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» 2017年01月26日 10時00分 公開

3D設計推進者の眼(17):「3D CADとIoT」がイマイチ理解できないので、ダッソーに聞いてみた (2/2)

[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]
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IoTと3D CADとは

 では、この「IoTと3D CAD」とはどうなるかといえば、「IoTを意識した製品設計をどのように行うか」ということを考えなければならないことであると私は解釈しました。

 3D CADが登場して、まずは機構や外装といったものが3D上で設計できるようになりました。構造解析、熱伝導解析、流体解析、樹脂流動解析などによる最適化検証も進んでいます。そして、ここ最近ではワイヤーハーネスや基板の設計も3D上でできるようになり、磁場解析も行われるようになりました。つまり、このような製品群の充実によってかなえられたのが、「IoTに対応する製品設計」ということになるのでしょう。

 今後の製品設計では、単に“メカニカルな部分”だけ3D設計するだけではなくて、IoTを意識した“製品を丸ごと”3D設計することが要求されてきているということにもなるでしょう。

 もちろん、「モノとモノ」あるいは「モノと人」をインターネットでつなげる必要のない製品ではここまで考える必要はないのですが、サービスというものを意識した時には、その対応の可能性があるものは多いのではと感じるのは私だけではないと思います。

 欧米系のCADベンダーが、3D CADデータを用いた製品群として拡充していく様子、トータルソリューションとして提供しようとしている状況というのは、これらの流れに沿っているのかもしれません。

IoTのための新ツール

 SOLIDWORKS WORLD JAPAN 2016では、3D CADとIoTをつないでいく仕組み、3D CADによる成果物となる製品とIoTをつないでいく仕組みの例として、XivelyとNETVIBESの紹介がありました。

 Xivelyは、デバイスデータなどを集約管理するためのクラウドプラットフォームです。Connect(つなぐ)・Manage(管理)・Engage(結び付き)を行います。製品のセンサーによって検出されたデータはXively上にリアルタイムに集められていきます。

 NETVIBESはダッソーの製品で、「ダッシュボードテクノロジー」や「ダッシュボードインテリジェンス」と呼ぶ製品です。個人用、企業用があり、カスタマイズ可能なダッシュボードです。「ポータルサイト」と理解することも可能でしょう。

 NETVIBESの利用方法としては、まず仕事を行うためのダッシュボードとして、協調設計している設計情報(3D CADデータ)、解析結果、ドキュメントや設計進捗状況の管理といったものが挙げられ、設計者にとっても利用価値が高いです。

 IoTという視点で考えてみた場合、製品に組み込まれたセンサーで取得したデータをXively上に集め、AI(Artificial Intelligence:人工知能)によって自動処理されたデータを必要とする情報の形式型としてNETVIBES上に表示するといったことが実現可能となります。

 そうした仕組みから得られる情報が、サービスという新たな価値に結び付くものになるわけです。また得られる情報には、製品開発に役立つものもあるでしょう。

 私が関わる産業医機械分野であれば、センサーを付けることによって、使用時間・状況、故障問題時の状態などを計測することが可能となります。IoTで集められたデータは、装置改善や次号機への開発のための、最適な設計パラメータとして利用できます。

 装置を使用するお客さまのメリットとしては、リアルタイムに集められる情報によって、故障の解析や故障の未然防止や、メンテナンス時期のタイミングの予測なども可能になることも挙げられます。

 例えば、海外に出荷した装置が故障してしまうと、それで生産が止まってしまい、お客さまは損害を被ります。現地にメーカーのメンテナンス会社がない場合、移動や修理対応の間でお客さまにさらに待ってもらう必要が生じます。もし、故障した部品の在庫がなかったら、さらにその製作・購入時間を要することになります。

 製造した装置そのものから有用なデータが集めることができたら、どれだけ有用なデータが集められることでしょう。これもお客さまにとってみれば、大きなサービスになるに違いないのです。

 このようなことを考えると、3D CADを用いて設計した製品というものは、「単なる製品ではなく、それ自身がプラットフォーム(platform:土台、基盤)となるようなモノを作るという考え方になっていく。そこにビジネスチャンスがあるのかな?」と想像しました。

 大規模な市場を持つ製品において、IoTを活用する仕組みを構築することは、得られるデータも多く、またそのサービスに対する期待が大きい一方、これを作るための時間やコストも大きな投資になるかもしれません。一方、比較的小さな市場や、限られたユーザーの中で用いられる製品においては、集められるデータは少ないかもしれませんが、それにより得られるサービスの品質も変わらず、その仕組みを作る時間やコストもそれほどかからないのかもしれません。


 上記イベントの基調講演を聞いたタイミングでは、3D CADとIoTという結び付きが理解できず、モヤッとしていた私でしたが、今回お伺いしてお話をしたことでそれが晴れたように思います。同じ日に、あの会場で、私と同じような思いをした人がいるかもしれませんが、この記事を読んでいただくことで、同じように思っていただけることを期待しています。

 ともあれ今後、製品設計をしていく上での要素としては、IoTというキーワードを意識する必要がありそうです。装置産業、産業機械の業界では、インダストリー4.0という仕組みも、このIoTにつながっていくのかもしれません。

 国内外の製品設計開発に関わるCADベンダーは今後、どのような製品設計開発支援を準備、提供してくれるのでしょうか。引き続きウオッチしていきたいと思っています。

Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛ける株式会社飯沼ゲージ製作所で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)の副代表リーダー・事務局も務める。



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