イノベーションと幸福の条件には共通点がある?zenmono通信(3/4 ページ)

» 2016年07月25日 13時00分 公開
[zenmono/MONOist]

enmono システムデザイン・マネジメントはどっちかというとモノづくりとか産業寄りのイメージが僕は強かったんですけど、そこにいらっしゃる前野先生が幸福学をというのは、何がきっかけになったんでしょうか?

前野 もともと、私も産業寄りだったんですよ(笑)。カメラとかロボットとか作ってましたんで。ところが、いろんなものを作っても、自己満足だったら世の中のためにならないじゃないですか。論文書いて終わりみたいなのじゃダメで、やっぱり人々の役に立つロボットにしたいという思いは、企業にいたせいもあって、強かったんです。

前野 役に立つってなんだろう。便利になることだろうか。安全だろうか。健康だろうか。安全・健康・環境など色々と考えていくと、やっぱり平和と幸せっていうのが一番上位概念。それより上はないなぁと思いますよね。だったら安全工学もあるし、健康のための医学もあるけど、幸せ工学っていうのをやるべきだと思って、始めました。つまり、普通にモノづくりの発想から来てますよ。

enmono 一番高いところの目標のような気がしません? 人類全体の。それがあって、方法論としてのシステムデザインマネジメントとかいろんなものが回って。

前野 まさにそうですね。システムデザイン・マネジメントという大きな枠組みの場に来られたので、せっかく機械から全部に広がるなら、一番でかいことをやろう。その結果、到達した境地は、SDMは幸せデザイン・マネジメントと言われてもいいんじゃないかと――他の先生に怒られるかもしれないですけど(笑)。幸せと、あらゆる産業など、いろんなものと、いろんな学問や仕事を全部つなげる時の一番頂点の学問というか。みんなをつなぐ学問です。

enmono 人類の最も望むところが幸せにつながる。

前野 企業じゃなくて大学に移ったんだから、やっぱりせっかくなら根本のところをやる人もいた方がいいんじゃないかと思って、青臭くやっています。

enmono すごく腑に落ちました。僕らの会社も「ワクワクするモノづくりで世界を元気にする」という企業理念で――。

前野 おお、一緒じゃないですか。

enmono そのツールとしてマイクロモノづくりっていう考え方があって、「みんなが元気になる」ことを目指しています。

前野 「みんなが元気」と「モノづくり」はどうやってつなげてるんですか?

enmono やっぱり身体を動かしてモノを作るっていうこと。原始的ですけど、とても幸せになる行為だと思っていたので、それをもっとシステム的に、その方法論で実践していただくと分かっていただけるのかなと思っていて。僕らが目指す最終的なモノづくりっていうのは、地球環境を改善したりとかそういうものを最終的に作っていきたいんです。

前野 いいですねぇ。

enmono 今はこうガジェットみたいなものですけども。例えば農機具だけれどもあまりエネルギーを使わないものだとか。農家の方がご自身でカスタマイズできる農機具であったりとか、そういうようなモノづくりに非常に関心があります。

前野 はい、共感します。幸福学の1つの成果で、利他的な人は幸せ度が高いことが分かっているんですよ。人は、金とか物とか地位が欲しいと思いがちですが、金や物や地位による幸せって長続きしないんです。それに対して社会貢献したいとか社会のためになりたいと思っている人は、幸せなんです。幸せになるために社会貢献しようと考えなくてもいいと思いますが、人のためと思っていると我欲が下がって幸せ度があがるんですよね、きっと。だからこれはぜひみんなに推進してほしいと思います。

enmono 結構モノづくりが好きな方っていうのは、モノを作ること自体にワクワクするんですね。

前野 ですね。そこも幸せですね。

enmono そのワクワクしている姿を見て、自分もちょっとワクワクしたいみたいに思い始める人もいるし、その人を見て幸せになる人もいると思うので、やっぱり一人一人が元気でワクワクしていることが大事ですね。そうすると会社も元気になるし社会も元気になる。最近モノづくりの大企業が「なんか元気がないな」と感じるのは、あまりにも予算や納期に縛られていて、戦後のホンダ(本田技術研究所)さんが持っていたようなワイガヤの開発環境が少なくなっているんじゃないかと思うんです。

enmono そういうワイガヤの現代版みたいなものを作りだしたいなと。そういう意味でこの場所は本当にワイガヤを目指す場所ですよね。

前野 まさにそうです。ワイガヤに近いと思いますよ。われわれはシステム×デザイン思考と名付けてチームでイノベーションを起こそうと言っていますが、まさに日本にあったワイガヤやカイゼンをみんなでやっていこう、という動きだと思いますね。

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