ソラコムがグローバル対応SIMを米国で販売、データ蓄積サービスも追加製造業IoT

ソラコムはIoT通信プラットフォーム「SORACOM」に2つの新サービスを追加する。1つは、米国でのIoT向けMVNO回線サービス「SORACOM Air」の販売開始で、もう1つはSORACOM AirによるIoTデバイスの通信接続に加えて、クラウドへのデータの収集/蓄積も併せて行う「SORACOM Harvest」である。

» 2016年11月30日 09時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 ソラコムは2016年11月30日、同社のIoT(モノのインターネット)通信プラットフォーム「SORACOM」に2つの新サービスを追加すると発表した。1つは、米国でのIoT向けMVNO(仮想移動体通信事業者)回線サービス「SORACOM Air」の販売開始で、もう1つはSORACOM AirによるIoTデバイスの通信接続に加えて、クラウドへのデータの収集/蓄積も併せて行う「SORACOM Harvest」である。

グローバル対応SIMの方が安い?

ソラコムの玉川憲氏 ソラコムの玉川憲氏。手に持っているのは米国で販売する「SORACOM Air」のグローバル対応SIM

 同社社長の玉川憲氏は「2015年9月末のSORACOM Airの発表から1年超で、SORACOMのユーザー数は4000以上となり、パートナー企業も申請ベースで230社、認定ベースで52社に達している。2016年7月からは、『SORACOM Global PoC(Proof of Concept)キット』という形で、SORACOM Airを120以上の国/地域でも利用できる状態にあった。この実績を基に、日本国内と同じように1枚のSIMから購入できるSORACOM Airの販売体制を海外に展開すべく、まずは米国から販売を始めることとした」と語る。

 米国で販売するのは、SORACOM Global PoCキットにも用いていたグローバル対応SIMである。既に米国Amazon.comなどで購入できる。米国内での通信ネットワークは、AT&TとT-Mobileの3G/2G回線を使用する。

 料金体系は、国内向けSIMを用いたSORACOM Airとは異なっている。初期費用はSIM1枚当たり5米ドル(約550円、送料別、ボリュームディスカウントあり)。基本料金は、データ通信開始前は費用が掛からず(0米ドル)、データ通信開始後は1日当たり0.06米ドル(約7円)、データ通信料金は1MB当たり0.08米ドル(約9円)となっている(価格はいずれも税別)。グローバル対応SIMなので米国外でも利用可能だ。米国外で利用する際のデータ通信料金はエリアごとに設定されているが、欧州や中国は米国とほぼ同等になるという。日本でも利用できるが、データ通信料金は1MB当たり0.2米ドル(約22円)と割高になる。

 米国では、グローバル対応SIMのSORACOM Airや同時発表のSORACOM Harvestを含めてSORACOMの全てのサービスを利用できる。これらのサービスの価格は、国内向け価格を1米ドル=100円で換算した額とする予定だ。

グローバル対応SIMの管理画面 グローバル対応SIMは、国内向けSIMに用いていたWebユーザーコンソール画面で一括して管理できる(クリックで拡大) 出典:ソラコム

 なお国内向けSIMは、初期費用がSIM1枚当たり954円(送料別)、1日当たりの基本料金が使用開始前で5円、使用開始後で10円、利用中断中で5円。データ通信料金は1MB当たり0.2〜1円である(価格はいずれも税別)。

 米国で販売するグローバル対応SIMは、国内向けSIMと比べて、初期費用が400円ほど安価であり、基本料金もデータ通信開始前まで0米ドル、開始後も1日当たり3円ほど安い。「海外ではMVNOの契約形態が国内と異なることもあり、データ通信開始前まで費用が発生しないという料金設定を実現できた。これにより、製品にSORACOM AirのSIMをあらかじめ組み込んで販売するというビジネスがやりやすくなった」(玉川氏)という。

 ただしデータ通信料金については米国の方がかなり高い。国内向けの夜間(午前2時〜6時)料金が1MB当たり0.2円なので、これと比べれば45倍もの開きがある。

ハードウェア系ユーザーの要望に応えた「SORACOM Harvest」

 もう1つの新サービスであるSORACOM Harvestは、ハードウェアを手掛けるユーザーの強い要望に応えて開発した。玉川氏は「ハードウェア系のユーザーにとって、IoTから得たデータを収集/蓄積するサーバやクラウドを別途用意する作業は大変。『SORACOMのWebユーザーコンソールから、IoTのデータ収集/蓄積もできればいいのに』という意見もいただいていた」と説明する。

「SORACOM Harvest」のWebユーザーコンソール画面 「SORACOM Harvest」は、「SORACOM Air」のSIMカードの管理などに用いていたWebユーザーコンソールからそのまま利用できる(クリックで拡大) 出典:ソラコム

 SORACOM Harvestは、SORACOM AiのSIMを組み込んだIoTデバイスから取得したデータについて、受信時刻(タイムスタンプ)やSIMのIDなどを自動的に付与した上でクラウドに蓄積する。データ送信プロトコルはHTTP、TCP、UDPに対応している。蓄積する際のデータ形式は、テキスト/バイナリなど任意に選択できる。

 蓄積したデータはWebユーザーコンソール上で表示することも可能(JSON方式)。データの転送保存もできる。

「SORACOM Harvest」のデータ表示画面 「SORACOM Harvest」のデータ表示画面(クリックで拡大) 出典:ソラコム

 利用料金はSIM1枚につき、1日当たり5円(1カ月で約150円)。この価格には1日2000回の書き込み料金が含まれている。IoTデバイスから取得したデータを1分に1回蓄積したとしても、1日で1440回なので十分な回数といえる。2000回を超える場合は、1リクエスト当たり0.004円掛かる(価格はいずれも税別)。また、SORACOMのアカウント1つにつき、SORACOM Harvest1枚分を無料で利用できる。

 なお、SORACOM Harvestでは、1回に送信できるデータ容量は1kBに制限される。データ保存期間は40日分。「IoTデバイスの通信とデータ蓄積という用途であれば十分な仕様だろう。この仕様にすることで利用料金を抑えることもできた」(玉川氏)としている。

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