ソフトウェアを最大90%再利用、NXPの車載向け新プラットフォーム車載半導体

NXP Semiconductors(NXP)は、車載プロセッシング向けの新しいプラットフォーム「S32X」を発表した。コネクテッド化や自動運転、電動化といったアプリケーションに向けて、ソフトウェア開発を単純化するとともに、開発期間の短縮に貢献する。

» 2017年10月19日 07時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
NXP SemiconductorsのRoss McOuat氏

 NXP Semiconductors(NXP)は2017年10月16日、車載プロセッシング向けの新しいプラットフォーム「S32X」を発表した。

 統一されたアーキテクチャのマイクロコントローラー(MCU)とマイクロプロセッサ(MPU)、さまざまなアプリケーションに対応した単一のソフトウェア環境を提供。コネクテッド化や自動運転、電動化といったアプリケーションに向けて、ソフトウェア開発を単純化するとともに、開発期間の短縮に貢献する。

 自動車向け機能安全規格ISO26262の最も厳しい安全基準であるASIL Dも満たす。同様にASIL Dを満たす競合他社のプラットフォームと比較して、処理性能は10倍としている。演算処理に余裕を持たせることにより、機能の追加や拡張に柔軟に対応していけるようにする。

 新プラットフォームのS32Xは大手自動車メーカー8社が採用を決めており、2020年以降に生産される車種に搭載される。

完成した時点で機能を増やす余裕がない、現在のクルマ

 NXP 副社長のRoss McOuat(ロス マコーエット)氏は次世代の自動車の開発について「自動車メーカーは拡張する余地を持たせてアプリケーションを開発していきたいと考えている。処理性能としては3割前後の余裕を必要としているようだ。ただ、現時点の自動車のハイエンドモデルは最新のコンピューティング性能の95%を使って成立している。完成した時点で機能を追加する余裕がないということになる」と説明した。

現在、多くの自動車メーカーがドメイン集約型アーキテクチャに移行している(クリックして拡大) 出典:MXP

 また、これまでに機能ごとで最も低コストなECUを採用して構築されたアーキテクチャも機能の追加やアップグレードが難しくしているという。今後は、ドメイン集約型のアーキテクチャに移行し、車載ネットワークのキャパシティーを増やすとともに、車両の販売後の無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)にも対応することが課題となる。

 マコーエット氏は「ベンチャー企業のように一からクルマをつくることができればいいが、大手の自動車メーカーはこれまでの環境を引き継いでいく必要がある」と前置きし、新プラットフォームがソフトウェアの再利用によって開発負担の低減に貢献することを説明した。「ボディー、シャシー」「コネクティビティ」「センシング」などアプリケーションの領域内では開発負荷を90%、複数のアプリケーションの領域をまたぐ場合でも40%以上の負担軽減を図れるという。

アプリケーションごとにソフトウェアを再利用して開発負担を低減する(クリックして拡大) 出典:MXP

 NXPはさまざまなMCUやMPUに共通する部分のアーキテクチャを提供し、車載アーキテクチャの変更や短期間での市場投入に対応できるようにする。このアーキテクチャには信頼性や機能安全、セキュリティを満たしているという。自動車メーカーやティア1サプライヤーは機能の追加や性能向上の開発にリソースを割けるようになる。

 新プラットフォーム向けには、低消費電力のARM Coretex-Mやリアルタイム処理向けのARM Coretex-R、高性能のARM Coretex-AがベースのMCUやMPUをそろえる。全ての製品でASIL Dを満たす。メモリも4M〜62MBまでオプションを用意し、ダウンタイムなしのOTAも実現する。

さまざまなアプリケーションに対応できる共通のアーキテクチャを提供する(クリックして拡大) 出典:MXP

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