ルネサスから5万円の自動運転開発用SoCキット、ディープラーニングでの画像認識にも対応車載ソフトウェア(2/2 ページ)

» 2016年10月21日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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開発キットだけでディープラーニングができる

 開発キットは開発の目的に合わせて2種類を用意した。自動運転に必要な判断機能の開発や、ハイエンド車載コンピューティングに向けては、同社の車載用SoCの第3世代品「R-Car H3」を搭載。HMI開発や汎用車載コンピューティングには、R-Car H3の廉価版「R-Car M3」を採用している。H3とM3でソフトウェアの互換性は維持しており、16nm FinFET+プロセスを採用している点や、ARMの64ビットアーキテクチャCPUコア「ARM Cortex-A57/A53」、4K映像の処理などもR-Carの第3世代として両者で共通だ。

H3M3 R-Car H3(左)とM3(右)の比較。R-Carの第3世代として共通した部分も多い(クリックして拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 同製品では、開発するソフトウェアとディープラーニングによる画像認識を組み合わせることができる。同製品を使った画像認識のデモンストレーションでは、歩行者の検出を1枚の画像当たり1.2ミリ秒で、道路標示の認識を画像1枚当たり5ミリ秒で並行して行いながら、誤認識率を1%で維持していた。こうした処理を行いながら、使用電力はARM Cortex-A57を4個使った場合と比較して22分の1に抑える。

 画像処理にルネサス エレクトロニクス独自の画像認識エンジンを使用することで、処理量と電力効率を改善している。CPUの使用率を1%にとどめているため、開発キット1台でディープラーニングの画像処理と、画像認識技術を使ったアプリケーションをどちらも動かすことができるという。

歩行者と道路標示を並行して処理している様子。下段の赤枠の画像は誤認識したもの。誤認率は1% 歩行者と道路標示を並行して処理している様子。下段の赤枠の画像は誤認識したもの。誤認率は1%(クリックして拡大)

ソフトウェアはクルマにそのまま搭載できる

開発キットで作ったソフトウェアはそのままクルマに搭載できる 開発キットで作ったソフトウェアはそのままクルマに搭載できる(クリックして拡大)

 開発キットを使用して作ったソフトウェアは、HADソリューションキットを使うとそのまま実車に搭載して評価試験を行うことができる。

 HADソリューションキットは、R-Car H3を搭載した開発キット2セットと、シャシー制御用マイコン「RH850/P1H-C」で構成している。R-Car H3は自動車向け機能安全規格ISO 26262の安全要求レベルであるASIL Bに、RH850/P1H-CはASIL Dに対応しているため、安全性や品質を確保できる。

 センサーの接続や、走行データの収集や解析も前提としている。センサーは、カメラ16個の他、ミリ波レーダーや超音波センサーなどを接続できる。車両の情報はイーサネット、CAN FD、FlexRayから得られる。データロギング機能や、外部モニターへのHDMI出力もサポートしている。これらを全て堅牢なケースに収めている。

HADソリューションキットの構成 HADソリューションキットの構成(クリックして拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 ルネサス エレクトロニクスは、開発キットやHADソリューションキットで、自動運転向けのソフトウェア開発に取り組むエンジニアを集めたオープンなコミュニティー「プロフェッショナル・コミュニティー」を作る。従来のエコシステム「R-Carコンソーシアム」とは別の位置付けとなる。ソフトウェア開発の新たなサプライチェーンとして、成果物を共有し、自動車メーカー/ティア1サプライヤに向けた提案を後押ししていく計画だ。

ソフトウェア開発の新しい在り方を目指す。開発キットで新しいアイデアを迅速に実車で動く形に仕上げ、実用化時期を早める ソフトウェア開発の新しい在り方を目指す。開発キットで新しいアイデアを迅速に実車で動く形に仕上げ、実用化時期を早める(クリックして拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス
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