IoT対応でシステム提案強化、MECHATROLINK協会が総会開催FAニュース

MECHATROLINK協会は総会を開催し、IoTやインダストリー4.0への対応を強化し、システム提案を推進していく方針を示した。

» 2017年06月05日 06時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 MECHATROLINK協会は2017年6月2日、2017年度総会を開催。インダストリー4.0やスマートファクトリーなどの動きが高まる中、システム提案を強化していくとともに、ASEANを中心としたアジア地域の加盟強化に取り組む方針を示した。

3000社を突破したMECHATROLINK協会

 MECHATROLINKは、コントローラーと各種コンポーネントを接続するオープンフィールドネットワークである。高速な通信と同期性の保証に特徴を持ち、特にモーション領域で強みを発揮する。現行のMECHATROLINK-IIIは、物理層にEthernetを採用し、高速な31.25μsから64msまで幅広い伝送周期をサポートする。最大で62ノードの接続、局間距離100mに対応。サイクリック通信とメッセージ通信の両方の通信を利用できる※)

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 MECHATROLINK協会はこのMECHATROLINKの推進団体で、アジアを中心に加盟企業を拡大。2017年5月には加盟企業3000社を突破している。同時に中国の加盟企業も1500社を突破しており、アジアを中心に高い支持を受けている。

 総会では2016年の活動の成果を紹介。MECHATROLINK通信ASICの出荷ノードが2016年度末で約558万ノードとなり、年間で101万ノードが増加するなど、ネットワーク化の流れが大きく拡大している状況を示した。また、対応製品は、2016年度に24製品増え、累計で468製品となったという。

photo MECHATROLINK協会 幹事長で安川電機 執行役員 モーションコントロール事業部長 熊谷彰氏

 MECHATROLINK協会 幹事長で安川電機 執行役員 モーションコントロール事業部長 熊谷彰氏は「インダストリー4.0やIoTなどで政府間の連携や主導権争いが活発化する中で、産業用ネットワークに対するニーズも変化しつつある。MECHATROLINKとしても単体の技術のアピールだけではなく、システム提案を強化していく。合わせて、既存メンバーだけでなく、センサーなど周辺を開拓し、メンバーや技術やノウハウをつないでいく取り組みを進めたい」と方向性について述べている。

 2017年度も「MECHATROLINKの普及・促進」「システム提案力の強化」「次世代MECHATROLINKの開発」の3つの強化ポイントは変わらず進めていく。2018年に15周年となることから、プロモーション活動の強化などをポイントに挙げ、加盟企業数は3300社を目指すという。また、ASEANや中国でのローカルメンバー拡大とともに、従来はやや弱かった欧米での普及にも取り組み2017年11月に開催される展示会「SPS 2017」に出展する計画である。

 システム提案力の強化としては、他のネットワークとの連携やセンサー系技術との連携などを推進していく方針。MECHATROLINK協会 事務局代表の三輪卓也氏は「MECHATROLINKはあくまでも装置内のモーション制御ネットワークであり、最下層のネットワークになると考えている。MECHATROLINKのマスターが、他のネットワークにおいてはスレーブになる位置付けだ。そのため、他のネットワーク規格と相互接続するようなことは想定していない。ただ上位との情報連携などについては検討しなければならないと考えている」と連携の位置付けについて考えを述べている。

IO-LinkやIoT向け低価格通信サービスの講演も

 MECHATROLINK協会総会では新たな技術の紹介の場として毎回、基調講演なども用意している。今回は、ドイツのセンサーメーカーバルーフの日本法人から代表取締役の吉田憲司氏が「IO-Link」※)をテーマに講演。さらに、IoT通信サービスベンチャーのソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏が自社のサービスを活用したIoTビジネス事例を紹介した。

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photo バルーフの日本法人から代表取締役の吉田憲司氏

 バルーフの吉田氏は「IO-Link」がドイツの「インダストリー4.0」における大きな核となる技術であることを強調した。IO-Linkはセンサーやアクチュエータとの通信のために2013年に「IEC 61131-9」で標準化されたI/O接続技術である。

 吉田氏はさらにIO-Linkの最新の技術アップデートとして、新たにIO-Linkがセーフティー規格の仕様を公開したことを紹介。「今後、安全に求められるライトカーテンやセーフティボタンなどでIO-Link対応の機器が徐々に出てくる」と吉田氏は述べている。さらに、2.4GHz帯を使って無線通信を実現するIO-Linkワイヤレスや、IODDファインダーなどの新たな技術などについても紹介した他、MECHATROLINK-III対応のIO-Linkゲートウェイの開発なども進んでいることを紹介した。

photo ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏

 一方、ソラコムの玉川氏は、クラウドがもたらす新たな価値とIoTにおける通信の重要性について説明。ソラコムは2014年末に設立したIoT通信におけるベンチャー企業だが「IoTにおいてモノとクラウドを結ぶネットワークに課題があると考えてソラコムを立ち上げた」と会社設立の動機について述べた。ソラコムはIoTに最適な低価格の通信サービスが特徴で既に6000社のユーザーを抱えている。総会では、これらの事例を動態管理、遠隔監視、決済端末、バックアップ回線、見守りシステム、客層分析などのジャンルに分けて紹介した。

 玉川氏は「IoTはクラウド、デバイス、通信、セキュリティなどテクノロジーの総合格闘技戦だと考えている。その中でソラコムは通信の共通基盤と提供する。ソラコムで足りない部分は300社以上のパートナーとともに、期待に応えられる形を作っていく」と述べていた。

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