ソーラーカー用タイヤは95mmの狭幅、転がり抵抗は「プリウス」の10分の1にモータースポーツ(1/2 ページ)

ブリヂストンは、同社が冠スポンサーを務めるソーラーカーレース「2017 Bridgestone World Solar Challenge」の概要について説明。同レースに供給する専用タイヤを披露するとともに、レースに参戦する東海大学ソーラーカーチーム総監督の木村英樹氏などがソーラーカーレースの意義を訴えた。

» 2017年06月06日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 ブリヂストンは2017年6月5日、東京都内で会見を開き、同社が冠スポンサーを務めるソーラーカーレース「2017 Bridgestone World Solar Challenge(以下、WSC2017)」の概要について説明した。会見には、ブリヂストンの他、WSC2017に参戦する東海大学ソーラーカーチームの総監督で同大学工学部電気電子工学科教授の木村英樹氏や、同チームを支援する東レ、パナソニックなども加わり、ソーラーカーレースの意義を訴えた。

「WSC2017」の会見の参加者 「WSC2017」の会見の参加者。左から、ブリヂストン ブランド戦略担当の牛窪寿夫氏、東レ 産業材料事業部長の奥村勇吾氏、ブリヂストン 執行役員・ブランド戦略担当の鈴木通弘氏、東海大学 教授の木村英樹氏、パナソニック エコソリューションズ社 ソーラーシステムBU 技術開発部長の岡本真吾氏

 ブリヂストン 執行役員・ブランド戦略担当の鈴木通弘氏は、「事業の成功に社会への貢献が必須」とする創業者の石橋正二郎氏の言葉や、2017年3月に発表したCSR「Our Way to Save」で使命に位置付けた「最高の品質で社会に貢献」という企業理念を挙げ、「燃料などを必要としない究極のエコカーであるソーラーカーの開発をテーマに、未来のクルマづくりに向けた学生エンジニア達の環境技術開発への挑戦を支えることは、当社の経営方針にも合致する」と強調する。

 WSC2017は、太陽光発電パネルの電力で走行するソーラーカーでオーストラリア大陸を縦断するレースだ。ダーウィンからアデレードまで約3000kmを走破する。また今回は、第1回から30周年を迎える記念大会でもある。前回のWSC2015は、1人乗り四輪車両で速度を競うチャレンジャークラス、2〜4人の複数人乗りの四輪車両でエネルギー効率や実用性を競うクルーザークラス、1人乗り三輪車両のアドベンチャークラスの3クラスに、22カ国から42チームが参加した。「WSC2017の参加チーム数はWSC2015を上回る見込み」(ブリヂストン 執行役員・ブランド戦略担当の鈴木通弘氏)だという。

「WSC2017」の大会概要チャレンジャークラスとクルーザークラスの違い 「WSC2017」の大会概要(左)とチャレンジャークラスとクルーザークラスの違い(右)(クリックで拡大) 出典:ブリヂストン

 以前から東海大学ソーラーカーチームが参加しているチャレンジャークラスは、WSC2017では太陽光発電パネルの面積が、WSC2015までの6m2から4m2にまで削減される。この規則変更により、ソーラーカーの速度が抑制される見込みだ。また、WSC2015ではクルーザークラスに参加していた工学院大学も、WSC2017ではチャレンジャークラスに復帰する方針だという(関連記事:世界最大のソーラーカーレースで最速タイムも準優勝に、工学院大学はなぜ敗れた)。

 WSC2017の冠スポンサーを務めるブリヂストンは、参戦チームに低燃費技術を搭載したソーラーカー用タイヤを供給する。現時点で、東海大学、工学院大学をはじめ、国内外の11チームへの供給が決まっている。

開発したソーラーカー用タイヤ(左)と「BMW i3」の「ECOPIA with ologic」(右) 開発したソーラーカー用タイヤ(左)と「BMW i3」の「ECOPIA with ologic」(右)(クリックで拡大)

 このソーラーカー用タイヤは、BMWの電気自動車「BMW i3」などにも採用されている狭幅タイヤ「ECOPIA with ologic」を基に開発された。ブリヂストン ブランド戦略担当の牛窪寿夫氏は「ソーラーカーに求められる空気抵抗と転がり抵抗の低減、昼間の路面温度が50℃以上になるWSC2017のレースコースに合わせた耐久性、横風などに影響を受けない直進安定性といった要件をクリアした」と説明する。

ソーラーカー用タイヤに求められるタイヤ性能 ソーラーカー用タイヤに求められるタイヤ性能。一般乗用車とは大きく異なる(クリックで拡大) 出典:ブリヂストン

 開発したソーラーカー用タイヤはタイヤサイズが95/80R16。タイヤ幅は95mmと極めて狭く、500kPaという高い空気圧によって、空気抵抗と転がり抵抗の低減を実現した。転がり抵抗を示すRRC(転がり抵抗係数)は3.0以下。低燃費タイヤのレーティングで最高水準のAAAが6.5以下なので、この半分以下ということになる。またタイヤの重量も2kg以下に抑えた。

 BMW i3のECOPIA with ologicが、タイヤ幅150mm、重量約10kg、空気圧は一般的なタイヤと同じ200k〜250kPaであることを考えると、極めて極端な仕様のタイヤになっていることが分かる。「車両重量を加味した転がり抵抗は『プリウス』の10分の1以下で、タイヤ1本当たりに掛かる50k〜100kgの重量が加わるイメージ。接地面積も、一般的なタイヤはハガキ1枚分といわれるが、ソーラーカー用タイヤは10cm2、名刺の半分くらいになる」(牛窪氏)という。

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