ET2017 特集

25年で生産効率8倍に、シーメンスが取り組むインダストリー4.0工場スマートファクトリー(1/2 ページ)

「Embedded Technology 2017」「IoT Technology 2017」の基調講演にシーメンス(日本法人)代表取締役兼CEOの藤田研一氏が登壇。「IoT時代におけるシーメンスのデジタル事業戦略」をテーマに、インダストリー4.0や同社のIoTプラットフォーム「MindSphere」についての取り組みを紹介した。

» 2017年11月29日 11時00分 公開
[長町基MONOist]

 「Embedded Technology 2017」「IoT Technology 2017」(2017年11月15〜17日、パシフィコ横浜)の基調講演にシーメンス(日本法人)代表取締役兼CEOの藤田研一氏が登壇。「IoT時代におけるシーメンスのデジタル事業戦略」をテーマに、シーメンスが考えるIoT(モノのインターネット)の世界とデジタル化による変革などを事例から紹介した。

 シーメンスは受注高が865億ユーロ(11兆4000億円)、売上高796億ユーロ(10兆5000億円)、従業員数35万1000人というドイツ・ミュンヘンに本社を置く多国籍企業だ。日本との関係も深く「古くは徳川幕府に通信機を納入した。それが最初の日本とのつながりで、日本では130年の歴史がある」(藤田氏)と紹介した。

 そのシーメンスは現在、事業ポートフォリオの組み換えを行っている。最近では鉄道事業をフランスのアルストムと統合する発表を行った他、2017年春には風力事業をスペインのガメサと合弁で進めるなどの取り組みを実施。デジタル事業についても順次組み換えを行っている。

インダストリー4.0で生産能力が8倍に

 近年はデジタルビジネスの変革が加速している。これは各製品の普及率拡大のペースにも表れている。米国では電気の家庭普及率が25%に達するのに46年、テレビは24年、PCは16年、インターネットが8年かかった。しかし、これに比べてスナップチャット(SNS機能、写真・動画加工機能を持つ無料のアプリ)はサービス開始から1年以内に25%の普及率に到達した。CPUの性能(素子数)も過去50年で約1億倍になるなど、デジタルビジネスの基盤となる技術の性能は目覚ましい勢いで発展している。

 こうした変化に応じてビジネスやサービスの変化も加速している。ドイツでは製造業の高度化を目指す戦略的プロジェクトとして「インダストリー4.0」が2011年から進められている(※)。インダストリー4.0は第4次産業革命を指し、蒸気機関による第1次産業革命、電気による第2次産業革命、コンピュータによる第3次産業革命に次ぐものとされている。

(※)関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】

 「インダストリー3.0」の時代は、ピラミッド型で段階的にそれぞれの企業や機器、機能などが動くというものだったが、インダストリー4.0の世界は「ネットワーク型」だとされている。これは順番ではなく1カ所を基点に、蜘蛛の巣状に連鎖的に広がっていくという仕組みだ。この中では「エコシステムの構築」がキーポイントとなっている。

photo シーメンス(日本法人)代表取締役兼CEOの藤田研一氏

 シーメンスではこうした中で、デジタル化、自動化(オートメーション化)、電化の3つの市場にフォーカスして戦略を進める。それぞれのグローバルでのマーケット伸長率(2017年〜2020年)をみると電化が1〜2%増、自動化が3〜4%増、デジタル化は8%以上の増加と予測している。この予測をもとにシーメンスでは事業戦略を進行中だ。まだ、オートメーション化、電化分野の構成比が高い。しかし、伸びが大きいのはソフトウェアとデジタルサービスの部門で前年比12%増を記録したという。藤田氏は「この分野は、将来ますます重要になり、コアになる」としている。

 シーメンスは、こうしたデジタル化の取り組みの実践を自社工場で積極的に進めている。ドイツ・アンベルグにあるシーメンス・インダストリー4.0モデル工場は過去25年間で生産効率を8倍にしたという。これは数多くのセンサーを導入し、製造工程で5000万個のデータ収集をリアルタイムで実施したことが大きな要因だ。

 同工場は1日当たりでエレクトロニクスコントロール関連のボックスなど120種の製品を製造し、その75%をオートメーション化している。また、100万個当たりの欠陥カ所は11未満で、良品率は99.9988%に相当する製造品質を維持しているという。

 さらに藤田氏は、自動車メーカーのマセラティの事例も紹介した。シーメンスがマセラティの新工場にデジタル技術を加えた先進生産設備を納入した結果、開発時間は30%短縮するとともに、オプション品など7000通り以上の組み合わせがデジタルコントロールで可能となった。さらに、製造能力は3倍以上に高めることができたという。

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