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特集
» 2017年07月18日 06時00分 公開

ITS EU会議2017 レポート:国境が阻むITSの変革、欧州は「クロスボーダー」で主導権を握れるか (2/4)

[桃田健史,MONOist]

「CAD」を主体としたフォーメーションへ

 ではここで、欧州におけるITSの全体図を整理しておきたい。主体となるのは、2017年で設立25年目をむかえるERTICO(European Road Transport Telematics Implementation Coodination Organization)だ。日本のITSジャパンと同じように官民で連携しており、ERTICOの参加企業と組織体は合計120社を超える。

 ERTICOには現在、下記の4つアクティビティーがある。

  • CAD(Connected and Automated Driving)
  • Clean Mobility
  • Trasport & Logistics
  • Urban Mobility

 それぞれのアクティビティーの下にはさまざまなプロジェクトがあり、複数年の実施期間が設けられている。CADでは、CARTRE、AUTOPILOT、EU EIP SA4.2、CloudLSVA、inlane、VI-DAS、SAFESTRIP、UDRIVE、BIG DATA EUROPE、ETPC、TN-ITS、ADASIS、SENSORISと13のプロジェクトがあるが、何の略称なのかを覚えるだけでもひと苦労だ(※2)

 また、EV(電気自動車)などを扱うClean Mobilityではプロジェクトは4つ、Transport & Logisticsでは5つ、そしてUrban Mobilityでは7つあり、こうしたプロジェクトの数を見ただけでも近年のERTICOにとってCADが最重要課題になっていることが分かる。

 各種プロジェクトは2〜3年ほどで終了した後、新たなプロジェクトが始まり、場合によっては新旧のプログラムが連携するため、欧州の自動車メーカー関係者にとってもERTICOの実質的な推進状況を総括的に把握するのは難しいという。

 実際、2016年10月から2018年9月まで実施されるCARTREに関するセッションに参加したが、質疑応答の際にはERTICOの各種プログラムの名前が飛び交い、筆者は頭の整理ができなかった。

(※2)CARTRE:Coordination Of Automated Road Transport Deployment For Europe

EU EIP:EU European ITS Platform

CloudLSVA:Cloud Large Scale Video Analysis

inLane:GNSSとコンピュータビジョン技術による車線単位でのナビゲーション技術、自車位置の測位。

VI-DAS:Vision Inspired Driver Assistance Systems

SAFESTRIP:既存の道路インフラにC-ITSアプリケーションを組み込む取り組み。

UDRIVE:乗用車から商用車、二輪まで自然な運転の様子を研究する。

ETPC:European Truck Platooning Challenge

TN-ITS:Transport Network ITS

ADASIS:Advanced Driver Assistance Systems Interface Specifications

SENSORIS:ロケーションクラウドの規格。地図会社のHEREが設計した。

自動運転のレベルの定義はSAEに準拠

 次に知っておきたいのが、ERTRAC(European Road Transportation Reasearch Advisory Council)だ。EC(European Commission:欧州委員会)と自動車産業に関連する企業らで構成される、技術的なプラットフォームを構築するための組織体である。そのため、欧州において自動運転に関する技術的な解釈は、ERTRACが取りまとめる。

 今回のITS EU会議の開催に合わせてERTRACは、「Automated Driving Roadmap」を改訂。Automated Driving Roadmapは2015年にフランス・ボルドーで開催したITS世界会議で公表されたもので、自動運転のレベルの定義は米国自動車技術会の「SAE J3016」に準拠するとした。

 2016年9月に米国高速道路安全局(NHTSA)がそれまで仮に設定していた自動運転のレベルの定義を見直し、SAE J3016に準拠することを表明。これを受けて、自動運転のレベルの定義でNHTSA準拠を基本方針としてきた日本もSAE J3016を採用することになっている。こうした米国や日本での流れに欧州も沿うことになる。

 今回の改訂で興味深いのは「Road definitions(道路の定義)」を3つの領域に分けたことだ。そのなかで最初に記載されている「Confined Area」は物流ターミナルや港を意味し、2つ目の「Dedicated road/lane」とはバスやタクシーなどの専用レーンや駐車場を指す。そして市街地や高速道路などは「Open Road」と呼ぶ。その上で、3つの道路の領域におけるさまざまな自動運転の状況を仮定し、それらが自動運転のどのレベルに相当するかを明確に示した。

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