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» 2017年03月03日 09時00分 公開

オンリーワン技術×MONOist転職(9):高精度技術はスマホから宇宙へ――中島田鉄工所 (4/4)

[西坂真人,MONOist]
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ヘッダーは単気筒エンジンのようなもの

 同社のヘッダー製品の納品先はバラエティに富んでいるが、顧客の半分ぐらいは自動車関連になっているという。自動車の電化が進む中、電気製品向けなどでも最終的には自動車に搭載されるケースが増えているからだ。

 「自動車のパーツは、ネジ一つといえども最重要保安部品。異品混入や打痕防止への要求もケタ違いに厳しい。精度とともに不良を減らす努力が欠かせない」と熱く語る中島田社長は、実はクルマとのつながりが深い。

 小さいころから車好きだった中島田社長は、高校卒業後すぐに渡米してシカゴのイリノイ大学で工業デザインを学び、1992年に帰国して大手自動車メーカーの商品開発系子会社でカーデザイナーの夢を実現していた。「父(現在の同社会長)は当時副社長で中島田家の次男、長男だった当時の社長には4人の息子がいた。まさか自分に社長がまわってくるとは考えもしなかった」(中島田社長)。

 バブル崩壊後の不景気で同社の経営が厳しくなる中、叔父である当時の社長が病気になったの機に社長交代の話が持ち上がった。「戻ってこないか」という父からの誘いに中島田社長は応えることを決断する。1996年のことだった。

 「転職当時はクルマへの想いは残っていたが、ある時、『ヘッダーは単気筒エンジンと同じだ』と気付いてから抵抗感がなくなり、現業への興味がわいてきた。ヘッダーのラムが前後する様子はピストンのようだし、動力伝達もクランクやコンロッドを介し、さまざまなすき間調整もエンジンのタペット調整のようなもの。メンテナンス次第で何十年も動くところも同じ」(中島田社長)。

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 やりがいがあって魅力あふれるモノづくり業界で、今、技術者の人材が不足していることを中島田社長は危ぐする。

 「若者がモノづくりに興味を示さなくなっている。以前はモノづくりが花形だった。製造する側もいいものを作れば収益になった。それがいつからか『より安く』という風潮になり、だんだん利益が出なくなって魅力が失われてきた。いいものを作れば確実にマーケットは生まれ、儲かるんだというシステムや土壌を作らないといけない」(中島田社長)。

 同社では主力のヘッダー分野では今後は航空機業界に注力していく方針で、機体接合のための高精度リベットや特殊合金製エンジンボルトを製作するための特注パーツフォーマーなどを開発。また新規分野としてはボールベアリング業界を狙っているという。

 「航空機はチタン系やステンレス系など硬い素材となり、これまで常温でプレス(冷間圧造)できたのが、700〜800度でプレス(熱間圧造)しないといけない。だが、冷間で培った高精度技術は熱間でも活用できる。宇宙開発も含め、新しくて世の中に問いかけができるような製品があれば、体力がある限りチャレンジしていく。今までなかったものを作ることがわれわれの仕事。やる気がある人なら絶対面白いと思う」(中島田社長)。


取材協力:マイナビ)

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