セイコーエプソンが小型精密ロボットで攻勢、2025年度に売上高1000億円へ産業用ロボット

セイコーエプソンはロボットに関連する事業戦略説明会を開催。産業用ロボットのラインアップ拡充と、自社実践のノウハウを生かしたモノづくり高度化支援ソリューションで、2025年度に売上高1000億円を目指す。

» 2017年11月28日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 セイコーエプソンは2017年11月27日、ロボットに関連する事業戦略説明会を開催。産業用ロボットのラインアップ拡充と、自社実践のノウハウなども生かしたモノづくり高度化支援ソリューションで2025年度に売上高1000億円を方針などを示した。

 セイコーエプソンは、高速・低残留振動などの技術を強みとし、スカラーロボット(水平多関節ロボット)や小型垂直多関節ロボット、双腕ロボットなどを展開。可搬能力20kg以下の小型精密ロボットで存在感を築いているが、製造現場での人手不足の顕在化や、製品の高度化・複雑化が進む現状を受け、産業用ロボットのラインアップを拡充し、売上高拡大を目指す。

photo セイコーエプソン代表取締役社長の碓井稔氏

 セイコーエプソン代表取締役社長の碓井稔氏は「製造の現場は曲がり角を迎えている。人手不足は深刻で、製造現場のエンジニア不足に加えて、自動化を実現するエンジニアも不足している状況だ。一方でスマートフォンなどを見ても、人の手では難しい精度がどんどん要求されるようになってきている。産業用ロボットの活用の余地は非常に大きい」と期待を寄せる。

 スカラーロボットでは、用途拡大を推進し2018年度にラインアップを拡大する計画を示す。既に2017年4月に従来のスカラーロボットの精度や速度を要求されない代わりに低価格でコンパクトな「Tシリーズ」をリリース(※)。今後は2018年度にアーム長600mmの「T6」を追加するという。スカラーロボットは現在の世界シェア28%を2020年には40%に引き上げる方針だという。

(※)関連記事:単軸ロボットの組み合わせより低価格でコンパクトなスカラロボット

 小型垂直多関節ロボットは、新ラインアップとして「VTシリーズ」を2018年度に投入予定とする。「VTシリーズ」は小型垂直多関節ロボットにおける「Tシリーズ」の位置付けで、手作業のような速度や精度を要求しない単純搬送がように対応する製品となる。コントローラー内蔵で設置が簡単な低価格のエントリーモデルの位置付けである。また、以前から展開してきた「Nシリーズ」を刷新した「新Nシリーズ」を2018年度から投入する。センサー強化による高速化とラインアップ拡充により、搬送や組み立て、梱包など幅広い用途に対応する。

photo 「新Nシリーズ」の「N6」のデモ(クリックで拡大)

 さらに、人協調ロボットにも参入する。センシング技術などを生かし簡単機能および安全機能を追加したスカラーロボットや小型垂直多関節ロボットを2018年度に投入する。2020年までにシェア約5%を獲得する狙いだとしている。

photo セイコーエプソンの産業用ロボットの将来ラインアップ(クリックで拡大)出典:セイコーエプソン

ロボットを簡単にしてモノづくりの高度化を支援

 さらに、産業用ロボットは半完成品だが、産業用ロボットとロボットコントローラー、周辺デバイスなどをパッケージにして導入してから稼働までの時間を短縮化するモノづくり高度化支援ソリューションに取り組む。例えば、塗布作業や高速搬送などの作業を1つのパッケージとして関連デバイスなども組み合わせて提供する。プログラミングの負荷なども低減する。

photo モノづくり高度化支援のパッケージの例(クリックで拡大)出典:セイコーエプソン

 セイコーエプソン ロボティクスソリューションズ事業部 事業部長の吉田佳史氏は「ロボットの導入にハードルを感じて導入できない現場なども多い。パッケージ化することで導入のハードルを下げることができ、さらなるロボット活用の広がりにつなげられる」と述べている。

photo モノづくり高度化支援の考え方。導入ハードルを低減することで自動化が進んでいない領域の自動化を推進する(クリックで拡大)出典:セイコーエプソン

 碓井氏は「ロボティクスソリューションズ事業をセイコーエプソンのメインビジネスに育て上げ、2025年度に売上高1000億円を目指す」と抱負を述べている。

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