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» 2017年05月10日 10時00分 公開

鉄は苦難の旅を経て、鉄鋼へと生まれ変わる――「鉄子の旅」ママさん設計者とやさしく学ぶ「機械材料の基本と試作」(2)(2/5 ページ)

[藤崎 淳子/Material工房・テクノフレキス,MONOist]

試作でよく使われる材料

 試作に使われやすいものに絞って一覧をまとめてみました(図4)。

図4 試作でよく使う材料

鉄は、酸素でホッとする?

 製銑作業では大好きな酸素と引き離されて気の毒な鉄鉱石ですが、そうしなければ鉄を取り出せません。人の手が加えられることは鉄鉱石にとっては不愉快この上ないことですから、隙あらば酸素とくっついて精神の安定を図ろうとします。これが錆になります。錆の発生は鉄に限ったことではありませんが、とりわけ変化が分かりやすいので「鉄はすぐ錆びる」イメージが強いのです。でも、錆は本来あるべき姿に戻ろうとする鉄の本能なのだと理解してあげたいですね。ただ、鉄の本能に任せていたら人間側が困ってしまうので、加工後は速やかに塗装やめっきを施して表面を保護してあげます。

 鉄の錆には、自然現象で発生する「赤錆」と、そうではない「黒錆」の2種類があります。普通に知られる錆は「赤錆」ですね。それに対する「黒錆」は、鉄の表面にすきまなく密着した酸化皮膜で、赤錆の発生を防ぐ目的で人工的に処理されるものです。

 黒錆の皮膜を作るには、「黒染め」と呼ばれる薬剤を使う方法と、もっと簡単に効果を得るなら加熱による方法があります。分かりやすい例えとしては、新品の鉄製フライパンの焼き込みがあります。フライパンをガスの炎で満遍なくあぶると黒っぽく変色しますが、これが黒錆です。ここへ油を注いで再び加熱すると今度は油の皮膜が出来ます。油の皮膜は下地に黒錆という酸化皮膜があるおかげで定着するので、これで「焦げ付かない鉄製フライパン」の出来上がりです。まぁ、最近は焼き込み不要のコーティング品が主流だったり、IHコンロ化したりで、なかなかフライパンの焼き込みを体験する機会もなさそうですが、カセットコンロと鉄片を用意して実験してみると理解しやすいと思いますよ。

 こんなふうに人間側から鉄について書いていると、「鉄は人間をどんな思いで見ているのだろう」と考えてみたくなりました。

 そこから、こんな物語が生まれました。それではどうぞご覧ください。

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