ダイハツ「燃費はもう重視されていない」、走りやデザインの質感で手を抜けない車両デザイン

6年ぶりにフルモデルチェンジしたダイハツ工業の新型ミラ イース。ダイハツ工業独自の顧客調査から、燃費をとても重視する傾向ではなくなっていると判断し、走行性能や安全装備、デザインの質感を重視した。

» 2017年05月10日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
6年ぶりにフルモデルチェンジして2017年5月9日に発売したダイハツ工業の新型ミラ イース 6年ぶりにフルモデルチェンジして2017年5月9日に発売したダイハツ工業の新型ミラ イース(クリックして拡大)

 軽自動車はこれまで激しい燃費競争を繰り広げてきた。2011年に発売したダイハツ工業「ミラ イース」が当時ガソリン車トップとなる30.0km/l(リットル)という燃費をたたき出して以降、電動化技術も取り入れられ、各社が競うように燃費改善に取り組んだ。競合モデルを意識した開発目標の燃費値を達成するため、JC08モード燃費の測定時に国へ申請する走行抵抗値を恣意的に低くする不正も起きた。

 国土交通省がまとめた2016年の乗用車燃費ランキングを見ると、軽自動車部門はスズキ「アルト」が37.0km/l、「アルト ラパン」が35.6km/l、ダイハツ工業の「ミラ イース」が35.2km/lと続く。スズキのマイルドハイブリッドシステム「S-エネチャージ」を搭載した「ワゴンR」「ハスラー」「スペーシア」も、ミラ イースにわずかに及ばないものの、30km/l以上の良好なカタログ値を達成している。

 6年ぶりにフルモデルチェンジして2017年5月9日に発売したダイハツ工業の新型ミラ イースは、アルトやアルト ラパンを超える燃費値を達成することなく、先代モデルと同じ35.2km/lで現状維持となった。ダイハツ工業独自の顧客調査から、燃費をとても重視する傾向ではなくなっていると判断し、走行性能や安全装備を重視した。

新型ミラ イースの外観(クリックして拡大)

 具体的には、先代モデル比80kg減の軽量化を図ったことで、エンジンを「ガソリンを多めに使う、走りの質を重視した制御」(ダイハツ工業でミラ イースのエグゼクティブチーフエンジニアを務める南出洋志氏)に見直すといった走行性能を向上する余力を作った。

 安全面では、衝突回避支援システムとして、ステレオカメラを使用して対歩行者の自動ブレーキに対応した「スマートアシストIII」を採用。スマートアシストIII搭載モデルは税込み車両価格90万7200円からとなっている。

 新型ミラ イースは内装の質感にもこだわった。顧客調査の中で「装備や質感が落ちるのは嫌だ」という声が多かったためだ。かけられるコストが限られる中で、安っぽく見せない工夫を凝らしている。

新型ミラ イースのインテリア(クリックして拡大)
ミラ イース先代モデルのインテリア。コントラストが薄い(クリックして拡大) 出典:ダイハツ工業

 シートとインストゥルメントパネルは、黒とライトグレーのコントラストの強い配色とした。先代モデルのインストゥルメントパネルはベージュと濃いグレーの配色でコントラストが弱かった。シートはベージュ一色だ。「メリハリのある配色の方がすっきりとした印象を与えられる。黒一色では営業車のようなイメージが強くなり、明るい色のみでもバランスがとれない」(ダイハツ工業の説明員)。

 インストゥルメントパネルやドアの内張りのシボ(皮革のようなシワを付ける加工)も見直したという。「樹脂部品はツヤがあるといかにも安っぽく見える。ツヤを消し過ぎても安っぽくなるので適度なツヤを目指した」(ダイハツ工業の説明員)。

 インストゥルメントパネルは黒とライトグレーの2色一体成型だ。従来も2色一体成型は行ってきたが、絞りの深い成型に対応することで助手席側に小物を置くスペースを設けた。また、インストゥルメントパネル自体を「薄っぺらい感触にならないよう工夫して薄肉化」(ダイハツ工業の説明員)しており、車両の軽量化にも寄与している。

シボの質感も見直した。樹脂特有の安っぽさを解消するのが目標(クリックして拡大)

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