医療分野のブロックチェーン利用に向け行政当局も動き出した米国海外医療技術トレンド(18)(1/2 ページ)

金融分野のフィンテックを中心に注目を集めるブロックチェーン技術だが、医療分野での応用も期待されている。米国における取り組みは、研究/教育機関やスタートアップ企業から、行政当局のレベルへと広がりつつある。

» 2016年09月29日 11時00分 公開
[笹原英司MONOist]

 本連載第6回では、医療分野におけるブロックチェーン利用について取り上げた。米国における取り組みは、研究/教育機関や「HealthTech」スタートアップ企業から、行政当局のレベルへと広がりつつある。

オープンイノベーションによる医療分野のブロックチェーン推進策

 2016年7月8日、米国保健福祉省(HHS)の国家医療IT調整室(ONC)は、「医療ITおよび医療関連研究におけるブロックチェーンとその新たな役割」と題した公開アイデアコンテストの開催要項を公開した(関連情報、PDFファイル)。

 ONCは、「米国競争力法の延長を認める再授権法(America COMPETES Reauthorization Act of 2010)」に基づき、2011年6月に「イノベーション投資(i2)イニシアティブ」を創設した(関連情報)他、2016年3月には、消費者/医療機関向けの使いやすい医療技術アプリケーションの開発コンテストを開始する(関連情報)など、オープンイノベーションによる新技術の開発促進に積極的だ。

 今回ONCは、図1のようなWebサイトを通じて、医療分野におけるブロックチェーン技術と利用可能性をテーマとするホワイトペーパーを公募/選定し、プライバシー/セキュリティ基準への対応、導入と潜在的パフォーマンスの問題、費用の意味合い、リスク分析/低減策など、ブロックチェーンを利用したソリューションが現実世界に及ぼす効果や可能性を議論することを目的として、オープンイノベーションコンテストを実施した。

図1 図1 医療分野のブロックチェーン利用をテーマとするオープンイノベーションWebサイト(クリックでWebサイトを開く)

 ONCは、「ブロックチェーン」について、改ざん防止のために秘密鍵を利用してタイムスタンプや署名が可能なデータ構造と定義し、パブリック、プライベート、コンソーシアムの3種類に分類している。ブロックチェーンの利用が想定される例としては、以下のようなものを挙げている。

  • デジタル署名情報
  • ポリシーおよび契約(スマートコントラクト)の電算処理可能な執行
  • IoT(モノのインターネット)デバイスの管理
  • 分散型暗号化ストレージ
  • 分散型の信頼
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