「プラスチック」と「樹脂」って何が違うの? それに「エンプラ」って何よ?ママさん設計者とやさしく学ぶ「機械材料の基本と試作」(4)(2/4 ページ)

» 2017年07月19日 13時00分 公開

 「弾性」は、材料が力をかけられ変形しても、力をかけることを止めれば元通りの形に戻れる状態です。力をかけた時には変形するけれど力を抜けば元に戻るモノと聞いて、誰もが思い付くのが「バネ」かも知れませんね。

弾性と塑性

 材料に力をかけて徐々にそれを強めていき、材料が「ボクはまだまだ元に戻れるぞ」と余裕を見せている間を「弾性範囲」と呼び、機械材料はこの範囲内で使うことが基本になります。力をかけ続けていくと弾性範囲の限界が近づいてきて「あ……、もうだめだ。これ以上強い力をかけられたら元に戻れない!」とギブアップします。このときの力の値を「降伏点」または「耐力」と呼びます。降伏点の値が大きいほど耐えられる力が大きいということになり、これは「強度」を決める1つの要素になります。そして、力をかけた時に生じるたわみ量で、どの程度変形しにくいかをみるのが「剛性」なのです。

 剛性は材料特性データの中の「縦弾性係数(×103 N/mm2)」で確認できます。単位が荷重ですから、縦弾性係数の値が小さいほど小さい力で変形する材料ということなのです。

 そろそろ紛らわしくなってきたので、ここまでのイメージを整理しますね。

 2種類の材料に同時に同一の力をかけたとしましょう。力が一定に達した時のたわみ量が大きくても、力を加えるのをそこで止めれば元通りに戻れる材料の場合は弾性範囲の中にとどまっていることになりますから、「剛性は低く強度が高い」といえるのです。反対に、たわみ量は小さいのに変形したまま元に戻らなくなった材料は、弾性範囲を超えて次なる段階へ行ってしまったわけで、もう一方と比較して「剛性は高く強度が低い」ということになります。

剛性と強度

 「塑性(そせい)」は材料が降伏点を迎え元通りの形に戻ることを諦めて、かかる力に耐えながら心身に刻まれたひずみ(永久ひずみ)を受け入れて、新たな形で生きていく状態です。上記の「弾性範囲を超えて次なる段階へ行ってしまった」件がこれです。そしてこの、「力による塑性」を利用した加工がプレスによる曲げや絞りというわけです。

 「破断」は、材料が塑性の範囲を超えた力に耐えられず、ついに形が分離してしまった状態です。

 ドリルでの穴あけなんて材料を破断しまくりですよね。切削加工でも材料が破断してくれないと成り立ちませんから、破断は決して悲しい出来事ではなく加工の世界では無くてはならない現象です。そして破断に至った力の値を「引っ張り強さ(N/mm2)」と呼び、強度を決めるもう1つの要素として認識しておきます。縦弾性係数も引っ張り強さも、材料の優劣を決めるものではなく目的に合った材料を選ぶための指標なので、特性データをうまく使って手頃な材料を選定できるようになりたいですね

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