特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

インダストリー4.0では、サプライチェーンを“丸ごと認証”する時代へ進む製造業×IoT キーマンインタビュー(1/3 ページ)

インダストリー4.0を含むIoTによる製造業のビジネス革新の動きが加速している。IoTによる価値を最大化するためには「つながり」を実現することが最初のステップとなるが、その動きで重要となるのが標準化と認証である。創立150周年を迎える第三者認証機関であるTUV SUD(テュフズード)の会長であるシュテプケン氏と、同社CDOのシュルシンガー氏に、IoTによる製造業の変化とそれに伴う「認証」の考え方について話を聞いた。

» 2016年08月29日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 インダストリー4.0を含むIoTによる製造業革新の動きが広がりを見せている。その中で重要性が高まってきているのが、「つながり」の実現である。工場内の各機器やシステム、工場間の各機器やシステムを結ぶには、「標準化」と「認証」が必須となる。これらの動きが広がる中で大きな役割を果たす認証機関はどう考えているのだろうか。

 IoT(Internet of Things、モノのインターネット)による製造業の変化とそれに伴う「認証」の考え方について、創立150周年を迎えるドイツの第三者認証機関TUV SUD(テュフズード)会長のアクセル・シュテプケン(Axel Stepken)氏と、CDO(Chief Digital Officer)のデュレク・シュルシンガー(Dirk Schlesinger)氏、日本法人社長のアンドレアス・シュタンゲ(Andreas Stange)氏に話を聞いた。

 テュフズードは戦略的事業領域の1つとして「デジタルトランスフォーメーション」を挙げており、IoTを含む産業のデジタル化に向けた認証への取り組みを強化している。

サプライチェーン全体をカバーする必要性

MONOist テュフズードでは産業領域におけるデジタルトランスフォーメーション分野での取り組みを強化しているという話ですが、何が大きく変化していると考えますか。

シュテプケン氏 工場のオートメーション化という意味でのデジタル化を考えると、これらは30〜40年前から行われていた。われわれもこの領域での認証を行ってきたが、これは工場の中であったり、製造ラインの一部であったり、ある意味で境界線により限定された領域におけるものだったといえる。そのため、この境界線の中が安全であることが保障できれば、安全だということができた。

 今デジタルトランスフォーメーションによる大きな変化となっているのが、限定された環境でないという点である。サプライチェーンを考えても、分散的なものとなっているのが当たり前の状況で、ある製品を作るのに1つの工場だけで完結するものはほとんどなく、サプライチェーンは世界中の多くの工場にまたがる場合が多い。こうしたときに「セキュリティ」と「セーフティ(安全)」を考えた場合、全ての工場を網羅し、サプライチェーン全体を俯瞰して安全性を確保していかなければならないという変化があるといえる。

photo TUV SUDの会長であるアクセル・シュテプケン氏(中央)と、CDOのデュレク・シュルシンガー氏(右)、日本法人社長のアンドレアス・シュタンゲ氏(左)

IoTのポイントは相互運用性とセキュリティ

MONOist デジタルトランスフォーメーションの中で、IoTのどういう点が具体的な問題点になると考えますか。

シュルシンガー氏 認証機関の立場としていえば、IoTによって主に2つの点が重要になる。1つ目が相互運用性(インターオペラビリティ)で、2つ目が安全性・セキュリティである。2つ目の安全性・セキュリティの領域では、既に国際標準化の動きが出ているので、これに対する認証を行っているところだ。

 1つ目の相互運用性については、リファレンスアーキテクチャに合わせて、通信プロトコルや安全性などを認証するような取り組みを行っている。システムインテグレーションなどの品質認証なども行っている他、ITマネジメントシステムのセキュリティであるISO27001などの認証活動にも取り組んでいる。

 従来のITとIoTでは、技術などは同じでもアプローチが異なる点が注意すべき点だ。エンタープライズITでは安全性やセキュリティなどでもスタンダードがよく知られていて、それに対応する意識が強い。しかし、OT(Operation Technology:制御技術)の領域では、基本的にシステムごとに個別のものであり、さらにレガシーのシステムが数多く残っているという環境が当たり前となっている。これらをどう結び付けていくかという観点が重要だ。そういう意味では認証においてもITとOTでは異なっており、こうした差を埋めていくことが必要だといえる。

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