脳がメス型になるかオス型になるかを決定するタンパク質を発見医療技術ニュース

東北大学は、ショウジョウバエの脳細胞についての研究で、女性脳と男性脳を切り替えるスイッチ遺伝子を発見した。このTRF2タンパク質は、遺伝子の読み取りを雌雄で正反対に制御し、その二面性によって脳が雌型か雄型になるかが決まっていた。

» 2017年12月06日 15時00分 公開
[MONOist]

 東北大学は2017年11月15日、ショウジョウバエの脳細胞についての研究で、女性脳と男性脳を切り替えるスイッチ遺伝子を発見したと発表した。同大学大学院 生命科学研究科 教授の山元大輔氏のグループによるもので、成果は同月14日、英科学誌「Nature Communications」に発表された。

 同研究グループは、mALという名の脳細胞に着目した。mALは脳内で性フェロモンの検出に携わっており、雄に固有の突起(雄型突起)を持つ。雌はrobo1(ロボ1)という遺伝子の働きによって、雄型突起ができないように抑制されている。

 この突起の有無を左右する遺伝子を網羅的に探したところ、遺伝子の読み取りをオンにする、ごく一般的なタンパク質「TRF2」を作る遺伝子が候補に上がった。

 まず、雌においてTRF2をノックダウン(機能の抑制)すると、雌の脳細胞に雄型突起が生じた。つまり、TRF2は雄型突起を抑制して脳細胞を雌型にする働きを持つ。一方、雄ではTRF2をノックダウンすると雄型突起が失われたので、TRF2が雄型突起を抑制する遺伝子をオフにする、雄化因子として働いていることが分かる。

 次に、株化細胞を使ってrobo1遺伝子の読み取りに対するTRF2の働きを調べた。その結果、TRF2はそれ単独ではrobo1遺伝子の読み取りをオン(雌型)にする作用を発揮した。しかし、雄化タンパク質FruMと一緒の時には、遺伝子の読み取りを抑制するFruMタンパク質の援軍として働いて、雄化させていることが判明した。

 これらのことから、TRF2タンパク質が、遺伝子の読み取りを雌雄で正反対に制御する働きを持つこと、この二面性によって脳が雌型になるか雄型になるかが決まることが分かった。TRF2はヒトの遺伝子の読み取りでも大きな働きをしていることから、ヒトの脳の性分化においても、重要な機能を持っている可能性がある。

photo mALニューロンにおけるTRF2の分子レベルでの作用(上段)と細胞レベルでの効果(下段)。左:FruMが存在する時。右:FruMがない時 出典:東北大学

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