自動運転バスの課題、バス停にぴたり横付け停車する「正着制御」に挑む自動運転技術(2/2 ページ)

» 2017年04月12日 06時00分 公開
[沖縄特派員MONOist]
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路肩10cmまで寄せる正着制御モード

 実験車両には、Velodyne製の全方位ライダー「VLP16」が1つと、日本信号製の水平監視範囲60度のライダー「アンフィニソレイユ FX10」が3つ、車両前方に取り付けられている。2種類のライダーで二重に前方180度を監視する。検知可能な距離は最大50m程度となっている。

 車両が正着制御モードに切り替わると、これらのライダーで縁石までの距離を測りつつ、あらかじめ設定してあるおおまかな目安となる軌跡に沿いながら車両をバス停までゆっくりと寄せていく仕組みだ。

 報道機関向けの試乗会では、バス停横の路肩に対してわずか10cm前後の距離で停車できることを披露していた。一般ユーザーには違和感なく乗降車できる距離であるものの、車椅子の方や高齢者でもスムーズに乗降車できるよう、路肩と車両の間を4cm程度まで縮めることを目指すという。

公共バスへの適用を想定した自動運転バスでは、バス停にぴたりと横付けして停車させる「正着制御」が重要になる。試乗会では、バス停横の路肩に対して10cm前後の距離で停車できることを披露していた 公共バスへの適用を想定した自動運転バスでは、バス停にぴたりと横付けして停車させる「正着制御」が重要になる。試乗会では、バス停横の路肩に対して10cm前後の距離で停車できることを披露していた(クリックして拡大)

 今回は、路肩に停められている車両の回避でも、カメラは使わずライダーのみを使った。駐車車両などの障害物をライダーが検出し、自動で車線を変更する。車線を変更する時、対向車が近づいてきたことをライダーが検知すると、対向車が通り過ぎるまで停止して待つ。

「公共バスの自動運転に必要な技術材料はそろってきた」

 先進モビリティの代表取締役社長を務める青木啓二氏は「公共バスの自動運転に必要な技術材料はそろってきた。今後は、確実性や安定性、コストを実用レベルに上げていく」としている。

 現在取り組んでいる技術課題は大きく分けて2つあり、1つは「ブレーキ制御の自動化」、もう1つは「障害物の認識精度の向上」だ。

 まずブレーキ制御の自動化については、先進モビリティでブレーキ制御用アクチュエーターの開発を進めており、2017年夏頃には実験車両に搭載できる見通しだという。大型トラックで実用化されている電子制御ブレーキシステム(EBS)を転用する方法も検討したが、公道実証の許可を得るハードルが非常に高いとのことだった。

 もう一方の障害物の認識精度の向上については、カメラ画像を使ったディープラーニングを障害物認識に取り入れていく。現在、これに関連して単眼カメラを使った測距技術の開発に取り組んでいるという。この他、車両前方に搭載しているミリ波レーダーについても今後ブレーキ制御と組み合わせて衝突回避に利用する。また、後方の安全確認用ライダーも新たに車両制御に加える。

 この他、緊急時の対処も非常に重要な観点だ。報道機関向けの試乗で、自動運転で直進中のバスのステアリングが突如として左に回りだし、縁石に接近するという事態が発生した。運転手がすぐにステアリングを持ち、進行方向を修正したため事なきを得た。「今回の実験コースで20回以上も繰り返し自動走行したが、このような事案は初めて」(先進ドライブの説明者)だという。

 この自動運転バスはブレーキ操作をドライバーが担当しているため、現時点ではレベル2の自動運転だ。今後、ブレーキ制御を自動化するなど自動化レベルを引き上げていき、交通量の多いエリアでも走行させるのであれば、万が一の事態への対応を徹底していくことも求められるだろう。

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