連載
» 2016年08月31日 13時00分 公開

3D設計推進者の眼(13):3D設計推進者が考える、3D CADと学生の技術教育 (2/3)

[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]

学校で3D CADを教える意味とは

 「地方の小さな企業の場合は、2D CADがメインで3D CADの導入はされているものの運用されていない場合もあるのに、3D CADを使えるようにしなければいけないのか?」という質問もありました。「なるほど」と思います。限られた時間の中で教育を行う学校にとって、「学んだことが職場で生かせない」ということは魅力に欠け、それを学生さんが知れば3D CADへの興味も薄まってしまうかもしれません。

 「就職先が学校とは違う種類の3D CADを使っていても、教えることに意味があるのか?」という質問もありました。このようなことは現場でよくあることです。もちろん、3D CADを学ぶ時間も限られているのに数種類の3D CADを使わせることなんて無理ですね。

 ただ、3D CADの操作方法は各メーカーで大きな相違はないと私は思っています。そもそも3D CADの操作自体はそれほど難しいものではなく、社会人になった後でも学ぶことは十分可能なことでもあります。若い人であればマスターするのも大変ではないでしょう。

 CADという設計者自身に必須な「道具」を使いこなせることは、設計者のスキルの1つですが、学校では「操作を習得する」というよりは、あくまで創造的な勉強の1つとして学んできてほしいと私は考えています。

 併せて、教育への要望についてもお伝えしました。

  • 3D CADの可能性についても指導してほしい
  • 将来設計者になるかもしれない創造性豊かな学生を輩出してほしい
  • 3D CADのない企業に勤めたとしても、もしかしたらその学生が推進者の1人になるかもしれない
  • JIS製図など、設計者教育の基本を理解した学生を育ててほしい

 私が中学生の頃は、T定規と製図台、ケント紙を使って製図を行うような「技術」という授業がありました。実際に製図したもので、板金製のチリトリや、木製の本棚を作った記憶があります。また精密なF1(フォーミュラ・ワン世界選手権レース)カーのプラモデルを組み立てたり、ラジコンを組み立てて遊んだりすることもよくしていました。しかし現在、街のおもちゃ屋さんが減っていき、こういったものが買える機会も昔より少なくなってしまった結果、子どもがモノづくりをする機会が減ってしまったと思っています。

 そのような時代の中で、1人でも多くの学生が、モノづくりや設計に対して興味を持ってくれることを期待してやみません。そして「設計って面白そう! やってみたい」「エンジニアになりたい!」と思ってくれるとよいですよね。

 3D CADの存在はそのような気持ちを喚起するには十分だと私は思いますし、3Dプリンタの普及や、VR(バーチャルリアリティ)技術などによって、その可能性は広がり続けているのではないでしょうか? 学生の皆さんにはぜひ、自分の手で何かを作り評価をするようなことをしてほしいです。

パスタの橋を設計するコンテスト

 よく大学の研究室などで行っている「パスタブリッジコンテスト」を皆さんご存じですか? その名前の通り、食品のパスタ(ゆでる前の状態)を使って橋を作り、作品の設計や強度を競うコンテストです。ここでは太さΦ1.8mmのパスタを使用します。ただ単純にパスタブリッジを製作するのではなく、3D CADを用いて設計します。設計後はデザインレビュー/プレゼンテーションを行います。このコンテストは構造解析を学ぶ上でも、とても良い体験になると思います。

 設計検証として、まずCAEを用いて構造解析を行い、設計の妥当性検証を行います。さらにパスタをホットボンドで固定していき、設計した橋を製作するという手順となります。時間的な制約のある中、パスタをホットボンドを使用して接続していくという作業は案外難しいものです。

 設計がいくら得意でも手先が器用でなければ、うまく組み立てられません。何しろ相手はパスタですから……。逆に設計は得意ではないけど、製作が得意な人もいます。このパスタブリッジを1つのプロジェクトに例えるなら、その進行を管理するのが得意な人も出てきます。そんな形で、おのずとチームが構成されていきます。

 一人ではなくチームでチャレンジするため、メンバー同士で説明しあうことが必要になります。メールやSNSなどのバーチャルなコミュニケーションではなく、自分の言葉でのリアルなコミュニケーションが必要です。

 一人だけで体験するバーチャルな世界だけではなく、チームで、それぞれが自分の手を使ってものを作るリアルな世界の作業というのは、創造性を豊かにする1つの手段ではないかなと私は思います。もしかしたら、企業の皆さんも、このような体験をすることが必須な状況に置かれていないでしょうか。

 ここで紹介したパスタブリッジコンテストと関連して、私が教育関係の皆さんに望むことや、将来学生さんたちを受け入れていく企業の1人として望むことを、「未来志向」「教育」というキーワードでまとめてみました(図)。

開発/設計/製造プロセスの継続的革新

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