次世代の車載ネットワーク「CAN FD」とは車載ネットワーク(3/4 ページ)

» 2018年01月24日 11時00分 公開

(5)CRC領域

 CRC領域の変更点は以下の5点です。

  • Stuff Countの追加
  • CRCの計算方法
  • CRCのビット長
  • ビットスタッフィングルール
  • 受信側でのCRC Delimiterの許容ビットタイム

 CRC領域には、新しくStuff Countが追加されCRCは17ビットまたは21ビット必要です。ここでは、追加されたStuff Count と変更になったCRCの計算、ビットスタッフィングルール、CRC Delimiterの変更点について説明します。

CRC領域。オレンジ色はCANと同様の転送速度、青色は転送速度を高速化可能な部分(クリックして拡大) 出典:ベクタージャパン

Stuff Count(CAN FD)

Stuff Count。青色は転送速度を高速化可能な部分(クリックして拡大) 出典:ベクタージャパン

 Stuff Countは次の2つの要素で構成されます。

  1. CRC領域より前のスタッフビットの数を8で割った余り(Stuff bit count modulo 8)をグレイコード化した値(Bit0-2)
  2. グレイコード化した値のパリティー(偶数パリティー)

 Stuff Countは以下の表のようにコーディングされます。

スタッフビットを8で割った余り グレイコード(3bit) パリティービット(1bit)
0 000 0
1 001 1
2 011 0
3 010 1
4 110 0
5 111 1
6 101 0
7 100 1
Stuff Countのコーディング

CRC

 データ領域の増加に伴い伝送品質を維持するために、SOFからデータ領域のビットだけでなくStuff Countとスタッフビットも含めCAN FDのCRCを計算します。受信ノードは、CRCの計算結果を比較することで正常に受信できたか判断します。

 CANでは15ビットでしたが、CAN FDではCRCのビット数は以下のようになります。

  • 送信データが16バイト以下の場合:CRC 17ビット
  • 送信データが16バイトを超える場合:CRC 21ビット

ビットスタッフィングルール

 CANと同様にSOFからデータ領域の末端までスタッフビットが挿入されます。挿入されたスタッフビットの数はグレイコード化されてパリティービットで保護されます(Stuff Count)。

 CRC領域では固定されたビット位置にスタッフビットを配置し、これを固定スタッフビット(Fixed Stuff Bit)と呼びます。固定スタッフビットの値は、その前のビットの値の逆になります(Stuff Countや前後にも固定スタッフビットが配置されます)。

  • CRC領域の先頭
  • 4ビット間隔の固定スタッフビット
CRC領域ビットスタッフィング。青色は転送速度を高速化可能な部分(クリックして拡大) 出典:ベクタージャパン

CRC Delimiter

 CRC DelimiterはCRCの終了を表す区切り記号で常に1ビットのリセッシブで送信します。ただしCAN FDの場合、ノード間の位相のずれを考慮して受信側で最大2ビット時間を許容します。CAN FDフレームのデータ領域(高速化可能な領域)はCRC Delimiterの最初の1ビットのサンプリングポイントまでです。


(6)ACK領域

 CAN FDのACK領域はCANと同様にACKとACK Delimiterで構成されます。CANではACKは1ビット時間でしたが、CAN FDの受信ノードは最大2ビット時間まで有効なACKとして認識します。

 追加の1ビット時間は、高速なデータ領域から低速なアービトレーション領域へのクロック切替え時に発生するトランシーバーの位相のずれおよびバスの伝播(でんぱ)遅延の補完に使用されます。ACKの後には、ACK Delimiterが送信されます。これは ACKの終了を表す区切り記号で、1ビットのリセッシブです。

ACK領域。オレンジ色はCANと同様の転送速度(クリックして拡大) 出典:ベクタージャパン

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