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» 2017年07月12日 13時00分 公開

コンカレントエンジニアリングは“逃げ”なのかい?3D設計推進者の眼(22)(2/2 ページ)

[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]
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「支援者」がうまく育たない

 私はこれまで、先導者の後継者となるべき人となる「支持者」がうまく育たないという問題を抱えてきました。特に中小企業の場合、潤沢な人材がいるわけでは、必ずしもありません。「支持者」を見つけ、いかに育てるかが大きな課題になります。現在の私自身も、「もし私がいなくなったら、私が推し進めている3D CAD推進も、立ち消えてしまうのではないか」と心配しています。

 過去には、PDMのプロフェッショナルとCAEの後継者の育成をしてきています。また、生産管理システムを立ち上げるというプロジェクトにおいては、同様にそのプロジェクトの後継者も育ててきています。しかしながら、企業の業績や人事異動によって、その後継者の活躍の場が閉ざされてしまうということも起こってしまうのです。

 このような、3D CAD推進活動を行っていると、社外でさまざまな人に出会います。その中には、設計現場ではなく、情報部門の人や、組立部門の人、CAEを専任で行う人、加工部門の人、生産管理部門の人、部品拡販を目指し3D CAD 関連システムを開発している人、経営者の方々、そういった方々が皆、「3D CAD推進者」だといえます。つまり広く見渡せば、多くの支持者の方々がいます。

 まずは社内の設計現場以外にも、「手を挙げる人はいないかな?」と、推進者の候補となる人を地道に探し続けていくしかないのかもしれません。

3D設計推進をTPDで進めること

 これらの状況を解決していくためには、3D推進というものが、一部設計現場に近い部署だけによるプロジェクトではなく、過去の記事でもたびたび話してきたTPD(Total Product Design)によるプロジェクトとして捉えるべきだということにつながっていきます。全部門、全社員が製品開発に参画することが、TPDです。「いかにして、3D CADの設計作業と並行しながら、各部門がやるべきことをやるか」が重要になります(関連記事:“TPD”を実践しないとどうにもならない?――「正しい設計のフロントローディング」と「全社的製品設計」)。

 そのためには、コンカレントエンジニアリングが重要になってきます。コンカレントエンジニアリングについて、以下の図で、簡単にまとめてみます。

 コンカレントエンジニアリングが成り立つには、会社全体としてのスキルが高いことが望まれます。そして先に図示した各部門での活動が成り立つことが必要です。それぞれの部門が、部分最適を目指すだけではなくて、企業利益を見据えた全体最適という同じ土俵で勝利を目指す必要があるのです。

 さらに、コンカレントエンジニアリングが、フロントローディングにつながっていきます。構想設計、詳細設計での品質検証を十分に行うことによって、製造過程での製品品質不具合をなくすことになるからです。

 そうとなれば、さまざまな部門が設計開発の頭の部分から関わると共に、設計部門も設計の妥当性検証に注力することになります。

 例えば、構想段階から、FMEAを駆使して、リスク分析とその検出方法を探ります。コストダウンを図る上では、購買部門が参画し、QCDに優れたサプライ品(購入品・加工品)の提案を行います。これを受けた技術部門では、その品質の妥当性の検証を行う必要があります。カタログスペックだけを信じていいのか、安かろう悪かろうではいけません。

 設計部門は、CAEを駆使して、FMEAで抽出されたリスクに対しての詳細設計における妥当性検証が行われます。

 製造部門は、製品品質や組み立て性の検証を3D CADデータやそのデータを利用したデジタルモックアップから行い、設計に提言することになります。

 量産準備においては、公差計算や公差解析が行われ、統計学に基づいた適正な部品の公差が割り付けられることでしょう。

 品質保証からは、過去の品質トラブルに対する既存製品の改善についても求められるでしょう。デザインレビューでは、FMEAを利用したDMFEAも行われ、新規設計要素に注力したデザインレビューも行われます。

 これらの検討結果によるデザインレビューは繰り返し行われることになります。さまざまな過程を経て、設計は出図となります。

 私の現場では、組み立てが始まると、そこでもレビューが行われます。

 それにより、改善や要望が設計に対してフィードバックされていきます。3D CADが活用されデジタルモックアップがうまく使われ始めれば、3D CADとソフトウェアとの連携が図られるようになり、ソフトウェアの3Dモデルにおける仮想検証も行われるようになります。

 私の経験に基づくなら、これまで机上のみで行われ、実機によってデバッグ検証が行われていた作業が、早い段階で実機レス検証できるようになることでしょう。

 こうした活動により、これまで製造過程でしかできなかった作業そのものが、生産工程の早い段階で作業することが可能になってきています。この結果として、優れた製品を出荷することが可能となるはずです。


 しかしながら、これらの作業に関わる人数と時間は確実に増えてしまうのです。私の経験では、ある製番に関わる工数は増え、納期短縮につながらなかったことがありました。また、品質との悩ましいトレードにもなりました。

 この話を次回で掘り下げていきます。

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Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛ける株式会社飯沼ゲージ製作所で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)の代表リーダーも務める。



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