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» 2017年08月21日 06時00分 公開

新旧「ミライース」乗り比べ、走って見えてきたダイハツの取捨選択と企業努力乗って解説(3/3 ページ)

[高根英幸,MONOist]
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先代ミライース、モデル後期の熟成ぶりも侮れない

 比較対象として借り出したレンタカーはベースグレードのため、かなりの軽量に仕上がっていることもあるのか、新型ミライースに乗り換えてもクルマが軽くなったという感触は伝わって来ない。カタログ重量ではきっちり80kgの重量差があるようだが、先代の後期型でもCVTの制御が見直されているのか、実に軽快な走りを見せるのだ。これには少々拍子抜けしてしまった。先代のモデル後期よりも実燃費は向上しているのかもしれないが、走りのCVT制御プログラムの見直し程度であれば、ディーラーでのファームアップで実施できるだろうから、このあたりは納車後でもじっくりと煮詰めて対策してほしいものだ。

 また14インチホイールを履いたSグレードでは、フロントサスペンションのロアアームなどを軽量化した影響か、ギャップの連続する舗装路を走り抜けるとフロントの足回りに前後に揺すられるような振動が起こることもあった。もっとも、通常の走りでは先代に比べて剛性不足を感じるようなシーンは見当たらなかったから、これだけの軽量化は称賛に値するだろう。

 走りの面では少々期待しすぎたのか、先代と比べて明確な手応えの違いは感じ取れなかったが、開発コンセプトを理解すれば、それも納得できる部分ではある。ボディー剛性やリアサスペンションの横剛性などは、先代とほぼ同等という感触。そもそもギンギンに攻め込むようなクルマではないから、十分な操安性を確保しているといえる。静粛性については3%の向上を感じ取れるほど試乗は均一な条件ではないし、乗り換えても気付けるような違いは感じ取れなかった。

内装や安全装備の充実ぶりに感じる企業努力

 インテリアの居心地は明らかに向上している。静粛性やボディー剛性の向上は明確には伝わってこないが、前述のインパネ回りの高級感に加え、ヘッドクリアランスが増えていることも圧迫感の解消から快適性を高めているようだ。空力性能を向上させるためにも車体の高さは減らしているが、シートの着座位置を下げることでこのヘッドクリアランスの増大を実現している。

フロントシートはハイバックシートとして、ヘッドレストの構造をシンプルにすることで軽量化した(左)。リアシートはシンプルな仕立て。しかしこちらは独立したヘッドレストが備わる。コストと快適性を両立させた結果か(右)(クリックして拡大)

 シートのホールド感も悪くない。背中を適度に包み込むようにサポートしてくれる。ハイバックシートとなったのも、ヘッドレストのステー部分などを省略することによる軽量化が狙いだ。もちろんシート自体も軽量化は進めているが、ベースフレームなど骨格は樹脂ではなくプレス鋼板を使っている。このあたりはまだコストが見合わないため樹脂には代えられないようだ。

ステレオカメラと超音波センサーを組み合せて歩行者対応の自動ブレーキや誤発進抑制機能などを実現する衝突回避支援システム「スマートアシストIII」を搭載する(一部グレードはオプション)(クリックして拡大)

 しかしながら、これでステレオカメラによる自動ブレーキや超音波センサーを使った誤発進抑制機能、車線逸脱警報などの安全装備も盛り込み(一部グレードはオプション)、価格上昇を抑えているのだから、企業努力を感じる。さすがに一般道での試乗ではこれらの安全装備を試す機会はなかったが、軽自動車ユーザーの高齢化が進む以上、安全装備は必須となるだろう。

 先代ミライースやスズキ「アルト」は、ビジネスユースが圧倒的なのだろうと思っていたが、実際には手ごろな価格で燃費のいいコミューターを欲する地方のパーソナルユーザーが多いようだ。今回のフルモデルチェンジはそうしたユーザーをより満足させられるだろう。通勤、買い物、病院通い……。クルマが無ければ移動に困るユーザーにとって、より安心して快適な走りを提供できるのだから。

 高級化、過剰なほどの装備で登録車からの代替えを狙うトールワゴンが普及する一方で、価格を抑えて好燃費、維持費の安さという軽自動車本来の魅力を守り続ける。それでも時代の要求に応えて安全装備は充実させ、しっかりと存在意義を見据えて仕上げた新型ミライース。軽自動車のあるべき姿を具現化したクルマとして、このまま熟成を続けていって欲しいと思うモデルである。


 試乗と合わせて新型ミライース開発者のナマの声も聞いた。次回は開発者インタビューをお届けする。

筆者プロフィール

高根 英幸(たかね ひでゆき)

1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。輸入車専門誌の編集部を経て、現在はフリーランス。実際のメカいじりやレース参戦などによる経験からクルマや運転テクニックを語れる理系自動車ライター。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。



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