イノベーションには「経営と現場の視点の融合」と「やりきる覚悟」が必要CEATEC JAPAN 2016講演レポート

CEATEC JAPAN 2016では、エンジニア人材サービスのVSNによるセミナー「なぜイノベーションにつまずくのか 〜経営と現場視点の融合で生み出す最強の企業改革〜」が開催された。企業改革を成し遂げるために必要なポイントが成功事例を交えて具体的に紹介され、立ち見が出るほどの聴衆が集まった。

» 2016年11月01日 10時00分 公開
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 VSNは正社員型のエンジニア派遣事業を営む。全国に3000名以上のエンジニアを抱え、2012年にはアデコグループの一員となっている。2016年10月6日にCEATEC JAPAN 2016で行われた講演では、どうすればイノベーションを起こせるのか、また同社はどのようなサービスでそれを支援できるのかが紹介された。

photo CEATEC JAPAN 2016で行われたVSNの講演。立ち見が出るほどの聴衆が集まった

IoTを導入しただけではイノベーションは起こせない

photo VSN 代表取締役社長 川崎健一郎氏

 VSNの代表取締役社長 川崎健一郎氏は、講演の冒頭、アクセンチュアが2015年5月に発表した、インダストリアル・インターネット・オブ・シングス(IIoT)に関する資料を引用し、IoTに対する経営層の期待と現実を紹介した。それによると、経営者・約1400名のうち「IoTによって新たな収益を創出できる」が84%である一方、73%が「具体的な取り組みに着手できていない」と回答しているという。つまり、創出する力はあるが、事業に有効な形で推進できている企業はまだまだ少ないというのが現状なのだ。

 また同じ資料では、IIoTの普及に向けてフォーカスする必要がある領域として「産業モデルの見直し」、「データの有効利用」、「未来の職場環境に向けた準備」が挙げられている。「3つの領域に共通しているのは『人』が介していること。つまり、どれだけIoTが普及しても、イノベーションが成功するかどうかは『人』に大きく依存していることを示している。この講演にご参加の皆さんは、IoTという技術のみを導入しただけでは、イノベーションは実現できないと感じているのではないか」(川崎氏)。

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経営層と現場の視点は、高さも角度も距離も異なる

 多くの企業が業務上の問題があることを認識しているにもかかわらず、改革に取り組めない、あるいは取り組んでも問題が解決されないのはなぜか。川崎氏は「問題を正しく捉えられていない。問題を解決まで導けていない。」と、2つの原因を指摘する。現場は、数字や目標への対応で精いっぱい。改革に取り組んでも、本質的な問題を捉えて経営にインパクトを与えるまでには至らず、現場の改善活動にとどまってしまう。管理側は問題の本質を見つけられたとしても、日々のマネジメントに忙殺され、さらに一部では変化を嫌う風潮もあり、改革を推進できない。

 そこで外部のコンサルタントの力を借りることで活路を見出そうとする。しかし、現場の抵抗や温度差、システムやルールの形骸化、ダブルスタンダード化などにより、組織に浸透し、効果的に活用されるところまで行き着かない。

 なぜこうなってしまうのか。「よく『経営陣は現場を分かっていない』という声を聞くが、経営と現場の視点が合っていないことが原因。経営層と現場は、それぞれの視点で日々の業務や事業上の課題を捉えている。そもそも視点が異なり、そこから得られる情報や見出される解決策が違っては、本質的課題解決に向けたディスカッションも、活動もできず、イノベーションなど生まれない」と川崎氏は言う。

経営と現場の視点を融合させるには

 つまり、イノベーションを成功させるには、経営と現場の視点を融合させ、現場も巻き込みながら経営に大きなインパクトを与えるような活動が必要ということだ。そのためには、経営側は現場に入り、一方現場には経営視点を獲得させればよいのだが、時間もコストもかかってしまう。

