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» 2017年09月25日 06時00分 公開

ドイツのコネクテッドカー開発事情:リモートワークはなぜ必要? 国や地域にこだわらなければ人材は世界中にいる (2/3)

[別府多久哉,MONOist]

「寒いので12月はバリ島で仕事していいですか」

日本とイスラエルをつないでのミーティング(クリックして拡大)

 欧州の人々にとって国境を越えるということは、日本で都道府県を越える程度の感覚にすぎないようです。リモートワークを活用すると、日本では非日常的な働き方すら当たり前のものとなってしまいます。

 例えば、タリンにいるエンジニアの1人が12月のあいだ、インドネシアのバリ島で仕事をすると連絡をしてきました。とても寒いので、どこか南の温かいところで仕事がしたいというのが理由でした。タリンはフィンランド湾を越えるとすぐにヘルシンキ、というところにあるので冬季は−10℃を下回ることも珍しくありません。こんな理由であっても、ハイモビリティのCEOは拒否しません、きちんと結果を出せばOKなのです。

 そのCEOはというと、自宅がベルリンやタリンではなく、スウェーデンにあります。1カ月の半分近くは出張に行っており、米国出張を終えてスウェーデンの自宅に帰り、そこからクルマを運転してベルリンのオフィスに寄った後、そのままクルマでフランクフルトに出張ということもあったそうです。ベルリンにいる間、CTOの家に寝泊まりする生活を3年ほど続けているのだと聞いています。

 こんな自由な環境に最初はとても驚きました。なぜそんなに自由なのかとCTOに尋ねてみると「われわれは個人の働き方を尊重し、働きたい場所で自由に働けることを最優先にしているんだ。その方が人生が楽しいでしょう?」と返ってきました。

時差はあるが、インターネットさえつながっていればどこにいてもミーティングできる(クリックして拡大) 出典:CITIZEN

リモートワークは利益追求の合理的な手段

 日本でもリモートワークが「新しい働き方」として注目されており、リクルートや三菱東京UFJ銀行、ユニリーバ・ジャパンなど大手企業でも導入する事例が増えてきています。しかし、メルカリや米国のヤフー本社は在宅勤務を認めず、会社で顔を合わせてコミュニケーションをとれることを重要視する会社も少なくないようです。

 「個人の働き方の自由を尊重している」ということ自体は簡単ですが、チームとしてリモートワークを受け入れて仕事を進めることは簡単ではありません。ハイモビリティの働き方から「なぜリモートワークを導入するのか」という目的をきちんと明確にしてチームで共通認識を持つことや、それに合わせた組織や制度を用意することが重要だと感じました。

 リモートワークの導入が生産性に直結するわけではなく、場合によっては生産性が多少下がるケースもあると思います。それでもリモートワークをチームに導入する大きな理由の1つは、リモートワークを推進しないと働けなくなってしまう人がいるからだと考えています。

 オフィスに1日中いなければならないという働き方では、育児や介護と仕事の両立はできません。しかし、育児中、介護中の人にも働きたいという意思があり、組織や社会に貢献するスキルがあります。また、現時点でチームに属しているメンバーが辞めずに継続して働ける環境であれば、採用のコストが追加で発生することもありません。エンジニアなどのスペシャリストの確保が難しい中、採用活動には非常にコストが掛かりますから。

 スキルを持つ人が、育児や介護を理由に会社を辞めざるを得ない状況になってしまうことは、会社にとっても本人にとってもデメリットでしかありません。働き方に多様性を持たせるということは、会社の利益に最終的につながっていくものではないでしょうか。

 また、場所にこだわらない働き方をすることができれば、優秀な人材は世界中にいるので人材採用の選択肢も広がります。しかし、グローバルで人材を集めても、リモートワークでなければ採用以外にも多大なコストが掛かります。まず、雇用した全員が働くためのオフィスが必要です。シリコンバレーのように物価が高いエリアでは、人件費やオフィスに必要なコストがさらに増大するでしょう。オフィスに毎日通う働き方でなければ、かなり低いコストで世界中から優れた人材を集めることができるのです。

 リモートワークは従業員のためではなく、企業として利益を追求するための合理的な手段なのです。

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