特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

伸び縮みするゴムを最適管理、ブリヂストンが日産2万本のタイヤをAIで生産へスマートファクトリー(1/2 ページ)

タイヤ大手のブリヂストンは、人工知能(AI)関連機能を搭載した生産設備を主力工場である滋賀県の彦根工場に導入。既に3台を稼働し、2020年までに彦根工場で生産するタイヤの3〜4割を同設備によって生産するとしている。

» 2017年01月10日 13時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 タイヤ大手のブリヂストンはタイヤの生産性の向上に向け、ICT(情報通信技術)や人工知能技術を搭載した新たな生産システム「EXAMATION(エクサメーション)」を開発。同社の戦略拠点である彦根工場(滋賀県彦根市)で本格稼働を開始している。

 彦根工場はブリヂストンが「ICTと最先端技術を導入し競争力強化を図る」(同社)ことを目指す戦略的生産拠点である。敷地面積は65万6000m2で、乗用車用のスチールラジアルタイヤを中心に日産5万3000本のタイヤを生産している。生産モデルとしては一般販売を行う「BLIZZAK」や「ECOPIA」の他、自動車メーカー向けの「REGNO」や「Playz」などがある。生産品の仕向地としては約4割が自動車メーカー向け、約4割が一般販売向け、約2割が輸出向けで従業員は2016年1月時点で約1500人となっている。

photo ブリヂストン彦根工場の全景。画面右上が原料倉庫でそこから画面左下に向けてタイヤ生産が進んでいく形となる(クリックで拡大)出典:ブリヂストン

 EXAMATIONは、この戦略拠点の中で開発され現在3台が稼働している。主に13〜17インチの乗用車向けタイヤを生産している。

タイヤ生産のカギを握る成形工程

 タイヤの生産工程の中でもEXAMATIONが担うのは成形工程である。タイヤの生産は主にゴムや鉄から5つの部材を作り出し、これらを成形して形作り、最後にトレッドパターンなどを入れる加硫工程を経て完成する。部材は、タイヤの表面に見え接地面であるトレッド部と、タイヤ横のサイドウォール部、タイヤ内でタイヤの骨格を形成するカーカスプライ部、タイヤのトレッド部に頑丈さを与えて形状を安定させるベルト部、タイヤをホイールに固定し空気を保持できるようにするビード部で構成されている。

photo タイヤの製造工程。成形工程が要となっている(クリックで拡大)出典:ブリヂストン

 これらの5つの部材を、組み合わせて形作るのが成形工程となる。成形工程でも以前から多くの装置は活用されてきたが、ゴムは温度や生産条件などによって伸び縮みする他、硬度なども変化し、その中で最適な位置決めを行ったり品質を保持しながら接合することが難しかった。そのため常に1人の作業員を貼り付け、2つの装置を行き来しながら、5つの部材をまず2つの部材に組み合わせ、そして最後にこれらの2つの部材を合わせるというような工程で生産していた。

 作業工程としても数多くの工程を1人でこなさなければならない他、全ての部材が成形工程に集まるために、この成形工程の作業能力が全ての工程のボトルネックになっている状況を生み出しており、成形工程の効率化が求められる環境であった。

photo 従来のタイヤ成形工程の様子。人手を中心としておりボトルネックとなるケースもあったという(クリックで拡大)出典:ブリヂストン

 こうした課題を解決するために開発されたのがEXAMATIONである。EXAMATIONは人工知能(AI)関連技術などを組み込みタイヤ成型工程を完全に自動化できる生産システムである。

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