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 そこでもう一つの方法として同社が提案するのは、現場スキルと経営視点を併せ持つ外部リソースを活用すること。この「外部リソース」のポイントは、いわゆるコンサルタントではなく、現場のスキルを持ち、現場と一緒にすぐに改革に取り組める存在であることだ。

 例えば、売り上げが停滞していた企業の場合。各部門は目の前の仕事に必死で、組織間には認識のズレがあるものの自覚はなく、経営層は、数字は理解していても現場の実情は把握できていないという状況であった。そこに外部パートナーが入り、各現場のメンバー、部門長、経営層にヒアリングを行い、その企業で働く社員自身も気づいていない実情を洗い出した。現場で言われていること、他部門から求められていることなど、複数の視点を踏まえた客観的な報告は真の問題として強く突き刺さった。そのうえで、現場が受け入れやすく継続しやすい改善施策を提案。ただ提案するだけでなく、それを一緒に実行し進捗管理、成果を報告することで億単位の改善を成し遂げている。大きな投資や新たな技術を投入することなく、部門間の壁、認識のズレという問題を取り除くだけで、これだけ大きな成果をあげることができるのだ。

 この取り組みを推し進めた外部パートナーとは、VSNの派遣エンジニアである。同社では、現場スキルと経営視点をもったエンジニアを派遣し、お客さまの事業課題を一緒に解決する「バリューチェーン・イノベーター」というサービスを提供している。

同社自身の改革が産んだ「バリューチェーン・イノベーター」

 実はこのサービスの誕生こそ、同社が経験したイノベーションである。“派遣エンジニア”が“コンサルティング”を行うというこのサービスは、経営と現場視点の融合により生まれたのだ。

 リーマン・ショックを機に、技術系派遣者の数が激減し、赤字に落ち込んだ同社は、事業革新プロジェクトを実施した。経営陣は参加せず、各部門から集められた現場のエースたちが、8カ月かけて「VSNは何屋になるべきか?」と話し合った結論が「バリューチェーン・イノベーター」であった。

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 現場からの提案を経営陣は全面的に受け入れて施策を実行した。現場視点を経営が採用したのだ。しかし、2年間は成果が出ず、現場にも重たい空気が漂っていた。そこで3年目に、現場のエンジニアを含めた26名に約2年間、一流コンサルタントによる教育を受けさせた。このフェーズにおいては、現場を担う派遣社員に、経営の視点を身に着けさせたのである。「派遣者の人数とその稼働時間で売り上げが決まる当社の事業において、優秀なエンジニアに社内で教育を受けさせることは売り上げにも影響を及ぼす。しかし、事業改革には必要なことだった」と川崎氏は振り返る。

 その結果、前年比約6倍の提案数を実現。さらに同社のサービスとして標準化して社内に展開し、3年間で1000名への教育を実施したところ、2014年には年間200件以上の提案を行うまでに成長した。2015年には、独自の資格制度を作り、2年間で300名の認定を目指している。

 この改革によって、同社は売り上げ、退職率、販管費など、経営に影響する数字が大きく改善された。しかし「何よりも大きな変化は『組織力の強さ』。現場と経営の融合によって改革を実現し、社員自身も広い視野・高い視座と現場で自らが動くという行動力を得て、どんな局面においても『自ら判断し、変革のため自主的に動ける組織』へと変わった」と川崎氏は言う。「現場と経営視点の融合」こそが企業を改革し、事業に大きな価値をもたらす手段であると確信。「バリューチェーン・イノベーター」として、契約先である多くの企業で改革を起こしている。

 IoTに対する期待は大きい。しかし、経営と現場が一体にならなければその価値を得ることはできない。逆に言えば、経営と現場が融合してイノベーションを起こせる企業こそが、技術革新を成長につなげることができる。

 講演の最後に川崎氏は、最強の企業改革に必要なこととして、「現場全体で経営視点を持つ」、「経営問題を現場のアクションレベルに落とし込む」、「最後まで覚悟を持ってやりきる」の3つを提示し、「特に経営者の覚悟が問われる」と締めくくった。

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提供:株式会社VSN
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2016年11月30日