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» 2017年07月19日 13時00分 公開

「プラスチック」と「樹脂」って何が違うの? それに「エンプラ」って何よ?ママさん設計者とやさしく学ぶ「機械材料の基本と試作」(4)(4/4 ページ)

[藤崎 淳子/Material工房・テクノフレキス,MONOist]
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プラスチックのあれこれ

 材料に求める「強さ」「硬さ」「粘り」の要素は、金属材料に限ったことではありません。ここからは非金属の代表であるプラスチックの世界に触れていきます。

 皆さんは、「プラスチックと樹脂の違いは何だろう?」「どうして石油から作られるのに樹脂だなんて呼ぶのだろう?」と考えたことはありませんか?

 まず、樹脂という単語を見ると樹液のようなイメージですが、ひもといていくとどうやら語源はその通りみたいで、国語辞典で引くと「木のヤニ」と出てきます。ですから、一般に知られる松ヤニやうるしのかたまりは天然樹脂ということになります。しかし天然モノは採取量が限られ高価なので、汎用的な材料になりえません。そこでその働きを模して、石油を原料に人工的に量産されたものが「合成樹脂」になります。

 「プラスチック(plastic)」の和訳を見てみると「可塑物、可塑性物質」などとなっています。

 合成樹脂には、加熱すると軟らかくなる「熱可塑性樹脂」と、加熱すると硬化する「熱硬化性樹脂」があり、現在流通するほとんどが「熱可塑性樹脂」です。「熱硬化性樹脂」も加熱の始めでは軟化して可塑性を持ちますから、合成樹脂を総称してプラスチックと呼ぶのは正しいのです。なお、熱硬化性樹脂は加熱し続けることで硬化していきますから、耐熱性の高いプラスチックになります。この熱硬化性樹脂の代表が、フェノール樹脂です。安くて強度があって加工性が良いので、生産現場の治具製作に重宝しています(「ベークライト」という商標名で知られていますが、フェノール樹脂の一般名っぽく使われています)。気をつけたいのが、熱硬化性樹脂は一度硬化したら二度と軟化しない頑固な材料なので、リサイクルができません。資源を有効に使うために、熱硬化性樹脂を使った加工では不良を作らないようにしたいものですね……。

 次に、熱可塑性樹脂を特性別に分けてみましょう。

 雑貨、文房具、家庭用品などの汎用品や、さほど強度を必要としない機械部品に用いられるのが「汎用プラスチック」です。汎用プラスチックは、プラスチック生産量のおよそ8割を占め、とにかく安価で生活用品として使用されることが多いので、日常手にするプラスチック製品は、ほぼ汎用プラスチックです。

 PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)は、俗に「ポリ」と呼ばれ、タンクやバケツや袋となって毎日大量に使われていますし、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルも汎用プラスチックの仲間です。これら汎用プラスチックの中でも、アクリルとPVC(ポリ塩化ビニール=塩ビ)は、曲げ加工や溶接による生産設備のカバーや窓の製作に使いますし、ポリスチレン(PS)の強化材料であるABSは、切削による機械部品の材料としての出番も多い材料です。

 汎用プラスチックではどうしても目的の機能を果たせない時は、もっと機能性の高い種類を選ばなくてはいけません。ここで登場するのが「エンジニアリングプラスチック=通称:エンプラ」です。

 汎用プラスチックと比較してエンプラの種類は多いので、機能の段階別に「汎用エンプラ」と「スーパーエンプラ」とに分かれます。汎用エンプラは、汎用プラスチックと比較して耐熱性、機械的強度などの性能が優れており、機械材料としての信頼性がより高いものです。デメリットとしては汎用プラスチックよりも高価なことです。そのさらに上をゆくスーパーエンプラは、さらなる耐熱性と機械的強度を持ち、汎用エンプラよりも高価なものになります。

 参考までに、汎用プラスチックが100℃前後で溶融しだすのに対して、汎用エンプラの耐熱基準は連続使用温度100℃以上、スーパーエンプラでは連続使用温度150℃以上と見られています。ですので、「たとえ試作であっても、部品に耐熱性と高温時の機械的強度を求める場合には、コストがかかってもエンプラ系のプラスチックを選ぶべきです。そうでない限りは汎用プラスチックを用いてコストを抑えましょう」ということになります。


 ここまでの説明を、プラスチックの全体像としてまとめてみました。ここに記載のない材料もいくつかあります。気になる材料がありましたら、先に紹介した白銅の特性データ表などを活用して、個別に特性を調べてみるとよいでしょう。

 次回は、3Dプリンタで用いられるプラスチック材料に注目していきます。

(次回に続く)

Profile

藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)

長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。

・筆者ブログ「ガノタなモノづくりママの日常」



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