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» 2016年12月07日 11時00分 公開

3大クラウドサービスの裏通りで、ひっそりと輝く組み込み業界の星々ET2016獣道レポート(3/4 ページ)

[大原雄介,MONOist]

その他、目に付いたいろいろ

 そんな訳でソフトウェアに関してはあまり収穫は無かったのだが、ハードウェアに関しては若干面白い話があったので、いくつか御紹介。まずはギリシャのThink Silicon。同社は組み込み向けのGPUのIPを提供する会社である。こう聞いた瞬間、筆者の脳裏にはVivanteが浮かんだのだが、Think SiliconのIPはVivanteのGC400Lと比べてもさらに小さい。

 会場では「NEMA|p」Photo19)と「NEMA|t」Photo20)の動作デモが行われていた。NEMAの特長は、省フットプリント/省電力で、NEMA|pだと2Dのみであるが28nmプロセスでエリアサイズ0.07mm2でしかなく、ウェアラブル機器などに十分利用できるコアだとしている。

Photo19Photo20 (左、Photo19)今回はFPGAに実装して、そこにAmbiqMicroのApollo MCU(Cortex-M4F/24MHz)をつないで、クルマのメーターを描画するデモが実施されていた、(右、Photo20)こちらはザイリンクスのプログラマブルSoC「Zynq」の上にGPUが実装され(動作周波数70MHz)、「Cortex-A9」コア上のアプリケーションから呼び出す形で2D映像を3D的にスクロールするデモが行われていた(クリックで拡大)

 NEMA|tはもう少しサイズは大きい(0.1〜0.25mm2@28nm)が、最大で4ピクセル/サイクルのパイプラインが可能な3D GPUとなっている。これは3Dが必要なスマートグラスなどに組み込むには十分に小さい、としている。

 面白いのは独自のAPIを持つことで、もちろんOpenCLとかOpenGL、次の世代の製品はVulkanにも対応するとしているが、省フットプリントが求められる用途向けに「NEMA|GFX API」を独自で提供しており、こちらを使うこともできる。Photo20のデモは、マイコンがホストということもあってOSなしで稼働している(フットプリントが32kB以下という説明もあったが、このデモが32kB以下なのかは確認していない)が、こうした用途に使えるとしている。

 同社によれば製品にはスケーラビリティがあるので、もっとGPUパフォーマンスの必要なVR(仮想現実)システムなどにも対応可能としており、実際に同社は「NEMA|s(Small)」と「NEMA|ts(tiny-small)」という製品をロードマップには掲げている。特にNEMA|sは、GPUだけでなくコンピューティングにも使えるとしており、こちらの提供時期は未定だそうだ(NEMA|pとNEMA|tは既にIPでの提供を開始している)。GPU IPベンダー自身があまり多くないこの業界だが、それがギリシャから、というのはかなり面白い。

 このThink Siliconのお隣にはフランスのCortusが居た。こちらはCPUのIPコアで有名なメーカーで、2016年10月には、同社初のデュアル・イシュー・プロセッサIPである「APS29」を発表している。ブースの説明員によれば、もっと高性能なアプリケーションプロセッサに近いものを現在開発中だとか(APS29は基本的にはMCU向けのコアなので、制御系プロセッサ向けである)。ただし今のところ詳細を発表する予定は一切ないという話だったのはちょっと残念である。

 マイコンつながりでもう2つ。まずは台湾のHoltek Semiconductorの話を。同社は一部アナログ半導体(LEDドライバなど)も販売するが、メインはマイコン。それも独自の8bit RISCコアを搭載したマイコンが大半を占める。そんな同社の特長は、とにかく品種が多いこと。平均して毎月2〜3つの新製品が投入される。しかも「よく似た、ただし少し違う」製品ばかりである。

 例えば2016年後半だけ見ても

  • 7月27日 HT45F2002(2-Wire Communication Flash MCU)
  • 8月31日 BH66F5233(24-bit Delta Sigma A/D Flash MCU)
  • 9月12日 BS66F370(Touch Switch with LED Flash MCU)
  • 9月20日 BS87B12A-3/BS87D20A-3(Touch+OPA Flash MCUs)
  • 10月14日 HT66F3197(A/D Flash MCU with Internal High Accuracy Reference Voltage Source)
  • 10月18日 BH45F0031(Earphone Bridge MCU)
  • 11月08日 HT66F4390(Smart Card Reader Flash MCU)
  • 11月10日 HT66FB576(USB RGB LED Flash MCU)
  • 11月10日 HT66FB570(Full Speed USB Flash MCU)

の9製品が投入されている。フラッシュメモリは大体2kB程度、SRAMは1kB未満で、あとは周辺回路などの違いでひたすら品種が増えている格好だ。

 要するに汎用マイコンではなく、ASSP/マイコンという言い方が適当で、もうターゲットアプリケーションに最適化(=余分なものを全部排除)したマイコンを大量にラインアップしているわけだ。この結果として、そうした特定のアプリケーション向けマイコンとしては圧倒的に価格競争力が高いこともあり、国内でも結構採用事例が多いという話であった。

 逆に同社は、最近上位に「Cortex-M0+」を搭載した製品をラインアップし始めているが、こちらはまだ国内ではデザインインの事例がないとか。ただ今後はやはり価格競争力を武器にデザインウィンを勝ち取りたいとしていた(Photo21、22)。

Photo21Photo22 (左、Photo21)台湾パビリオンに小さくブースを設けていた。(右、Photo22)写真内左は同社のLEDドライバのデモ。同右は水位検知器のデモで、こちらに同社のマイコンが使われている(クリックで拡大)

 もう1つ、Microchipの話を。2016年1月にMicrochipはAtmelを買収するものの、その後もいろいろゴタついており、きちんと製品ロードマップが出たのは同年10月のことである。

 実は10月に米国カリフォルニア州サンノゼで開催された「ARM TechCon 2016」では、Microchip/Atmelという両社名の入ったブースを出しているなど、あまり統合が進んでいる様子が無いのがアレだった訳だが、11月8日に発表されたtinyAVRの新製品は、やっと両社が一緒になり始めていることを示す最初のものとなった。

 同日に発売された「ATtiny817/816/814/417」の4製品は、コアそのものはAtmelの8bit AVRであるが、そこにMicrochip由来のCIP(Core Independent Peripherals:コアから独立したペリフェラル)を組み合わせた製品である。tinyAVRは省電力をウリにしたコアであり、一方CIPはCPUを利用せずに直接周辺回路を駆動する(=CPUをスリープ状態にしたまま周辺回路を利用できる)、これまた省電力が特長の機能である。なので両者の組み合わせは理想的なコンビネーションとなる訳だが、Atmelの買収によってこれが実現できたわけだ。

 この新しいtinyAVRを搭載した開発ボードがMicrochipのブースでデモされていた(Photo23〜25)のは、筆者的にはなかなか感慨が深いものだった。

Photo23Photo24Photo25 (左、Photo23)超音波センサーを駆動するデモ。測定結果は超音波センサー下のLEDに表示される。ボードにAtmelとMicrochipの両方のロゴがあるのが分かる。(中央、Photo24)ちょっと見えにくいが測定結果。何でも最初の初期化以外はCPUを利用せず、CIPを利用して測定を行い、結果を表示しているのだとか。(右、Photo25)裏面。赤丸部が「tinyAVR」(確かATtiny817と伺った覚えがあるが、間違っていたらすいません)(クリックで拡大)

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