「100年防食」を誇る町工場はリーマンショックにも動じないイノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(9)(2/4 ページ)

» 2016年09月02日 10時00分 公開
[松永弥生MONOist]

コストが掛かっても求められる理由

 ブラスト加工も溶射も、技術的には100年前に考案されていた。同社の看板にも1957年(昭和32年)に撮影した写真に「メタリコン」(ドイツ語で溶射の意)と大書きされている。

 とはいえ、ブラスト加工や溶射は一般的な塗装に比べるとコストが掛かる。また国内での研究成果もなかったために、一般に利用されることが少なかったそうだ。

 しかし、近年になって、以前はそのまま塗装していた製品にもブラスト加工を施すことが増えてきた。

左の白くなっている部分がブラスト加工済み 左の白くなっている部分がブラスト加工済みの箇所。ブラスト加工を施すことで、錆や油分などの汚れを完全に除去できる。素地の表面積が増えることで塗膜の長寿命化も期待できる

 ライフサイクルコストの見直しや安全性の担保が重要視されるようになったためだ。塗り替えが難しい鉄塔やタンク、煙突、橋梁などに、ブラスト加工と溶射を施すことで、長期間にわたってメンテナンスが軽減され、ライフサイクルコストが大幅に低減されることが再評価されるようになったのだ。

 新規に製造するものだけでなく、既存の鉄鋼製品のメンテナンスにもブラスト加工は有効だ。ブラスト加工で古い塗料を完全にはがせば素地の状態を確認できる。安全性を確認後に、溶射でコーティングしておけば寿命が飛躍的に伸びる。溶射皮膜が劣化してきたときに再溶射をおこなえば、半永久的に母材を腐食から守ることも可能だ。

 1960年代を中心とする高度経済成長期に建設された高速道路の耐用年数が、近年問題となっている。高速道路の橋梁は、電車の線路や一般道の上を通過したり、ジャンクションがあったりと複雑な造りになっている。その上、昔の塗料は、鉛やPCB(ポリ塩化ビニル)が入っているため、塗り直すのが難しい。こうした橋梁や大型構造物に対して、同社はブラスト加工、溶射、塗装の出張施工で対応している。

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