特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

マイクロソフト「Azure IoT」の強みはやはり「Windows 10 IoT」にありIoT観測所(33)(1/3 ページ)

マイクロソフトのIoT向けクラウドサービス「Azure IoT」は、機能面ではアマゾンの「AWS IoT」と肩を並べている。しかし、Azure IoTの強みは、やはり組み込みOSである「Windows 10 IoT」との連携にこそある。

» 2017年05月31日 11時00分 公開
[大原雄介MONOist]

 今回は久々に通信系を離れてクラウドサービスの話を。ちょうど2017年5月10〜12日(現地時間)にかけてマイクロソフト(Microsoft)の開発者向け会議である「Build 2017」が開催された。その初日に新サービスが発表された「Azure IoT」について紹介したい。

 連載第14回でアマゾン(Amazon)の「AWS IoT」をご紹介しているが、このAWS IoTの発表より半年早い2015年3月にマイクロソフトは「Azure IoT Suite」を発表した。もっとも、プレビュー版が利用できるようになったのは2015年9月、実際にサービスが提供されたのは2016年2月なので、発表はともかくとして提供開始はAWS IoTに一歩後れを取った感じではあるのだが。

 もともとAzureというサービスは「Windows Azure」という名前で提供が始まったことからも分かる通り、Windowsのエコシステム向けのクラウドサービスであった。ところが2014年に「Microsoft Azure」と名前を変えたあたりから、Windowsのエコシステム向けというくくりから外れるようになってきた。実際今では、WindowsとLinux、2つのプラットフォームオプションが提供されるようになっており、もうあまりWindowsのエコシステムという感じではなくなっている。

 そのMicrosoft AzureにIoTサービスを追加するというアナウンスは、2015年3月に米国アトランタで開催された「Microsoft Convergence 2015」で行われた(関連リンク)。ただしアナウンスメントを見ていただくと分かるが、この時点でのAzure IoT Suiteは組み込みOSの「Windows 10 IoT」とセットになったサービスであった。

 要するにエッジノードがWindows 10 IoTベースで構築されることを前提に、そのバックエンドに必要なサービスをAzure IoT Suiteとして提供するという形だ。この頃のマイクロソフトの方針は、とにかくエッジノードにWindows 10 IoTを入れることが最重要課題であり、その一環として従来のPCよりもずっと低価格/小型なデバイスにWindows 10 IoTをポーティングした。

 「Raspberry Pi 2」のサポートはまさしくこうした考え方に基づくものである。5000円しないワンボードマイコンでWindows 10 IoTが動くというのは(それがどの程度使い物になるか、という評価は別にして)、Windows 10 IoTの普及を進めるために随分思い切った決断だったとして良いと思う。ただこの時点ではそんな訳で、名前こそMicrosoft Azure IoT Suiteではあるが、実態はWindows 10 IoT向けな訳で、“Windows Azure IoT Suite”と称しても違和感が無いものだった。

図1 図1 「Azure Certified for IoT Device Catalog」のWebサイト。インテルの「NUC」や「Edison」はともかく、「STM32」とか「Arduino Yum」、「BeagleBone」などはさすがに「Windows 10 IoT Core」の動作は無理である(クリックでWebサイトへ移動)

 ところが実際に2016年2月にAzure IoT Suite(正確にはAzure IoT Hub)の正式提供が始まった時点では、Azure IoT SuiteはWindows 10 IoTだけのものでは無く、さまざまなデバイスが接続できるものになった。実際、マイクロソフトがAzure IoT Hubにつながることを検証した製品を紹介する「Azure Certified for IoT Device Catalog」で「プロトタイプ作成デバイス」を選ぶと、x86ベースのWindows 10 IoTがきちんと動作するデバイス以外に「Arduino」や「Raspberry Pi」をはじめ、さまざまなワンボードマイコンが並んでいるのが分かる(図1)。

 実はこの話、表裏で2つの見方がある。1つは、Windows 10 IoTに限ることなく広範なデバイスとの接続をサポートすることで、Azure IoT Hubを本当にIoT向けのクラウドサービスとして活用できるようにしようという意思だ(こちらが表向き)。もう1つは、Windows 10 IoTの限界である(こちらが裏向き)。

 表向きの見方に関しては説明は不要だろうが、裏向きに関してはちょっと説明したい。例えば、先ほどRaspberry Pi 2でもWindows 10 IoTが動くという話を紹介した。実際に、この連載を掲載しているMONOistでも、「Windows 10 IoT&ラズパイ2の「落とし穴」をよけるために」「「Windows 10 IoT Core」の現状とラズパイ3へのインストール」「「Windows 10 IoT Core」をMicrosoft Azureに接続する」といった記事で、実際にインストールやAzure IoT Hubへの接続を行う方法の紹介をしている。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.