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» 2017年10月13日 09時00分 公開

学生フォーミュラ2017:学生フォーミュラは「人づくり」の場 (2/2)

[西坂真人,MONOist]
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優秀な人材を輩出する学生フォーミュラには多くの企業が支援

 このように自動車業界に多くの優秀な人材を輩出している学生フォーミュラには、毎年200社を超える企業が大会スポンサーとして大会を支援している。学生フォーミュラ出身者の人材的な魅力について、VSN 人財採用本部 新卒リクルーティングセンター センター長の天村公祐氏は「モノづくりを志す学生が減っている中で、自動車業界へ優秀な人材を送り出している学生フォーミュラの意義は大きく、技術者育成という観点でバックアップしている」と語る。

photo VSN 人財採用本部 新卒リクルーティングセンター センター長の天村公祐氏

 VSNは、競技会の会場がエコパに変わった第4回大会(2006年)から計12回もの長期にわたり大会スポンサーを務めている。大会スポンサーは協賛内容や金額によってクラス分けされているが、同社が協賛するのは実質2番目(上位にSSクラスとSクラスがあるがSSクラスは協賛企業がいなかったため)に支援金額の高い「Aクラス」。同クラスにはSUBARU/マツダ/三菱自動車工業/スズキなど自動車メーカーやデンソー/日立オートモティブシステムズなど自動車部品メーカーが名を連ねているが、人材系企業としては同社だけだ。

photo 大会期間中は水とエナジードリンクを無償配布して学生をサポートするVSN。炎天下での開催となる学生フォーミュラでは水分補給が欠かせないだけに、冷たい飲み物は学生にも好評だ。大会期間中は2000本を用意している

 また、大会スポンサー以外にも多くの企業が各チームへ個別に支援を行っている。支援スタイルもさまざまで、各社の得意分野を生かして勉強会(座学・実技)を開催したり、エンジンや部品、オイルなど消耗品の無償提供や割引販売、企業との共同開発で部品を製作するケースもあるという。前述のVSNも16チーム(18校)に個別で支援を実施、主に金銭支援だが中には物資での支援要望もあるという。

photo 大阪産業大学 学生フォーミュラプロジェクト エンジン班 渉外担当 兼 ドライバーの中島正人氏

 VSNからチームメンバーのツナギを提供してもらった大阪産業大学 学生フォーミュラプロジェクト エンジン班 渉外担当 兼 ドライバーの中島正人氏は、これらスポンサー企業からの協賛なくして学生フォーミュラは成り立たないと話す。

 「大学からも資金面での支援はあるが、200万〜300万円かかる車両加工費やエンジン代、各種部品代、走行練習するための場所代や大会期間中の宿泊代、バスのチャーター代、競技車両を運ぶトランスポーター代などとにかくお金がかかる。自分たちでも毎月会費を払ってエンジンオイルなど消耗品代に充てているほど」(中島氏)

 学生らは企業から支援を受けるために、自分たちの車両やチームをプレゼンテーションでアピールする。学生ならではのたどたどしく初々しい発表もあれば、社会人顔負けの素晴らしいプレゼンを披露するチームもあるという。前述のVSN 天村氏もこれまで数多くのプレゼンを見てきたというが、総じて学生たちの“クルマづくりの熱量”に圧倒されることが多いという。

photo 競技車両のボディには支援を受けた企業のロゴがびっしりと並ぶ

 「私自身も営業にいた経験からいろんなプレゼンは見ているが、学生フォーミュラのプレゼンは本当に熱い。もちろん学生なので社会人と比べるとプレゼンそのもののレベルは低いが、ものすごい熱量で圧倒される。プレゼンが悪いからと言って支援をやめることはないが、熱くアピールしてくるチームにはやはり応援したくなる」(天村氏)

 学生フォーミュラには設計構想やコスト・マーケティング能力を競う「静的審査」の中で、かかったコストに見合った車になっているかを審査する「コスト審査」という種目がある。これは「ただ安く車を作れるか」ではなく、車両製作費をボルト1本から溶接作業費まで細かく記載して提出しなければならず、そのレポートは1000ページを超えるものになる。このように学生フォーミュラの世界は、単に速いクルマを作れば優勝できるわけではなく、“モノづくりの総合力”が試されるのだ。

photophoto 走行性能や燃費、信頼性を審査する「動的審査」では予期せぬトラブルでリタイヤする車両も少なくない。全種目完遂できるチームは全体の25%以下という厳しさの中で学生はモノづくりの難しさとやりがいを身をもって学んでいく

 エコパを目指す学生は授業が終わった後に部室に集まり、全力のプレゼンで集めた資金や物資で設計し、自らの手で加工して作り上げた車両で走行試験を繰り返す。その過程で何度も挫折を味わい、それでも諦めずに挑戦を繰り返す。そうしてクルマづくりに没頭していく中でタフなエンジニア魂が育まれ、即戦力のモノづくり人材へと成長していくのだろう。

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