることができました。

昔に比べれば自転車の数は大きく減少昔に比べれば自転車の数は大きく減少 昔に比べれば自転車の数は大きく減少。それでも自転車レーンは残され、便利な移動手段として定着していることがうかがえる(クリックで拡大)

 しかし地下鉄とバスのネットワークが充実するにしたがい、その数は大きく減少。そして同時に、自転車そのものにも大きな変化が訪れました。モーターと鉛電池を持ち、ペダルを漕がなくても走れる電動自転車の爆発的な普及です。すぐにペダルを持たないスクーター型のモデルも登場し、庶民の主な移動手段としてすっかり定着しています。

電動自転車と電動スクーターの境界は曖昧電動自転車と電動スクーターの境界は曖昧 電動自転車と電動スクーターの境界は曖昧で、エンジン式のスクーターと見分けがつかないものもある。ただし電動であれば自転車として扱われ、ナンバープレートは不要(クリックで拡大)

 ところが現在はさらなる変化が訪れ、再びシンプルな自転車を目にすることが増えてきています。その理由は「北京公共自行車」というシェアリング自転車の浸透が進んできていること。2012年に北京市が実験的に導入した当初は見向きもされていなかったサービスですが、筆者が観察した地下鉄駅前のステーションでは、借りてゆく人と返却する人が頻繁に訪れ、市民に定着していることが実感できました。

地下鉄駅前の自転車シェアリングステーション地下鉄駅前の自転車シェアリングステーション 地下鉄駅前の自転車シェアリングステーション。車両は赤いフレームに白いタイヤカバーで統一されている(クリックで拡大)

 このシェアリング自転車、北京市によれば現在は市内全域で約800カ所ものステーションが整備され、2万台を超す車両があるとのことです。北京市民は交通系ICカードだけで利用できますが、それ以外の人は400元の保証金を支払ってICカードを入手する必要があり、観光客にとってはややハードルの高いサービスなのが残念です。

 北京市内は市営地下鉄の路線網がどんどん充実し、路線の拡充に伴って郊外部から中心部に通勤する人が増え続けています。そうした人たちの駅からの移動手段としても、シェアリング自転車は活用されているようです。

北京の地下鉄路線図 北京の地下鉄路線図。総延長は年ごとに拡大を続けている。市内と国際空港を結ぶ路線もあり、観光客のアクセスは抜群に良い(クリックで拡大)

 実は今回の北京訪問では、市内の大気汚染状況が以前よりは改善されているように感じられました。歩いているときの息苦しさが、わずかながらも和らいだように思えたのです。もちろん実際に計測したわけではなく、感覚的なものにすぎません。それにたまたま天候状況がよかっただけなのかもしれません。

 しかしバスや乗用車の環境性能が上がり、地下鉄やシェアリングサービスなどの公共交通がどんどん充実してきているという事実は、環境改善にプラスとなっていることは間違いないことだと思います。次回訪問時にはもっと快適で、もっと移動しやすい都市になっているのではないか、そんな期待を抱かせる北京訪問でした。

筆者プロフィール

古庄速人(ふるしょうはやと)

工業デザイナーを目指し、専門学校の自動車デザイン学科に入学。修了後はカーデザイン専門誌の編集に携わりながら、フリーランスのライターとしても活動を開始。現在は自動車関連誌や二輪誌、Webメディアなどで記事やコラムを執筆中。技術と感性の双方の視点から、さまざまなトランスポーテーションのデザインをチェックしている。また新しい「乗り物」や新興国のモータリゼーションに強い興味を持ち、世界各国のモーターショーやモーターサイクルショーの視察を続けている。日本カーデザイン大賞の選考委員も務める。



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